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(回答先: 前原民主代表辞任へ、偽メールで引責 [読売新聞] 投稿者 white 日時 2006 年 3 月 31 日 12:17:42)
2006年03月31日
民主党 「メール」問題検証チーム報告書
http://www.dpj.or.jp/news/200603/20060331_07mail.html
--------------------------------------------------------------------------------
31日の常任幹事会及び両院議員総会に報告された、民主党の「メール」問題検証チームの報告書とその添付資料は以下の通りです。
○ 民主党「メール」問題検証チーム報告書(PDF 97KB)
http://www.dpj.or.jp/faxnews/pdf/20060331165842.pdf
2006 年3 月31 日
民主党第367 回常任幹事会(報告事項)
報 告 書
民主党「メール」問題検証チーム
<目次>
第一 はじめに
第二 調査経過
第三 事実の経緯
T.「情報仲介者」との関係
U.予算委員会における永田議員の2 度の質問(2 月16 日、17 日)に至る経緯
V.永田議員の質疑後から党首討論に至る経緯
W.党首討論後から処分等の決定に至る経緯
X.その後の経緯
第四 事実の経緯からみた問題点
第五 私たちの反省と教訓
<添付資料>
@西澤氏から初めに提供された、黒塗りの少ない「メール」
A西澤氏から後に提供された、黒塗りの多い「メール」
2
第一 はじめに
民主党の永田寿康衆議院議員が「偽メール」をかざして衆議院予算委員会で質疑を
行ったことによって、永田議員のみならず民主党も国民の厳しい批判・非難に晒され
ている。
国権の最高機関たる国会の予算委員会において、裏付けのとれていない資料を用い
て個人を中傷するような内容の質問が断定調で行われたことは、どこから見てもその
質疑者が非難されざるを得ないことは、疑問の余地がないところである。
そして、私たち民主党は、党首討論を含め、その質疑や発言が党を代表して行われ
たものである以上、「民主党が何故にこのような質問や発言を許容したのか、責任野
党としてこのような事態をつくり出したことについて如何に考えるのか、その責任を
どう果たすのか」という問いに直面している。
私たちが、次の総選挙で政権交代に挑戦する責任野党として、国民の皆様方の認知
を得、信頼と期待感を獲得するために、この「偽メール事件」をどのように検証し、
反省するかが問われている。
このような視点に立って、「偽メール事件」を客観化し、できうる限り克明に事実
を認めて説明責任を果たし、その上に立って反省すべきを反省し、国民の皆様方をは
じめ政治に携わる人々に対し心から謝罪するため、また、コンプライアンス論や組織
経営的視点から、「民主党」の弱点や欠陥を摘出してその克服法についても提言を行
い、少なくとも民主党所属国会議員一人ひとりの課題と考え、議論するため、本報告
を作成した。
民主党は、結党以来の深刻な危機に直面しているとの認識の下に、今回の「失敗」
を教訓化し、国民の皆様方の信頼を取り戻すため、再出発する決意である。
3
第二 調査経過
「メール」問題検証チームは、本報告を為すに至るまで、以下の通り調査、分析を
行い、本報告をとりまとめた。
1 3 月1 日(水)、民主党は、永田議員が「メール」問題を取り上げた2 月16 日の
予算委員会質疑前およびその後の対応についての検証を行うとともに、この度の
「メール」問題を教訓に、再発防止策を検討するため、「メール」問題検証チーム
を設置した。
2 設置時の検証チームの構成は以下の通り。
座長:玄葉光一郎 幹事長代理
委員:平野博文 総合調整局長、藤村 修 前国対委員長代理、
松野頼久 筆頭副幹事長、佐藤雄平 副幹事長、細野豪志 役員室長、
蓮 舫 副幹事長
3 3 月2 日(木)、第1 回「メール」問題検証チーム会合を開催し、「メール」問題
についてブレーンストーミングを行うとともに、今後の作業手順などについて協議
を行った。
4 3 月8 日(水)、第2 回「メール」問題検証チーム会合を開催し、関係者全員に
報告書の提出を要請していること、外部の専門家に調査委託を要請していることな
ど、作業の経過が報告された。なお、検証チームの委員に、「メール」問題に関係
していない、河村たかし議員、山田正彦議員、末松義規議員、平岡秀夫議員の4 名
が追加選任され、この会合から加わった。
5 3 月15 日(水)、「メール」問題検証チームの委員に、仙谷由人幹事長代理と加
藤公一広報戦略本部事務総長を追加選任した。
6 3 月16 日(木)、第3 回「メール」問題検証チーム会合において、2 月17 日に
永田議員が2 回目の予算委員会質疑を行うまでの事実経緯について、協議を行った。
また、整理した事実経緯を補強するため、検証チームとして、関係議員からヒアリ
ングを行うことを確認した。
7 3 月20 日(月)、検証チームは主な関係議員のヒアリングを開始し、これまでに
永田議員、野田佳彦国対委員長(当時)、藤村修国対委員長代理(当時)、原口予算
4
委員、前原誠司代表、細野役員室長からヒアリングを行った。
8 永田議員および西澤孝氏の代理人を通じて、西澤氏に事情聴取に応じるよう要請
をしていたが、返答が得られなかったため、3 月23 日(木)、西澤氏の代理人を通
じて同氏に対し、内容証明郵便で事情聴取を要請した。
9 3 月24 日(金)、第4 回「メール」問題検証チーム会合を開催し、永田議員の予
算委員会質疑以降の事実経緯について、協議を行った。
10 3 月27 日(月)夜、西澤氏の代理人から、事情聴取について連絡を得たので、
その具体的方法について協議し、事情聴取に応じるよう要請した。
11 3 月28 日(火)、西澤氏が永田議員に説明したなかで登場する人物のうち、重要
と思われる関係者に事情聴取を要請した。
12 3 月29 日(水)午前、西澤氏の代理人から、事情聴取に応じるとの返答があり、
同日午後9 時から事情聴取を行うことが予定されたが、西澤氏が都内に不在で体調
不良との理由で延期された。
13 3 月30 日(木)、第5 回「メール」問題検証チーム会合を開催し、「報告書」(案)
を協議してとりまとめ、西澤氏からの事情聴取および詳細について、座長に一任さ
れた。
14 3 月30 日(木)夜、「メール」問題検証チームとして、西澤氏から事情聴取を行
った。
15 3 月31 日(金)昼、第6 回「メール」問題検証チーム会合において、西澤氏か
らの事情聴取について報告された。
16 3 月31 日(金)、「メール」問題検証チーム「報告書」を鳩山幹事長に答申した。
17 なお、外部の専門家に第三者的な評価を依頼することとし、3 月10 日(金)、検
察官出身の赤松幸夫弁護士に調査を正式に依頼して、作業を開始した。
5
第三 事実の経緯
T.「情報仲介者」との関係
1 永田議員と「情報仲介者」西澤氏との出会いは、次の通りだった。
1)2005 年10 月18 日、永田議員は、雑誌「Dumont」(以下、デュモン)の取材を
受けた。
@2005 年10 月18 日、永田議員は、党所属議員の秘書の紹介により、雑誌「デュ
モン」の取材として初めて、西澤孝氏と出会った。
Aその取材は、議員会館の事務所で行われ、株式会社デュモン・マーケティング代
表取締役CEO の西澤氏のほか、編集長のS氏、およびカメラマンが同席して行
われ、その際、紙面に使う写真の撮影を依頼されて永田議員は応諾した。
Bこの時の西澤氏について永田議員は「良い印象を持った」。
Cなお、当該秘書は、2005 年9 月に知人の紹介で西澤氏および大学の同窓生のS
氏と初めて会い、前原代表の取材の紹介を依頼された。しかし、代表が取材に応
じなかったため、松本大輔議員、北神圭朗議員、馬淵澄夫議員、藤末健三議員を
西澤氏に紹介した。また、永田議員と石関貴史議員については、西澤氏の依頼に
もとづき紹介した。
2)2005 年10 月20 日、永田議員は、写真撮影に向かう車中で西澤氏から、「疑惑」
について説明を受けた。
@2005 年10 月20 日、永田議員は、西澤氏、S氏らとともに、都内のスタジオに
出向き、写真撮影を行った。その移動に際しては、西澤氏が所有するという独製
高級車を西澤氏が運転した。
Aその車中で、永田議員は、西澤氏から、「IT関連およびライブドア関係の疑惑」
について、説明を受けた。(これについて永田議員は、後日西澤氏から伝えられ
た情報も含んでいる可能性が高いとしつつも、情報の中身は正確に記憶しており、
一部については詳細な資料も後日提供されたとしている。)
Bまた、車中において西澤氏は、「自分はかつて大手の週刊誌の記者をやっていた
が、今は自分が取材したものをメディアに載せて発信する立場ではない。記者時
代に取材したものがこのまま世に出ないのは悔しいので、永田さんに国会で追及
してもらいたい。それは自分の自己実現でもあり、永田の功績にもなるでしょう」
と情報提供の動機を述べた。
3)永田議員の後援会は、永田議員が表紙を飾った「デュモン」第2 号を購入した。
6
@その後、「デュモン」スタッフが、永田議員が表紙を飾った第2 号を永田議員の
国会事務所に持参し、秘書がこれを受け取った。
A2005 年12 月22 日、永田議員の後援会は、同第2 号400 冊を単価1,000 円(定
価1,500 円)で購入し、後援会員に販売することとし、後援会が総額42 万円(税
込)を支払った。
4)2005 年12 月8 日、永田議員は、「デュモン」誌の出版記念パーティーに出席し
た。
@2005 年12 月8 日、永田議員は秘書を通じて西澤氏から、都内の飲食店で催され
た同誌の出版記念パーティー兼忘年会に招かれて出席し、乾杯の挨拶をした。そ
の席には、同誌の取材を受けた議員の秘書数名も代理出席していた。
Aその席で西澤氏は、同誌はもうすぐ装丁を改めて発行することになっていると述
べたが、同誌第1 号および第2 号はいわゆる「プレ創刊号」であり、その後は発
