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□他人のフンドシで相撲を取る厚顔無恥/田中康夫 [ゲンダイ]
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1817383/detail
他人のフンドシで相撲を取る厚顔無恥
「サービスエリアをサービス満点に」との書き出しで、西日本高速道路株式会社の「取り組み」を、「産経新聞」が称揚しています。曰(いわ)く、「サービスエリア(SA)、パーキングエリア(PA)の収益力を強化する為の大規模な改良計画」「滋賀、京都の四つのPAの他、中国、四国、九州に重要拠点を定め、コンビニエンスストアやリラクゼーション施設、プロ野球のグッズショップ等を設置。高速道の利用者に限定せず、地域住民にも開放、魅力有る集客施設で『親方日の丸』からの決別」。
阿呆も休憩休憩(やすみやすみ)にして頂きたいものです。その敷地も施設も、元はと言えば国民の共有財産。即(すなわ)ち、他人のフンドシで独り相撲を取る厚顔無恥振りこそは「親方日の丸」に他なりません。
「高速道の通行料金収入は、大きな伸びが期待出来ない。同社が業績向上のカギとするのがSA・PA事業」。「飲食サービス、物品販売事業を収益の柱に育てたい」。
これぞ、本末転倒では有りませんか。共に民営化されたイタリアも日本も、高速道路の建設費用は1km当たり約45億円です。にも拘(かかわ)らず、通行料金はイタリアの4倍にも達するのが日本なのです。ローマからミラノは、東京から神戸と同距離の560km。イタリアでは3300円に過ぎません。
然(しか)るに、民営化後に6つの高速道路各社は値下げを断行したでしょうか? 否(いな)、ハイウェーカードや回数券を廃止し、ETCを自前で購入しない限り、実質値上げをしているのです。縦(よ)しんばETCを設置した所で、その割引率はイタリアの足下にも及びません。
結果、通行料金が高いから物流各社のトラックは一般道路を通行するのです。子供の通学路も民家の密集地も、朝昼晩、騒音と危険に晒(さら)されています。通行料金無料のバイパス建設の声が高まり、二重投資の結末は更なる国家財政の悪化を齎(もたら)します。小泉純一郎内閣の僅(わず)か5年間で、250兆円もの新たな借金が生み出され、日本全体の借金総額は1000兆円に達したのも、宜(むべ)なる哉(かな)です。
SP・PAの売上高を5年後には3倍にしたい、と高言し、「これまでにない新業態の「ハイウエー・コンビニ」、「リラクゼーション施設を設け」、「高速道路の通行車だけでなく地域住民にも集まって貰(もら)える」との構想は、駅ビルのショッピングセンター化で駅前商店街が壊滅したのと同様の未来を、全国津々浦々に展開していく新自由主義経済の荒廃そのものです。「官から民」の美名の下に、「公=おおやけ」の意識無き「民=ミーイズム」が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)しています。官とは異なり、情報公開の対象から外れる「民」の方が、政治家ならぬ政事家にとっても、公僕ならぬ私僕にとっても、都合が良いのです。
5年間で3倍の売上にするなら、5年間で3分の1の通行料金を実現します、と「公」約させてこそ、公共高速交通網の構造改革ではありますまいか。
従来の半額で建設可能となった、と高速道路の権威を自任するジャーナリストは豪語します。が、これこそは不思議な話です。半額で建設可能だなんて、「偽装」なのではありませんか。百歩譲って可能だとして、それこそ高値安定の談合が罷(まか)り通っていた証ではありませんか。護送船団記者クラブの新聞各社も、提灯記事を掲載する前に、本質を抉(えぐ)ってこそ、麻薬とは無縁の「ジャーナリスト宣言」でしょ。呵々(かか)。【田中康夫】
【2006年3月29日掲載】
2006年04月01日10時00分
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