行されていない模様である。
B後日、永田議員は、S氏と同誌の女性スタッフとの婚約パーティー(12 月22 日)
への出席を依頼されたが、多忙を理由に断った。
5)2006 年1 月12 日、西澤氏が永田議員の国会事務所を訪れ、追加情報を提供され
たようだが、永田議員はその内容について記憶しておらず、その際約束された、一
連の情報をまとめたメールも届かなかった。
U.予算委員会における永田議員の2 度の質問(2 月16、17 日)に至る経緯
1 西澤氏からライブドア関連情報等が提供された。
1)1 月26 日(木)頃、永田議員と原口議員は、西澤氏とライブドアに関する情報
交換を行った。
@永田議員は、日時は確かではないとしながら、西澤氏および原口議員、同秘書と
議員会館において、ライブドアに関する情報交換を行った。
Aこの会見は、原口事務所の日程表によると1 月26 日であった。その際、永田議
員は原口議員に対し、西澤氏について「旧い友人」で「1 回の広告収入を1 億円
上げている、日本をともに変えていくことができる人物」と紹介した。
2)1 月30 日頃、永田議員は、西澤氏と会食した。
@1 月30 日頃、永田議員は、西澤氏の依頼により会食したが、西澤氏から「西澤
氏の妻がいずれ選挙に出たいと考えている」との話が出たため、「永田議員の秘
7
書とすることを前向きに検討してもいい」と伝えると、西澤氏は「自分はお金に
困っていない」ので人件費度外視でもありがたい旨述べた。
Aその会食には、出版記念パーティーで司会を務めた自称フリーアナウンサーの女
性が同席し、西澤氏自身が「元長野県知事の孫である」こと、「雑誌『デュモン』
の広告収入が1 号あたり1 億円である」ことなどが話題となった。(現時点まで
の調査で、西澤氏は元長野県知事の孫ではないことが判明している。)
Bその際、永田議員は、西澤氏から、国会で取り上げて永田議員の功績にしてほし
いと言われたが、「物証に乏しい」と断った。
Cその会食には、某週刊誌の副編集長も遅れて同席し、「西澤氏は記者として優秀
だ」と持ち上げた。
3)2 月1 日、永田議員と原口議員は、西澤氏から、ライブドアに関する情報の提供
を受けた。
@2 月1 日、西澤氏および永田議員と原口議員は議員会館において会談したが、そ
のとき西澤氏より、ライブドアについて情報が提供された。その情報源は1 月末
にライブドア・ファイナンスを退職した元社員であるとのことであったので、原
口議員は、その元社員に面会したいと西澤氏に手配を要請したが、実現はしなか
った。
Aなお、原口議員の記憶では曖昧ながら、西澤氏は、「その元社員は西澤氏と一緒
に経営をともにしている人物の関係者なので、相談しなければ・・・」と言って
いたような気がするとのことであった。
2 2 月8 日(水)、永田議員は西澤氏の訪問を受け(於議員会館)、西澤氏から「メ
ール」の提供を受け、かつ口座情報についても説明を受けた。
1)永田議員が西澤氏から「メール」の提供を受けた経緯は以下の通りだった。
@2 月6 日(月)、永田議員は、西澤氏より電話で、「ライブドアの元社員が社内メ
ールを持ち出したので国会で使ってほしい」との連絡を受けた。永田議員は、直
ちに面会を申し出たが、西澤氏は膨大な数のメールをチェックしているので、後
日連絡すると返答した。
A2 月8 日(水)、西澤氏は議員会館(永田議員室)を訪れ、永田議員が後に質問
に使った「メール」を提供した。「メール」はプリントアウトされた状態で、発
信者や受信者の特定につながる情報は黒塗りされていた(添付資料@の通り)。
B「メール」についての西澤氏の説明は、以下の通りだった。
ア.これはライブドアの社内メールであり、最近退社した元ライブドア社員が使
っていたパソコンのハードディスクをそのままコピーして持ち出したものの
8
なかから、西澤氏が選別したものである。コピーしたハードディスクを西澤氏
が預かり、全部で約200 通のメール全てに目を通し、最も重要なものを持って
きた。
イ.「メール」を持ち出した元社員(=「情報提供者」)は、現在は大手企業の系
列会社に勤務しているが、ライブドアに勤務していたときに、実際に問題の「メ
ール」にある振り込みを実行した本人である。つまり、「メール」は堀江氏本
人が受信者に対して直接送信したものであり、これを受けて他の人物の判断を
仰がずにこの送金作業を実行できる権限を持っている者から提供されている。
ウ.資金の出元はいわゆる裏口座で、堀江氏個人の様々な資金に充当されている。
六本木ヒルズの自宅家賃、親しい女性が住んでいるマンションの家賃や付き人
となっているライブドア社員の人件費、事件で払った和解金など、全てこの口
座から支払われている。年間20 億円程度の出入りのある裏口座である。
エ.この口座の存在を知っている人物は数名にすぎないため、この「メール」の
取り扱い次第では「情報提供者」が容易に特定されてしまう。また、発信者の
アドレスは堀江氏のものであるが、堀江氏は複数のメールアドレスを使い分け
ており、このアドレスが公開されると受信者が数名に絞り込まれてしまうため、
黒塗りにした。
オ.資金の振込先口座は武部氏次男の個人口座である。
C永田議員は、西澤氏に対し、「メール」の文中の「前回、振り込んだ口座と同じ
でOK」との記述に関して質問したが、同氏は手帳を見ながら、「この『メール』
以前の送金があったことは確実、このメールを受けて8 月29 日に3,000 万円、
10 月14 日には『12 月上旬に行われたK1イベントのチケット代金』の名目で
1,000 万円、10 月31 日には『大晦日に行われたK1のチケット代金』の名目で
1,000 万円が同様に送金されている」と述べた。
Dさらに、永田議員は、「『情報提供者』は『メール』を国会で取り上げることに同
意しているのか」と質問したが、「守秘義務の問題を気にしている。ライブドア
社員には非常に強い守秘義務が存在し、退職後もその義務は免れない。『情報提
供者』が特定されれば、大変なことになる」と答えた。そこで永田議員は、「弁
護士に相談して返答する」と述べた。
Eなお、西澤氏から永田議員に対し、この「メール」について、某週刊誌に記事と
して取り上げるよう要望しており、永田議員の質問のタイミングと同誌の締切や
発売日との調整をしたい旨の連絡もされた。
F永田議員は、同日午後、守秘義務の問題に関して辻恵弁護士に電話で相談し、翌
日、辻弁護士から判例が送付され、国会で取り上げても「情報提供者」が不利益
を被ることはないとの返答があり、その旨を西澤氏に連絡した。
Gなお、永田議員は、「メール」のコピーを2 通作成し、1 通を所持して原本とコ
9
ピー1 通を保管していた。
3 永田議員が「メール」は本物であると考えた根拠は、次の通りである。
@「メール」を直接プリントアウトしたものと見て、一切の矛盾は感じられないこ
と。
A文体が非常に自然で、登場する人物のうち堀江、武部幹事長のご次男の名前(実
名)、宮内の各氏が実在すること。
B時系列的に見て、平成17 年8 月26 日に送信したメールで選挙コンサルティング
費用3,000 万円を8 月29 日または31 日に送金することは自然であると感じたこ
と。
Cメールソフトが「Eudora」(以下、ユードラ)であること。「ユードラ」はかつて
広く使われていたメールソフトであるが、現在は圧倒的な少数派である。しかし、
ライブドアの強制捜査以降に報道されたところによると、ライブドアはオン・
ザ・エッジ時代に「ユードラ」の国内販売の権利を取得し、このマイナーではあ
るが有名なメールソフトを扱っているという事実が会社の信用を高め、事業が拡
大したという。つまり、ライブドアにとって「ユードラ」は特別なメールソフト
であること。
D「情報提供者」の特定につながる部分を黒塗りで消してあること。仮に一からで
っちあげて永田を貶めようとするならば、もっと巧妙に仕組んで黒塗りする必要
の無いメールを持ち込むことも可能である。そうしなかったのは、「メール」が
真正のものであるからであるという推察が働いた。
Eメール本文に永田を陥れるために必要な情報以外の情報までもが含まれている
こと。「前回、振り込んだ口座と同じでOK」など、問題の送金のために必要な
情報以外の情報も含まれていることは、メールの信憑性を疑われたときにはむし
ろ不利である。信憑性を検証された時に、不利になるような情報まで含まれてい
ることは、むしろ信憑性が高まるという心証が形成された。
F西澤氏に対する信頼が厚かったこと。短期間の付き合いとはいえ、こちらから情
報を提供して欲しいと依頼したことは一度もないのに、かなり具体的な情報を持
ち込んでいる。加えて、西澤氏の妻が政治家になりたいということで、人件費度
外視の秘書として働きたいなどという話も政治家にとっては嬉しい話であり、ま
た、金銭を目当てに近づいてきたという印象も全く皆無と感じられ、この時点で
は全幅の信頼を置いていた。
G偽メールを持ち込む動機が見あたらないこと。金銭目的でもなく、愉快犯にし
てはメリットが小さく、デメリットは大きいこと。
10
4 2 月9 日(木)午後、永田議員は野田国対委員長に「メール」について報告した。
野田委員長は永田議員に対し、信憑性の検証などを指示した。
1)永田議員は、2 月9 日(木)午後、国会内で野田佳彦国対委員長(当時、以下同
じ)に「メール」を示し、判断を仰いだ。その際、永田議員は、西澤氏による「メ
ール」の説明を伝えるとともに、「『情報提供者』が特定されないよう『情報提供者』
と電話でも接触していない」旨を伝えた。この時点で、「メール」の存在を知るの
は、永田議員と野田国対委員長の2 名だけであり、野田国対委員長は「他に漏らす
な、タイミングは自分で判断する」と述べた。また、後日、野田国対委員長から、
予算委員会の公聴会期日決定直前に取り上げるよう指示を受けた。
2)永田議員の説明を受け、野田国対委員長は、「情報仲介者」に対する全幅の信頼
が置けるという心証、「情報提供者」の置かれている不安定な状況、永田議員のこ
れまでの疑惑追及の実績・経験なども踏まえて、他者の検証は「情報提供者」の特
定につながり、その立場を危うくすると判断し、永田議員が極秘裏に内容の信憑性
をさらに補強するよう指示した。
3)また、永田議員から野田国対委員長に対して、銀行口座情報など新たな情報が次々
と入ってくる可能性についても示唆がされた。
5 2 月11 日(土)、永田議員は「メール」について前原代表に伝えた。
1)永田議員は、TBS の「サタデーずばッと」に出演した際、生放送の休憩時間中に、
同時に出演した前原代表に秘密であると念押しした上で、「メール」を一瞬見せた
うえで、公聴会期日決定の直前に取り上げる旨を伝え、代表から「がんばってね」
と言われた。
2)永田議員は、後日14 日(火)、野田国対委員長から、「代表が、永田議員が大き
な仕事をすると言っていた」と聞き、細野役員室長に口止めをした。
3)なお、14 日(火)に前原代表は、野田国対委員長から、「慎重に調査しているの
で、この件は内密にしてほしい。しっかりとした情報を得ている」と聞いた。
6 2 月13 日(月)、永田議員は、野田国対委員長に対し、情報の信憑性に確信があ
ると報告した。これに対し、野田国対委員長は、16 日の予算委員会一般質疑の準
備に入ること、「情報提供者」とも詰めを行うこと、同僚議員や専門家と事前に相
談して発言振りに注意するよう指示した。
1)永田議員は、松野予算委員会理事に「メール」を見せ、口止めしたうえで、予算
委員会の質問時間確保を要請した。
11
2)国会内において、野田国対委員長、藤村修国対委員長代理(当時、以下同じ)は、
永田議員と「メール」についての打ち合わせを行い、2 月16 日の予算委員会一般
質疑の準備に入るよう指示を出した。
3)野田国対委員長および藤村国対委員長代理は、永田議員に対し、「『情報仲介者』
を通じて『情報提供者』と直接会って、質疑においてどの程度まで情報を公表でき
るか」などの細かい詰めを行うよう指示した。また、質問に際しては疑惑追及につ
いて経験豊富な同僚議員や法律に詳しい方と事前に相談し、発言ぶりには注意する
ように指示した。
4)永田議員は、その際に藤村国対委員長代理から「『メール』に記された人物が武
部幹事長の次男であるという確証が必要である」、「振込用紙のコピーなどはない
か」と指摘を受け、西澤氏に対してその裏付けなどを要求した。
7 永田議員は、野田国対委員長の指示にもとづき、法律に詳しい同僚議員らに相談
した。
1)永田議員は、野田国対委員長の指示を受け、13 日から15 日にかけて弁護士資格
を持つ、仙谷由人議員および枝野幸男議員に個別に相談しアドバイスを受け、枝野
議員から党顧問弁護士に相談するようアドバイスされ、顧問弁護士にも電話でアド
バイスを受けた。
2)仙谷議員は、永田議員から、「この情報は直接金を振り込んだ人物からのもので
あり、口座もわかっている」と告げられたので、「振り込まれた口座と金の流れは
確認するように」と答えた。
3)枝野議員は、永田議員に対して法律の一般論を話したほか、「証拠を握って、証
明できるなら問題ないが、『情報提供者』の証言が必要になるかもしれない」とい
う旨を話した。永田議員は、「『情報提供者』を守る必要があり、なかなか表には出
せないかもしれない」という旨を話していた。枝野議員は「それはややこしいな」
と受け止め、その旨を永田議員に話した。また、間接情報だけであり、短時間の会
話でこれ以上の具体的なアドバイスが難しかったので、「顧問弁護士にきちんと付
いてもらった方がよい」と勧めた。
8 2 月14 日(火)午後、永田議員は、西澤氏から「国会質問は予定外であり、『情
報提供者』が難色を示し始めている」との話をされ、西澤氏と最終調整を行った。
その際、永田議員は、西澤氏から新たに黒塗りした「メール」を渡され、8 日に提
供された「メール」の原本を西澤氏に返却した。
1)永田議員は、西澤氏より電話で、「雑誌の記事にすることが前提だったため国会
12
質問は予定外であり、『情報提供者』が難色を示し始めている」との話をされ、西
澤氏は、永田議員の議員会館事務所を訪れ、「情報提供者」の希望に沿う形の質問
にするための最終調整を行った。
2)永田議員はその際、西澤氏から、宛名などの人物名、『@堀江』の「@」、『問題
があるようだったら』の部分を新たに黒塗りした「メール」を渡され(添付資料A
の通り)、引き替えに8 日に提供された「メール」の原本を返却した。
3)その際の西澤氏の説明は、以下の通りであった。
ア.『○○へ』という部分は受信者の特定につながる。
イ.『問題があるようだったら』の部分と『@堀江』の@マークは堀江氏本人や側
近達の間で使われている符号のようなものであり、これを明らかにすればメール
の受信者が特定される。
ウ.『□□』はライブドアの関係者で、これからこの人物を抱き込んで内通者にし
ようとしているので、迷惑をかけると困ることになる。
4)なお、「メール」の本文をワープロ打ちしたものをマスコミ関係者に配布するこ
とについては、「『情報提供者』は了解しないだろうが、永田議員がやってしまって
も問題にならないだろう」と西澤氏が判断し、そのようにすることとなった。
5)原口議員は、この日に永田議員から、新しい証拠を入手したとの連絡を受けた。
9 2 月15 日(水)、西澤氏から永田議員に対して、振込元と振込先の口座情報を「情
報提供者」から入手したとの連絡が入った。
1)永田議員は、西澤氏に対して3,000 万円の振込元と振込先の銀行名、支店名、名
義を「情報提供者」から聞き出すよう、メールで要求した。
2)これに対し西澤氏から、電話で「振込元の口座はみずほ銀行六本木支店」と伝え
られ、その後、「振込元と振込先の口座の銀行名、支店名、口座番号まで『情報提
供者』から聞き出した」と連絡があったが、「電話では話せない」として、その時
点では「振込元口座はみずほ銀行六本木支店、振込先口座は東京三菱銀行銀座支店
である」という情報のみが永田議員に対し、告げられた。
10 2 月15 日(水)、野田国対委員長は、永田議員から質疑のやり方について報告
を受けた。
1)2 月15 日(水)、野田国対委員長は、永田議員より翌16 日の質疑のやり方につ
いて、持ち時間(1 時間)の後半に「メール」問題を取り上げること、答弁者には
竹中大臣、二階大臣などを要求すること、「情報提供者」を特定されないよう入手
していたメールの写しにさらに黒塗りしたもので質問すること、質問後の記者会見
13
ではメールの写しをワープロで打ち直したかたちで資料として配ること、などの報
告を受けた。
2)なお、この頃までに藤村国対委員長代理ないし予算委員会理事(民主党)は、「メ
ール」の写しを永田議員が質問で取り上げることを承知していた。
11 2 月16 日(木)、永田議員が予算委員会一般質疑で「メール」問題を取り上げ、
終了後、国会内で記者会見した。前原代表が「確度の高い情報」と発言したが、前
述の野田国対委員長からの情報に依拠したものであった。一方で小泉総理が「ガセ
ネタ」と発言した。野田国対委員長は、永田議員に対し、翌17 日の質疑内容につ
いて指示した。
1)永田議員は、予算委員会で「メール」問題を取り上げた1 回目の質疑を行い、ラ
ブドアの堀江氏、宮内氏、平松氏、武部幹事長、武部幹事長の次男の参考人招致と
国政調査権の発動を要求した。
2)永田議員の質疑後の主な発言は次の通りであった。
○永田議員「確信を持っている」(16 日記者会見)
○野田国対委員長「衝撃的な質疑で、大変重大な問題。今日は第一弾。」(16 日)、
「総理のガセネタ発言は看過できない。ガセの根拠を明らかに。」(17 日)
○前原代表「なかなか確度の高い情報だという認識」(16 日代議士会)、「入金記録
を明らかにすれば、信憑性への疑問は氷解」(17 日外国特派員協会)
○武部幹事長「全く身に覚えがない」(16 日ぶら下がり)、「指摘の事実は見つから
ない。民主党は許されない」(17 日)
○小泉総理「ガセネタを委員会で取り上げるのはおかしい」(ぶら下がり)
○東京地検「全く把握していない」(16 日コメント)
○堀江容疑者(弁護人)「指摘の事実はない」(17 日)
3)野田国対委員長は、永田議員の質疑を院内中継で見ていたが、断定的な口調で追
及するのは想定外であり、永田議員の思い込みの強さと高揚感が原因だったのでは
ないかと思った。同時に、「疑惑追及について経験豊富な同僚議員や法律に詳しい
方とは事前に相談したと報告を受けていたので、もっと予防線を張った質問をする
と思っていた」と述懐している。また、永田議員が記者会見後、すぐにTV出演し
たことも誤算であり、すぐに国会内に戻るように指示し、永田議員、野田国対委員
長、藤村国対委員長代理、予算委員会理事と、翌17 日のライブドア問題に関する
集中審議における永田議員の20 分間の質疑内容を打合せした。
4)その内容は、明日の質疑に向けて「メール」問題に関する情報をさらにどの程度
まで公表できるかを「情報提供者」及び「情報仲介者」と相談すること、もし「メ
ール」問題の二の矢をすぐに放ちにくい場合は、ライブドアの株価のチャートや堀
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江容疑者と自民党政治家のツーショットの写真などのパネルを使って質問するこ
とを確認したというものであった。
5)また、野田国対委員長は、武部幹事長の「事実無根」という記者会見を見て、そ
の表情から心証はクロという判断に傾いた。
12 2 月16 日(木)深夜、永田議員が口座番号を入手した。翌日、秘書が振込先
口座の確認を試みるが、該当する口座は確認できなかった。
1)2 月16 日(木)深夜、永田議員の秘書が西澤氏に口座番号を問うたところ、後
にS氏が同秘書に電話で口座番号を伝えた(支店名は不明)。
2)翌日午前、東京三菱銀行の都内全ての有人支店の当座預金、普通預金、貯蓄預金
口座に対し、同秘書がS氏から伝えられた口座番号を用いて振込操作を試みるが、
該当する口座はなく、永田議員はこの時点では、振込先口座は既に閉じられている
のではないかと推察した。
13 2 月17 日(金)、永田議員は、「メール」問題について2 回目の質疑を行った。
1)野田国対委員長は、2 月17 日(金)午前、永田議員より「情報提供者」がかな
り動揺しており、新たな情報を公開するような質疑はできない旨の報告があり、永
田議員本人も動揺している様子だったので、前日の打ち合わせ通り、パネル等を使
って質問するよう指示したが、永田議員からは持ち時間の半分位は小泉総理の「ガ
セネタ」発言等に反論したいとの要望があった。
2)野田国対委員長にとって、午後に行われた予算委員会「ライブドア問題」集中審
議の質疑において、永田議員の質疑が、すでに打ち合わせ済みの、パネルを使った
堂々とした質問ではなく、哀願調の弱気な姿勢に終始してしまったことは想定外だ
った。(詳細は、衆議院予算委員会の議事録を参照)
3)2 月17 日(金)、原口予算委員は、西澤氏に対し、「『メール』が示す事実関係を
どのようにして証明するのか」と2 回にわたり電話で訊いた。これに対し西澤氏は、
「直接、振り込んだ人間が言っているのだから大丈夫だ」などと述べた。
4)同日、野田国対委員長は、前原代表に対し、「『メール』問題の追及は、党首討論
が仕上げだ」と述べた。
V.永田議員の質疑後から党首討論に至る経緯
1 永田議員の2 回の質疑後、「メール」の真贋論争が始まったが、有効な反論がで
きなかった。「対策チーム」を構成し、情報集約と対応協議を始めた。
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1)2 月17 日(金)、国対役員を中心とした「対策チーム」を構成し、情報集約と対
応協議を開始した。
@2 月17 日(金)、細野役員室長は、前原代表から、国対委員長と連携して関係者
を集めて情報収集せよとの指示を受け、野田国対委員長に関係者の招集を要請す
るとともに、党顧問弁護士に連絡をとるよう担当事務局(総合調整局)に指示し
た。
A予算委員会終了後(午後5 時過ぎ)、国会内に「対策チーム」メンバー(野田国
対委員長、藤村国対委員長代理、中川議運筆頭、三井議運理事、細川予算筆頭、
松野予算理事、原口予算委員、細野役員室長)が集まり、情報集約を行った。そ
こに遅れて、党顧問弁護士が加わった。
B会議では、「『メール』の存在自体が疑われているため、『メール』を公開すべき」
との意見が多数を占めた。
C野田国対委員長は、永田議員に対し、「必要なら警備員をつける」、「安全のため
に『情報提供者』を保護下に置き、確実に『情報』の入手を図れ」と指示した。
D野田国対委員長は、顧問弁護士とともに『情報提供者』に会うため、永田議員に
連絡を取り、午後7 時半頃に外出した。
E会議後、藤村国対委員長代理は、記者団にブリーフィングを行った。メンバーは、
「午後9 時に都内ホテルに再集合する」ことを申し合わせて一旦解散した。
Fなお、夕方、国会内に立ち寄った松本政調会長は、細野役員室長の依頼により、
報道対応のために国会内に残った。
2)永田議員は、西澤氏に「メール」配布の了解を求めたが、西澤氏は難色を示した。
永田議員は、西澤氏に会って説得する際に西澤氏から口座情報を提供され、永田
議員の秘書が、振込元口座が「ライブドア・ファイナンス」名義であることを確
認した。
@2 月17 日午後6 時頃から、永田議員は、野田国対委員長の指示にもとづき、西
澤氏に対し、「メール」の配布を了解するよう電話で伝えた。これに対し西澤氏
は、「『情報提供者』が怯えており、これ以上刺激すると『情報提供者』との関係
が切れてしまう」と難色を示した。そのため、永田議員は、永田議員の宿舎で西
澤氏と会い、説得した。
A「情報提供者」についての西澤氏の説明は、以下の通りだった。
ア.「情報提供者」は17 日、新しい勤務先に出勤したが、朝、ライブドア関係者
から「『情報提供者』はお前だろう」と指摘され、面会を求められたため、や
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むなく午後1 時から複数のライブドア関係者と面会した。「情報提供者」は、
シラを切り通したが、大変怯え、困惑しているので、「メール」の提供を説得
できる状況にない。
イ.「情報提供者」との信頼関係が回復すれば、(メールが記録されている)ハー
ドディスクのコピーを含めて、手に入れる自信はある。
B永田議員は、西澤氏に「時間的猶予は乏しい」、「マスコミに『メール』を配布し
なければ民主党が崩壊する」と述べた。これに対し西澤氏は、「ハードディスク
を盗んでしまいましょうか。どこにあるか分かっているので、私ならできる」と
述べたが、永田議員は「そんな犯罪行為などできるわけがない。絶対にそんなこ
とはするな」と述べた。
Cさらに、永田議員は、西澤氏から振込元と振込先の口座情報を口頭で提供され、
それをメモした。その内容は、以下の通りだった。
ア.振込元は「三井住友銀行渋谷駅前支店普通預金口座×××××××」であり、
16 日深夜に永田議員が入手した口座は、誤って伝えられたものだった。
イ.振込先は「東京三菱銀行であるが支店名は不明。普通預金口座××××××
×」であり、振込先口座の名義は武部氏次男の個人口座である旨、改めて説明
された。
Dそこで永田議員は、宿舎に向かっていた永田議員の秘書に、ATMを使って振込
操作を試み、口座が実際に存在するか確認するよう指示した。秘書は、振込元口
座が「ライブドア・ファイナンス」の名義で存在していることを確認し、その振
込画面を携帯電話のデジタルカメラに納めた。また、以前西澤氏が振込先口座は
銀座支店ではないかと言っていたので、秘書は、銀座支店に振込操作を試みたが、
口座は存在しなかった。そのため、永田議員は、振込先口座は既にクローズされ
ているのではないかと推測した。
E同様に西澤氏も、スタッフに連絡をとり、そのスタッフが振込操作を試みて「ラ
イブドア・ファイナンス」の口座が映っている振込画面をデジタルカメラに納め
た。
3)2 月17 日午後8 時頃、野田国対委員長は、顧問弁護士とともに永田議員の宿舎
を訪れ、永田議員と一緒にいた「情報仲介者」と面会し、「メール」配布の了解
を求めた。
@2 月17 日(金)午後8 時前後、野田国対委員長は、顧問弁護士とともに永田議
員の宿舎を訪れ、永田議員と一緒にいた「情報仲介者」と面会した。
A永田議員は、野田国対委員長に西澤氏を「あえてお名前は紹介しませんが」と「不
自然な紹介」をし、「情報仲介者」も自己紹介することなく会談は始まった。
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Bその時の「情報仲介者」について、野田国対委員長は、「出版社を経営している
信頼できる人物だと事前に聞いていたので、ある程度年輩の人かと想像していた
が、30 代前半の小声で不安げに話をする人物だったので意外な感じだった」と
の第一印象を持った。
C野田国対委員長は、「情報仲介者」に対し、「『情報提供者』を守ることが最優先
なので、安全のために『情報提供者』の身柄を預からせてほしい」と申し出た。
これに対し、「情報仲介者」は、その旨を情報提供者に伝えると答えた。
Dまた、野田国対委員長は、「情報仲介者」に対し、「至急に『メール』の写しを配
布したいので是非協力してほしい」と要請し、事態の重大性、緊急性を強調して
「メール」をマスコミに配布できるように説得した。これに対し、「情報仲介者」
は、「『情報提供者』は『情報仲介者』との関係よりも『情報仲介者』の経営する
会社に強い影響力を持つ人物との関係の方が深く、『メール』をマスコミに配布
すれば、『情報提供者』が困惑するだけでなく、その人物と『情報仲介者』の関
係も壊れてしまう。」と説明して「メール」の配布に難色を示し、永田議員と二
人だけで話すことを要求した。
E永田議員は、宿舎の別室で「情報仲介者」と二人だけで断続的に話した。「情報
仲介者」は、事態の大きさに困惑し、「自分が国会に呼ばれることになるのでは
ないか」としきりに心配していた。午後8 時半頃、「情報仲介者」は、渋々永田
議員の説得に応じ、「『情報提供者』を確実に説得するから野田氏と顧問弁護士は
ひとまず引き取って欲しい」と述べた。
F「情報仲介者」は、野田国対委員長に対し、「『情報仲介者』の経営する会社に強
い影響力のある人物の了解が必要であり、その人物にこれから会いに行くので回
答を待ってほしい」と述べた。これに対し、野田国対委員長は、「この部屋で待
っている」と粘ったが、「情報仲介者」から「前向きな回答ができるように努力
するので、お引き取りいただきたい」と言われ、顧問弁護士とともに退室し、「対
策チーム」が再集合するホテルに向かった。それまでに、永田議員の秘書は宿舎
に到着した。
G「情報仲介者」は、再び永田議員と二人きりで話すことを求め、永田議員と「情
報仲介者」は別室で話をした。そこで「情報仲介者」は、永田議員に対し、「『情
報提供者』が『メール』を配布することに同意することは絶対にあり得ない。野
田氏には『情報提供者』を説得すると述べたが、無断で公表することにしましょ
う」と述べた。
4)17 日(金)午後9 時頃、「対策チーム」が再集合したところに、永田議員より野
田国対委員長に「メール」公表の了解が得られたとの電話が入った。午後9 時半頃、
永田議員が「対策チーム」に合流し、「情報仲介者」が西澤氏であることを明かし
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た。野田国対委員長は、「情報仲介者」の了解を得て記者会見を開き、「メール」の
コピーを配布した。
@午後9 時頃、「対策チーム」メンバーは、都内ホテルに再集合した。野田国対委
員長は、メンバーに対し、「『情報仲介者』と会えたが『情報提供者』とは会えな
かった。『情報仲介者』とは名刺交換もできず、コミュニケーションが取れなか
った。『情報仲介者』は、永田議員との信頼関係で動いているのに、第三者が入
ってきて心証を害したようだ」と報告した。その頃、永田議員は、野田国対委員
長に対し「『メール』配布の了解は得られた」と電話で伝えた。
Aその際の「対策チーム」メンバーのやり取りなどは、以下の通りだった。
ア.藤村国対委員長代理、原口予算委員から、「情報提供者」がライブドアを退
職して大手企業の系列会社に在籍しているとの情報が提供されたが、その関係
者に確認したところ該当者は在籍していないことが判明した。
イ.藤村国対委員長代理は、「送金元の口座情報は『情報提供者』から直接提供
されたと永田議員から聞いている」と報告した。(その後19 日に、永田議員は
「情報提供者」とは話したこともないことが判明した。)
ウ.原口予算委員は、「『情報仲介者』は西澤氏であり、信用性に問題がある可能
性がある」と述べた。また、西澤氏が社長を務めるデュモン・マーケティング
のS氏の名前も話題となった。
エ.顧問弁護士から、名誉毀損の事実を証明する際の立証責任について説明があ
った。
オ.「メール」(添付資料A)が出席者全員に配布された。
B午後9 時半頃、永田議員は、都内ホテルに集合した「対策チーム」に合流し、以
下の通り発言した。
ア.「情報仲介者」の名前は西澤である。(「情報仲介者」が西澤氏であることを
初めて明かす。)
イ.「情報提供者」はライブドア元社員のY氏(実名)である。永田議員と西澤
氏との信頼関係から、その情報に確信を持っている。
ウ.西澤氏は、若いがやり手である。西澤氏は、この問題が表面化すると重要な
クライアントを失い、立ち上がれないほどの大損害を受ける。
C午後10 時頃、野田国対委員長は、細川予算筆頭とともに党本部に向かい、午後
10 時15 分から記者会見を開いて、「メール」(添付資料A)のコピーを配布した。
D午後11 時頃、野田国対委員長は、記者会見を終え、細川予算筆頭および松本政
調会長とともに「対策チーム」に再合流した。
E野田国対委員長は、永田議員に対し、週末は地元活動よりも「情報提供者」と接
触することを最優先とするよう指示した。
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Fその前後、細野役員室長は、前原代表および鳩山幹事長に経過を報告した。報告
を受けた鳩山幹事長は、細野役員室長に対し、平野総合調整局長を「対策チーム」
メンバーに加えるよう指示した。これを受けて細野役員室長は、野田国対委員長
に平野総合調整局長への連絡を依頼するとともに、松野予算理事(筆頭副幹事長)
に玄葉幹事長代理への連絡を依頼した。
G深夜0 時過ぎ、「対策チーム」は、19 日(日)午後9 時に平野総合調整局長およ
び広報戦略本部メンバーを加えて集まること、野田国対委員長と永田議員が西澤
氏と連絡を取って「情報提供者」に接触を図ること、を確認して解散した。
2 2 月18 日(土)、「情報提供者」との接触を試みるとともに、西澤氏についての
調査、「メール」の鑑定、口座情報の調査、「メール」以外の周辺疑惑の調査を開始
した。
1)2 月18 日(土)、永田議員は、「情報提供者」との接触を試みるが、面会できな
かった。
@2 月18 日(土)朝、永田議員は、さらなる調査と「情報提供者」に接触するた
め、西澤氏に連絡したが、西澤氏は、「今日は静岡県掛川で民主党関係者の結婚
披露パーティーに出席する」と述べ、西澤氏が帰京してから合流することを申し
合わせた。現時点までの調査で、西澤氏が掛川の結婚披露パーティーに出席した
との事実は存在するものの、「民主党関係者」との話は粉飾であると考えられる。
A西澤氏の帰京予定時刻はどんどん遅れ、ようやく午後10 時頃、西澤氏は、永田
議員に対し、「今東京駅に着いた。これからS氏と合流して『情報提供者』の説
得にあたる」と連絡した。
B永田議員は、西澤氏に事態の切迫度が伝わっていないと感じ、西澤氏に「S氏と
合流しなければならないのか」と訊いた。これに対し西澤氏は、「S氏の報告を
受けなければ動きようがない」と述べた。
C深夜、西澤氏は、S氏から報告を受け、永田議員に電話で以下の通り述べた。
ア.「情報提供者」は成田空港近辺のホテルに滞在し、今日は終日、自分のパー
トナーが一緒にいて「情報提供者」のケアをした。
イ.「情報提供者」に対するメディアの追及をかわし、「情報提供者」がよからぬ
情報に接することを避けるため、できるだけ早く海外に出国させたいと考えて
いる。
ウ.今日、静岡に出発する前、「情報提供者」のもとを訪れ、手元にあった現金
300 万円と『ハードディスクを西澤氏に渡して出国しなさい』という手紙を置
いてきたが、『家族もいるのですぐに出国することはできない』と言われたた
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め、出国は実現していない。
エ.一日ホテルでふさぎ込んでいた「情報提供者」は、相当に混乱しており、一
時は本当にホテルの窓から飛び降りそうになったので、「パートナー」がこれ
をおさえた。
Dこの時点で永田議員は、「パートナー」は西澤氏の妻だと考えていた。(後日の西
澤氏の話でこれはS氏であることが判明した。)
2)2 月18 日(土)、野田国対委員長は、永田議員に西澤氏との接触を任せた。同夜、
「対策チーム」メンバーが対応を協議し、西澤氏についての調査、メールの鑑定、
口座情報の調査を継続するとともに、「メール」以外の周辺疑惑の調査を開始した。
@2 月18 日(土)、野田国対委員長は、永田議員から、「西澤氏が静岡県の結婚式
に出席したため、西澤氏が夜東京に戻るまでは情報提供者との接触は困難」、「『情
報提供者』には西澤氏の妻が付き添っている」との報告を受けた。
Aまた、野田国対委員長は、永田議員から、「昨晩の野田国対委員長に対する西澤
氏の印象はとても悪かった」、「原口予算委員も3 回ほど西澤氏に電話をかけて永
田議員をサポートしようとしたが、西澤氏は原口予算委員に対しても不快感をも
っている」との報告を受け、永田議員から「西澤氏との接触は自分に任せてほし
い」と懇願された。野田国対委員長は、やむなく西澤氏との接触を永田議員に任
せ、永田議員が一番信頼している手塚仁雄前衆議院議員に、永田議員をサポート
するよう要請した。
B細野役員室長は、電話で西澤氏およびS氏についての調査を行うとともに、「メ
ール」の鑑定を複数の専門家に依頼した。その過程で細野役員室長は、ライブド
ア社が使用しているメールソフトが「ユードラ」であることなどの情報を得て、
前原代表に「西澤氏は信用できない人物である」が、「『メール』はライブドア内
部でやり取りされたものである可能性が高い」と電話で報告した。細野役員室長
は、その後の調査で「メール」の信憑性に疑問を持ち、19 日にその旨を前原代
表に報告した。また、細野役員室長は、口座の金の動きを調べられないか、松本
政調会長、大塚耕平・福山両役員室長代理、国対事務局に相談したが、合法的に
調べることは難しいとの結論に達した。
C午後7 時半頃、国会近辺にいた「対策チーム」メンバーは、野田国対委員長の議
員会館事務所に集まった。参加した、野田、藤村、松野、原口、細野、細川、中
川の各議員のやり取りは以下の通りだった。
ア.藤村国対委員長代理は、送金元の口座が実際に存在することを確認したと報
告した。
イ.西澤氏から永田議員に初めに提供された、黒塗りの少ない「メール」(添付
21
資料@)が出席者に配られた。
D深夜、永田議員から、西澤氏とは会えなかったと最終的な報告があり、メンバ
ーは解散した。
E細野役員室長は、深刻な事態であることを再認識し、福山役員室長代理および
原口予算委員などに、「メール」の周辺疑惑を含めた調査を依頼するとともに、
自らも武部幹事長と堀江氏のつながりの調査を開始した。
3)2 月19 日(日)、西澤氏から、永田議員に対し、「『情報提供者』が情報の電磁的
データを売ってもいいと言っている」との連絡があった。野田国対委員長は、『情
報提供者』の存在を確認するため、瀬踏みを掛けたが、確認はできなかった。
@2 月19 日(日)、永田議員は、野田国対委員長に対し、「未明に西澤氏から電話
連絡があった。珍しく『情報提供者』から西澤氏に電話があり、高飛びも考えて
いるような状況なので、場合によっては『情報提供者』が持っている様々な情報
が入力されているハードディスクやメールの電磁的データをコピーしたハード
ディスクを売ってもいいと言っている」と報告し、「西澤氏を通じて『情報提供
者』と具体的な交渉に入っていいか」と相談した。
Aこれに対し、野田国対委員長は、金銭の話が出てきたことをいぶかしんだが、「『メ
ール』の信憑性の立証が困難を極めるなか、それが『情報提供者』の存在を確認
できる唯一の手段ならば、瀬踏みを掛けても交渉の余地は残した方がいい」と考
え、永田議員に対し、「西澤氏と『情報提供者』とハードディスクを保護下に置
くことが最優先」であり、「西澤氏と『情報提供者』を職員として雇用して生活
を保障することも考える」、「『情報提供者』との交渉には自分が出向く」と述べ
た。
Bまた、永田議員は、野田国対委員長に対し、「自分で1,000 万円程度は用意でき
る」と述べた。これに対し、野田国対委員長は、「必要なら、党でそれくらいは
何とか用意できる」と述べた。
C永田議員は、西澤氏に対し、その条件で「情報提供者」と交渉に入りたい旨を伝
えた。これに対し、永田議員によると、西澤氏は、「永田議員に経済的に迷惑を
かけるわけにはいかない。民主党ならば少しは気が楽だが、それでも受けるわけ
にはいかない。経済的な負担は自分で賄うから心配するな」と述べた。
D西澤氏から金銭の話が出てきたことを受け、野田国対委員長は、原口議員に対し、
改めて西澤氏の身辺を徹底的に洗うよう指示した。午後遅く、原口予算委員は、
野田国対委員長に「西澤氏の評判がすこぶる悪い」と報告した。それを受け、野
田国対委員長は、永田議員に対し、独自の判断と行動は慎み、西澤氏や「情報提
供者」とのやりとりは逐次報告して判断を仰ぐよう指示した。
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Eその夜、野田国対委員長は、顧問弁護士から、「偽情報に金銭を支払うことにな
れば、相手が詐欺罪を構成するので、情報を買うようなことはすべきでない」と
の助言を受け、交渉を通じた「情報提供者」の存在の確認を断念した。
4)2 月19 日(日)夜、「対策チーム」メンバーが対応を協議した。
@2 月19 日(日)午後9 時、「対策チーム」メンバーが都内ホテルに集まり、対応
を協議した。出席者は、永田議員、野田国対委員長、藤村国対委員長代理、平野
総合調整局長、細野役員室長、細川予算筆頭、松野予算理事、原口予算委員、中
川議運筆頭、蓮舫議員、党顧問弁護士だった。途中、原口予算委員は、「独自調
査を行う」と言って退席した。遅れて、玄葉幹事長代理が会合に合流した。
Aこの会合において報告された事項、および出席者の発言等は以下の通りだった。
ア.西澤氏の経歴等が判明し、「メディアが西澤氏を特定した。とくに某週刊誌
は確信を持っている」との報告があった。
イ.「メール」に出てくる名前は、いずれも実在するライブドアの社員であるこ
とが判明した。
ウ.「送金の元帳を見た協力者が存在すること、『メール』に記された3,000 万円
の送金のほかに1,000 万円が2 回にわたり送金されたとの情報がある」ことな
どが報告された。
エ.顧問弁護士は、「『メール』については誤りを認めるべき」、「『メール』の真
偽性について、専門家による調査を行い、報告書をつくるべき」と進言し、危
機管理の重要性を主張した。
オ.野田国対委員長は、細野役員室長に、「メール」の真偽性に関するレポート
の作成を指示した。
Bこの会合において永田議員は、終始西澤氏と電話で話し続けた。出席者によると、
永田議員は、すでに不安定な様子に陥っていた。永田議員と西澤氏の電話による
やり取りは、以下の通りだった。
ア.永田議員は、西澤氏に「メディアが西澤氏を特定した。とくに某週刊誌は確
信を持っている」と伝えた。
イ.すると西澤氏は、ひどく狼狽し「S氏の謀略だ」と述べ、「自分の名前が報
じられると経営する会社に大きな損害を与え、自分は会社を失う」と説明し、
「メディア対応に長けた弁護士を頼むことにする」と述べた。
C「対策チーム」は、新たな疑惑の調査を並行して行うことを確認し、解散した。
Dこの後、永田議員は、23 日(木)に世田谷の病院に入院するまでの間、このホ
テルに滞在した。
23
3 2 月20 日(月)、党幹部による対応策の協議が行われ、22 日(水)の党首討論
に向けた準備が始まった。
1)2 月20 日(月)、「メール」の信憑性の立証、新たな疑惑調査とも進展はなかっ
た。
@2 月20 日(月)、永田議員は、西澤氏に対し、「プロ野球選手とのトラブルなど、
西澤氏の評判が芳しくないことを党が懸念している」と伝えた。これに対し西澤
氏は、激高した。
A細野役員室長は、朝から「メール」の信憑性の検証を行った。その結果、書かれ
ている内容についても不自然な点が多いことが判明し、旧知の専門家に依頼して、
「『メール』は本物ではない」とするレポートを作成し、この夜、野田国対委員
長に渡した。
B細野役員室長は、「メール」および「口座」問題について、撤退・前進両にらみ
で22 日の党首討論の準備を進めた。この時、細野役員室長は、「『メール』問題
で前進を選択するならば、新たな疑惑を追及するしかない」と考え、新疑惑の発
掘に奔走した。
Cこの時点までに、「メール」の信憑性の裏付け、新たな疑惑の調査のいずれにつ
いても進展がなかった。
2)2 月20 日(月)夜、幹部協議が行われ、22 日の党首討論までに新たな疑惑の情
報を入手する方針が確認され、対策チームに伝達された。この夜の報道番組で、平
沢議員が「メール」を入手したとしてそれを公表した。
@午後10 時頃、都内ホテルで幹部協議が行われた。出席者は、前原代表、鳩山幹
事長、松本政調会長、野田国対委員長、玄葉幹事長代理、平野総合調整局長、細
野役員室長の7 名だった。
A会議冒頭に野田国対委員長は、一連の経過を説明し、「メール」の信憑性が立証
できていないことを詫び、「自らの責任である」と述べた。
B会議では、早期の撤退論を含め、様々な議論があった。また、周辺疑惑について
の情報交換が行われ、22 日の党首討論までに新たな疑惑の情報入手に全力を挙
げることが確認された。
C午後11 時頃、野田国対委員長は、細野役員室長とともに、別のホテルに待機し
ていた「対策チーム」メンバーに、幹部協議の結論を伝えた。出席者は、藤村国
対委員長代理、松野予算理事、中川議運筆頭、蓮舫議員らであった。
D深夜、野田国対委員長は、永田議員および付き添っていた手塚前議員に対し、一
24
連の会議の経過を伝えた。
E同夜、自民党の平沢議員は、報道番組に出演し、「メール」を入手したとしてそ
れを公表した。
3)2 月21 日(火)午前、野田国対委員長は、役員会、常任幹事会に前日までの経
過を報告した。
@2 月21 日(火)午前8 時過ぎ、野田国対委員長は、役員会において、前日まで
の経過を報告した。これに対し、参議院役員から懸念する意見が出された。
A午前10 時、野田国対委員長は、常任幹事会において、報告した。出席者から質
問や意見は出されなかった。
4)2 月21 日(火)、「メール」の送信元と送信先のアドレスが同一との情報が流れ
たが、真偽の判断に至らないまま党首討論の準備が進められた。午後の記者会見に
おいて前原代表は、党首討論で「メール」問題を取り上げざるを得ないと考え、「楽
しみにしていただきたい」と再び発言した。
@2 月21 日(火)、「対策チーム」メンバーは、国会内で断続的に情報交換を行っ
た。
A細野役員室長は、新たな疑惑の調査にあたっていた平野総合調整局長および福山
役員室長代理から、党首討論で追及できるテーマはないとの報告を受けた。
B原口予算委員は、国会内で、居合わせた「対策チーム」メンバーに、送信元(from)
と送信先(to)が同一の「メール」のプリントアウトを見せた。「対策チーム」
メンバーは、この「メール」について協議したが、真偽の判断には至らなかった。
C午後3 時、前原代表が、定例記者会見において22 日の党首討論を「楽しみにし
ていただきたい」と発言した。これは、質問項目も決定していないにもかかわら
ず、記者から繰り返し質問を受けて、「明日の党首討論を聞いてもらえばわかる」
という趣旨で「楽しみにしていただきたい」と述べたものだった。
D夕方、野田国対委員長と藤村国対委員長代理は、永田議員と会い、「メール」の
送信元(from)と送信先(to)が同一であるという説が出回っていることを話し
た。それを聞いた永田議員は、驚き、野田国対委員長に「そのことを西澤氏に質
してもいいか」と訊いた。野田国対委員長は、永田議員に、そのことは西澤氏に
は伝えず、党首討論まで「メール」の信憑性の立証に努めるよう指示した。
E深夜、細野役員室長は、党首討論に向けた新たな疑惑の調査を断念し、その旨を
前原代表の留守番電話に伝言した。
25
5)2 月22 日(水)、前原代表は、「国政調査権の行使に応じれば口座情報を明かす」
と迫る方針にもとづき、党首討論で「メール」問題を取り上げた。その際、前原代
表は「確証」を得ていると発言したが、終了後「言葉が間違っていた」と述べた。
@2 月22 日(水)昼前後、幹部は党首討論について打ち合わせを行った。出席者
は、前原代表、鳩山幹事長、松本政調会長、野田国対委員長、玄葉幹事長代理、
細野役員室長の6 名だった。
A打合せにおいて、出席者から、党首討論で「メール」問題を取り上げることの是
非について、賛否両論が出されたが、最終的に、党首討論では「メール」には触
れないこととすること、また昼の予算委員会理事会で「国政調査権の行使に応じ
れば口座情報を明かす」ことを主張した上で、党首討論においても同様の主張で
迫る方針が確認された。
Bこの時点で、前原代表は、「メール」を持ち込んだ人物と「口座」情報の提供者
は別人であると認識していた。
C前原代表は、党首討論において、「口座」情報について「確証を得ている」と発
言し、国政調査権の発動を要求したが、終了後のぶら下がり取材において「言葉
が間違っていた」と述べた。
Dこの時点では、党首討論に対するマスコミの最大の関心と注視の的は「メール」
問題であるとの空気が極めて強く、この問題を避けることはできないとの思いも
強くあって、前述の発言となった。
W.党首討論後から処分等の決定に至る経緯
1 2 月22 日(水)夜、永田議員は自らの進退を野田国対委員長に預けた。永田議
員の意思は二転三転したが、翌23 日(木)朝、永田議員の進退が幹事長に一任さ
れ、その深夜、永田議員は世田谷区の病院に入院した。
1)2 月22 日(水)夜、野田国対委員長は、翌日に本会議が予定され、永田議員に
おいても出席する必要があることを踏まえ、「翌23 日(木)の国対委員長定例会見
に、永田議員が同席し、2 月17 日の予算委員会質疑以降の取り組みについて説明
すべきだ」と考え、その打合せをするために永田議員と面会した。その際、永田議
員は、野田国対委員長に進退を預けた。
@永田議員と面会した野田国対委員長は、永田議員に、「情報の信憑性の立証がで
きていないことに、党内外から厳しい声が上がっている」と伝えた。永田議員は、
「これ以上努力しても情報の信憑性を確認することは困難である」、「自身の力不
26
足を詫び、進退については国対委員長に預ける」と述べた。
A午後7 時頃、前原代表、松本政調会長、野田国対委員長、玄葉幹事長代理、細野
役員室長が都内ホテルに集まった。
Bその場で、野田国対委員長は、永田議員の進退伺いを預かっていると報告した。
これに対し、前原代表は、「本人のためにも、党のためにも、永田議員は自発的
に辞職すべきである」と提案し、他の出席者もこれに同調した。前原代表は、「私
が永田議員に辞職を促す」と述べたが、野田国対委員長が「永田議員のことは自
分に任せてほしい」と述べ、野田国対委員長に一任された。
C午後7 時過ぎ、野田国対委員長と藤村国対委員長代理は、永田議員が滞在するホ
テルの部屋を訪れた。その場で、野田国対委員長は、永田議員に対し、自分の判
断で辞職するよう申し向けた。これに対し、永田議員は「その判断に従いたい」
と述べた。
Dその後、野田国対委員長は、前原代表、鳩山幹事長(留守電に伝言)、玄葉幹事
長代理、細野役員室長に、「永田議員は辞職の意思を固めた」と報告した。
E野田国対委員長は、藤村国対委員長代理、蓮舫議員らとともに、翌日の永田議員
の記者会見に向けた準備を行った。
2)2 月23 日(木)朝、永田議員の辞意が揺らぎ、「本人の意思が確認できれば辞任
を認める」ことが確認され、その対応が鳩山幹事長に一任された。
@2 月23 日(木)午前2 時頃、永田議員は、海外出張中の実父に電話で辞職する
旨を説明した。実父は、永田議員に「それは筋が違うのではないか」などと翻意
を促した。
Aその後、永田議員は、一睡もせずに考え続け、野田国対委員長と藤村国対委員長
代理に電話を掛けたが、未明で話はできなかった。午前5 時半頃、永田議員は、
野田国対委員長から電話を受け、「辞職しません」と伝え、同じホテルに宿泊し
ていた野田国対委員長の部屋を訪れた。
Bそこで野田国対委員長は、「永田議員が辞職しないのであれば、自分が責任をと
る」と述べ、永田議員を説得した。永田議員は、説得に応じ、改めて議員辞職す
る意思を固めた。野田国対委員長は、「永田議員は、心身の疲労が極限に達し、
進退についての心境も大きく揺れ動いている」と感じ、藤村国対委員長代理と手
塚前議員に永田議員の付き添いを要請し、ホテルを離れた。
C午前8 時、野田国対委員長は、藤村国対委員長代理と手塚前議員の到着後、鳩山
幹事長に緊急役員会の開催を要請した。
D午前9 時45 分、緊急の役員懇談会において、野田国対委員長は、永田議員の進
退が自分に預けられたと報告し、一連の経過を説明した。会議では、本人の判断
27
を尊重すべきとの意見も多く出されたが、異論もあり、永田議員の進退等の扱い
について、「本人の意思が確認できれば辞任を認める」ことが確認され、その対
応が鳩山幹事長に一任された。
3)2 月23 日(木)、永田議員は、鳩山幹事長と野田国対委員長に、辞職の意思がな
いことを伝えた。夜、役員懇談会において、永田議員を一旦入院させ、退院してか
ら進退を判断することが了承された。
@2 月23 日(木)昼頃、鳩山幹事長は、野田国対委員長から、「永田議員が議員を
辞めたくないと言っている」との連絡を受け、夕方、野田国対委員長とともに、
永田議員が滞在するホテルを訪れた。
Aそこで永田議員は、鳩山幹事長に、「ご迷惑をおかけして申し訳ない」、「隔離さ
れた環境で情報が乏しく、入ってくる情報は進退にかかわることばかりで、精神
的に大きく混乱しており、正常な判断を下すことは不可能だと思う」、「党内や国
会、そして世論がどのように反応するか全く予想できず、もしかしたら大変な迷
惑をおかけすることになるかもしれないが、可能であれば辞職は避けたい」、「進
むも地獄。退くも地獄。だけど茨の道でも前へ進みたい」と述べた。
Bそれを聞いた鳩山幹事長は、「永田議員は精神的にも肉体的にも限界に達してい
る」と判断し、永田議員に「入院したほうがよいのではないか」と話した。
C午後7 時30 分、鳩山幹事長は、再び開催された役員懇談会において、「永田議員
に辞職の意思がなく、精神的にも肉体的にも限界に達して不安定な状況にあるた
め、一旦入院させて退院後に進退を判断する」と報告した。一部出席者は、永田
議員の入院に反対したが、「永田議員が憔悴しているためやむを得ない」として、
鳩山幹事長の報告は了承された。
D午後11 時頃、永田議員は、世田谷区の病院に入院し、直ちに血液検査と点滴、
レントゲン検査が行われた。医師の所見は「過労とストレスによる脱水症状と不
眠であり、点滴と食事療法が必要」とのことだった。
4)2 月23 日(木)夜、鳩山幹事長は、「永田議員の入院に関するコメント」と「『メ
ール』の信憑性を100%立証することはできなかった」とするコメントを発表した。
@2 月23 日(木)夜、役員懇談会後に幹部が協議し、「メール」の信憑性がないこ
とを認めることを確認した。
A深夜、鳩山幹事長は、記者団に「永田議員の入院に関するコメント」と「『メー
ル』の信憑性を100%立証することはできなかった」とするコメントを発表した。
28
2 2 月26 日(日)夜、鳩山幹事長、玄葉幹事長代理、平野総合調整局長が事態収
拾に向けた打ち合わせを行った。28 日(火)に永田議員が退院して記者会見を行
うとともに、「メール」は本物ではないとの調査結果を発表し、役員等の処分を決
定した。
1)2 月24 日(金)以降、調査を継続したが、新たな事実は判明しなかった。
@永田議員の入院後、西澤氏は、永田議員に「メールを西澤氏に持ち込んだのはS
氏である。このことは100%間違いのない事実だ。」と電話で述べた。これを聞
いて永田議員は、「『メール』はライブドアの元社員がハードディスクをコピーし
て持ち出したものから西澤氏が選別したという以前の説明と明らかに矛盾する」
と考えた。
A2 月26 日(金)、野田国対委員長は、永田議員に、しっかりと休養するため、家
族、秘書、手塚前議員以外とは連絡をとらないように注意した。
Bこの間、「メール」や「口座」、新たな疑惑などについて調査が継続されたが、新
しい事実は得られなかった。
2)2 月26 日(日)夜、鳩山幹事長、玄葉幹事長代理、平野総合調整局長が事態収
拾に向けて打ち合わせを行った。翌27 日(月)、昼の幹部協議で、28 日(火)に
永田議員が退院して記者会見を行い、役員等の処分を行う方針が確認された。
@2 月26 日(日)夜、鳩山幹事長、玄葉幹事長代理、平野総合調整局長が都内ホ
テルに集まり、事態収拾に向けて打ち合わせを行った。翌27 日に永田議員が退
院することは難しいと判断された。
A2 月27 日(月)昼、代表、幹事長の協議において、「メール」は堀江容疑者が発
信したものでないと判断せざるを得ないとの認識で一致し、翌28 日(火)に永
田議員が退院して記者会見を行うこと、「メール」は本物ではないとの調査結果
を発表し、役員等の処分を行う方向で手続きを進めることなどが確認された。
B午後1 時頃、野田国対委員長は、前原代表に、国対委員長の辞任を申し出た。前
原代表は、「預からせてほしい」とだけ答えた。深夜、野田国対委員長は、鳩山
幹事長の留守番電話に、国対委員長の辞意を伝言した。
C午後1 時頃、玄葉幹事長代理は、細野役員室長に、永田議員の記者会見および代
表記者会見の準備を指示した。細野役員室長は、松本政調会長、加藤広報戦略本
部事務総長、大塚同代理、福山役員室長代理、笠制作局長に、協力を要請し、永
田議員および代表の記者会見の準備を進めた。しかし、関係者の日程が合わず、
十分な打ち合わせが出来ないまま、会見の準備は深夜に及んだ。
29
D午後、鳩山幹事長は、羽田最高顧問、渡部最高顧問(当時)、小沢元党首、菅元
代表、岡田前代表(電話)を訪ね、意見を聴いた。
3)2 月28 日(火)朝、幹部協議および役員懇談会において、鳩山幹事長と野田国
対委員長が辞意を表明した。前原代表の慰留に対し、鳩山幹事長は、「しばらくの
間、事態収拾の責任を全うする」という思いに至り、辞意を撤回した。永田議員の
党員資格停止処分、野田国対委員長の辞任、鳩山幹事長に対する常任幹事会名によ
る厳重注意などの方針が確認された。
@2 月28 日(火)早朝、野田国対委員長は、鳩山幹事長に、改めて国対委員長を
辞任したい旨を電話で伝えた。
A午前7 時、前原代表と鳩山幹事長の打ち合わせが始まった。午前7 時半頃、玄葉
幹事長代理、平野総合調整局長、細野役員室長が加わり、午前8 時頃、松本政調
会長、野田国対委員長が加わった。その場で、鳩山幹事長と野田国対委員長が辞
意を表明し、前原代表は、鳩山幹事長を慰留した。
B午前8 時半、江田参議院議員会長が加わり、役員懇談会が開かれた。前原代表の
慰留に対し、鳩山幹事長は、「しばらくの間、事態収拾の責任を全うする」とい
う思いに至り、辞意を撤回した。会議において、永田議員の党員資格停止処分、
野田国対委員長の辞任、鳩山幹事長に対する常任幹事会名による厳重注意などの
方針が確認された。
4)2 月28 日(火)午前、永田議員が退院し、記者会見に向けて打ち合わせを行い、
午後2 時45 分、永田議員が記者会見を行った。
@2 月28 日(火)午前、永田議員は、世田谷区の病院を退院し、国会周辺で鳩山
幹事長と面会した。その場で、鳩山幹事長は、永田議員に、処分内容を伝えた。
Aその後、永田議員は、同じ場所で、担当議員と記者会見の打ち合わせを行った。
その際、永田議員と出席者は、用意された原稿を若干修正し、読み上げることを
確認した。
B午後2 時45 分、永田議員は、国会内で記者会見を行った。その場には、鳩山幹
事長と野田国対委員長が同席した。
5)2 月28 日(火)午後、役員会、常任幹事会、両院議員総会において、「メール」
は本物ではないとの調査結果が報告され、処分等が決定された。続いて、鳩山幹事
長と前原代表が記者会見を行い、自民党、武部幹事長およびそのご次男に対して謝
罪を表明した。
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@2 月28 日(火)午後3 時30 分、役員会において、「メール」は本物ではないと
の調査結果、永田議員の党員資格停止処分、野田国対委員長の辞任、鳩山幹事長
に対する常任幹事会名による厳重注意などの方針が承認された。
A午後4 時、常任幹事会において、「メール」は本物ではないとの調査結果が報告
され、永田議員の党員資格停止処分、野田国対委員長の辞任、鳩山幹事長に対す
る常任幹事会名による厳重注意などが決定された。
B午後5 時、両院議員総会において、永田議員が謝罪するとともに、「メール」は
本物ではないとの調査結果、永田議員の党員資格停止処分、野田国対委員長の辞
任、鳩山幹事長に対する常任幹事会名による厳重注意などが承認された。
C両院議員総会終了後、代表と幹事長が相次いで記者会見し、国民の皆さんに謝罪
するとともに、自民党、武部幹事長およびそのご次男に対して謝罪を表明した。
X.その後の経緯
1 3 月1 日(水)、自民党から公開質問状が届けられた。
1)3 月1 日(水)、自民党から永田議員および民主党宛に、公開質問状が届けられ、
翌2 日(木)、永田議員および鳩山幹事長名でそれぞれ回答した。
2)3 月2 日(木)、自民党から永田議員および民主党宛に、公開質問状(2)が届け
られ、3 月3 日(金)午前、永田議員と鳩山幹事長が連名で再回答した。その内容
は、以下の通りだった。
@自民党および武部幹事長、関係者に対しては、鳩山幹事長、永田議員連名による
事実認識と陳謝を表明した。
A院内における事項については、永田議員に対する懲罰動議の懲罰委員会への付託、
議事録削除、国会におけるしかるべき場での陳謝を表明した。
B私人たる武部幹事長のご次男の名誉回復については、民事の常識をもって誠実に
対応することを表明した。
3)再回答を受け、自民党は「民主党の釈明と謝罪を了とし、この問題を区切りと致
します」との幹事長談話を発表した。
2 3 月1 日(水)、「メール」問題検証チームを設置した。
1)3 月1 日(水)、正副幹事長会議において、「メール」問題検証チームの設置が確
認された。
2)3 月2 日(木)、「メール」問題検証チームの第1 回会合が開催された。
31
3 3 月3 日(金)、国対委員長辞任に伴う役員人事が承認された。
1)3 月2 日(木)夕方、臨時役員会において、両院議員総会の招集と野田国対委員
長辞任に伴う役員人事が確認された。
2)3 月3 日(金)昼、両院議員総会において、新国対委員長に渡部恒三議員を選任
することが承認された。あわせて、国対委員長代理に川端達夫議員(常任幹事会議
長兼任)、平野博文議員(総合調整局長兼任)を選任するとともに、幹事長代理に
仙谷由人議員を追加選任することが報告された。
4 3 月15 日(水)、武部幹事長のご次男の希望にもとづき、同氏に対する謝罪広告
を新聞6 紙に掲載した。
1)3 月7 日(火)、常任幹事会において、私人である武部幹事長のご次男の名誉回
復等に関し、先方から新聞6紙への謝罪広告掲載の希望があったことについて、異
論が出されたが、党としてこれに応じることで協議に入ることが承認され、具体的
なことは鳩山幹事長に一任された。
2)3 月15 日(水)、武部幹事長のご次男に対する謝罪広告を、同氏の希望にもとづ
き、全国紙5 紙および北海道新聞に掲載した。
32
第四 事実の経緯からみた問題点
1 なぜ、永田議員は、西澤氏に騙されたのか。
1)永田議員は、西澤氏の言動から同氏に対する社会的評価が高いと考え、また讃
辞を述べられたことなどから、同氏に全幅の信頼を置いていた。
2)西澤氏は、現時点でみれば、「情報源の秘匿」や「情報提供者の安全」を巧妙
に利用した、詐り話や事実の粉飾、針小棒大な説明などによって、合理性を装い、
永田議員を騙した。
3)その結果、永田議員は、西澤氏の説明を吟味することなく鵜呑みにして、「メ
ール」は本物であると思い込んだ。
2 なぜ、永田議員は、「メール」に関する調査を怠り、虚偽の質問を行ったのか。
1)永田議員は、「メール」を入手した際にそれを本物と思い込んでいたために、
当然行うべき客観的調査を全く行わなかった。
2)永田議員は、野田国対委員長などから、「情報提供者」の確認を指示されたが、
自らの思い込みにもとづき、「情報提供者」と接触する努力すら行わなかった。
3)永田議員は、野田国対委員長などから、質疑までに「確証」を入手するよう指
示されたが、当該口座番号すら得られていない状況で、2 月16 日の予算委員会
において、「口座情報を得ている」と虚偽の質問をし、参考人招致と国政調査権
発動を要求した。
3 なぜ、党は「メール」の真偽をチェックできず、永田議員の質疑を許したのか。
1)国会質疑において、議員の自主性を確保し、情報管理を徹底する必要性から、
情報の客観化をチェックする仕組みがなかった。
2)永田議員は、野田国対委員長をはじめとする国対役員に、情報を正確に伝えず、
西澤氏が信頼に足る人物であるかのごとく誇張し、「口座情報を得ている」、「『情
報提供者』から直接情報を得た」など、事実に反する情報を伝えて誤信させた。
3)野田国対委員長は、情報管理の徹底を図るため、「情報」の確認作業を永田議
員一人に委ねたが、それが他の議員やスタッフ、アドバイザーによる吟味を阻み、
永田議員の誇張や事実に反する報告を見抜けず、情報の客観化を欠く結果につな
がった。
4)野田国対委員長は、永田議員に、弁護士出身の同僚議員などから、「情報」の
客観化や質疑の表現振りについてアドバイスを受けるよう指示したが、16 日に
質疑を行うという時間的制約もあり、永田議員は、アドバイスを受けながらそれ
に的確に対応せず、「確証」を得られないまま断定口調で質問した。
33
4 なぜ、前原代表は、2 月16 日の永田議員質疑直後の代議士会で「確度の高い情
報」と発言し、その後、19 日と21 日に「楽しみにしていただきたい」と発言した
のか。
1)2 月16 日の時点で、前原代表は、野田国対委員長から「しっかりとした情報
を得ている」と報告を受けており、「情報提供者」から情報を得ているものと認
識していた。
2)19 日の時点で、前原代表には、「振込元口座がライブドア・ファイナンス名義
である」ことが報告されていたが、それが「情報提供者」に直接確認したもので
ないこと、および同人から直接提供されたものでないことは伝えられていなかっ
た。
3)21 日の時点で、前原代表は、国民の注視の的となっていた党首討論で「メー
ル」問題を取り上げざるを得ないとは考えていたが、質問項目も決定していない
にもかかわらず、記者から繰り返し質問を受けて、「明日の党首討論を聴いても
らえばわかる」という趣旨で「楽しみにしていただきたい」と述べたものだった。
4)結果として、永田議員の思い込みに端を発した、確認されていない情報が、あ
たかも真実性があるかのごとく野田国対委員長に伝えられ、情報伝達の過程で、
それが是正されないまま前原代表にも引き継がれていたことも、この発言の深因
となっていたものと考えられる。
5 なぜ、前原代表は2 月22 日の党首討論において、「口座」を取り上げたのか。
また、なぜ「確証」があると発言したのか。
1)前原代表は、同日昼の予算委員会理事会における主張を踏まえ、幹部間で確認
された方針にもとづき、「国政調査権の行使に応じれば、口座情報を明かす」と
迫った。
2)この時点においても、前原代表は、「口座」情報は「情報提供者」から提供さ
れたものと認識し、周辺疑惑に関する情報が報告されていた。
3)なお、前原代表は、党首討論後、「確証」があると発言したが、終了後のぶら
下がり取材において「言葉が間違っていた」と述べた。
6 なぜ、早期に方針転換できなかったのか。
1)2 月17 日に永田議員が再質問をしなければ、事態の拡大は防げたと考えられ
る。しかし、16 日の質疑を検証することなく、新たな情報も得られないまま、
質疑をさせた。
2)2 月20 日夜の幹部協議は、早期の方針転換に向けた大きな分岐点だったと考
えられる。この時、「メール」の信憑性の立証は困難との認識が共有されたが、「口
座」に関する正確な情報は共有されず、新たな疑惑に関する情報の調査に全力を
34
挙げるとの方針が確認された。
3)2 月22 日の党首討論において「メール」問題を取り上げないという選択肢が
あったと考えられる。しかし、党首討論は国民注視の的となっており、賛否両論
あったものの、取り上げざるを得ないと判断された。
4)「ライブドアに関わる疑惑はあるはずだ」という空気が存在し、2 月16 日にマ
スコミのぶら下がり取材を受けた武部幹事長の表情などから、例え「メール」の
信憑性が立証できなくとも、「疑惑はあるはずだ」という期待を最後まで捨てき
れなかった。
5)西澤氏が信用できない人物であると判明し、「メール」の信憑性の立証が困難
を極めるなかでも、西澤氏から、振込元「口座」がライブドア・ファイナンス名
義であると確認されたことが、「疑惑はあるはずだ」という期待を強め、あるい
は誤った認識の原因となった。
7 党の危機管理に問題はなかったのか。
1)国会質疑の重さが十分に理解されず、「疑惑」追及には大きなリスクが伴うと
の認識が不足していた。
2)リスク認識の不足によって、このような重大な事態が想定されておらず、国会
質疑における、事前のチェック体制が整備されていなかった。
3)危機管理上の対応原則・方針が整備されておらず、リスクに対応するマネージ
メント機能が働いていなかった。
4)リスクが顕在化した後も、永田議員と野田国対委員長をはじめとする国対役員、
さらに党幹部の間で、正確な情報が共有されず、方針転換が遅れる結果となった。
5)2 月23 日(木)の事態収拾に失敗し、同議員を入院させたことによって、事
態収拾が遅れた。
8 その他
1)「メール」は誰が何の目的で作成したのか。
検証チームの事情聴取において、西澤氏は、永田議員に「メール」を提供した
ことは認めたが、「自分はA氏の仲介をしただけ」と述べた。現時点では、「情報
提供者」の存在を含め、「メール」の作成者は不明であり、その調査は不可能で
ある。
2)金銭の提供はなかったのか。
金銭の提供はなく、その他についても、永田議員が懲罰委員会において説明し
た、雑誌「デュモン」の購入費42 万円の支払いおよび1 月30 日の飲食代金およ
び、そこに行くまでのタクシー代以外にはない。
35
3)「メール」を偽物と判断した理由は何か。
以下の事項を総合的に勘案し、「メール」は偽物と判断した。
@「ユードラ」のバージョンが堀江氏使用のものと異なること。
A「メール」に不自然な点が多いこと(本文中の署名の前に「@」がついている
こと、本文の書式が一行ずれていること、敬称がついていないこと、宛名が黒
塗りされていない「メール」の発信者と送信先のアドレスが黒塗りされていた
こと)。
B西澤氏の評判が非常に悪く、信用できない人物だと判明したこと。
C「情報提供者」の存在が確認できなかったこと。
D「メール」の発信者のアドレス(from)と送信先のアドレス(to)が同一との
説が出回ったこと。
36
第五 私たちの反省と教訓
1 基本的立場と反省
民主党「メール」問題検証チームは、前述の通り率直に、永田議員が「偽メール」
を取り上げて質問に至った経緯、また質問の仕方、質問後の国会対策委員会メンバー
を主とした対応、2 月22 日の前原代表の党首討論に至る事実と心理、そして同日夜
以降の民主党に対する批判・非難に対する対処(危機管理)の経過と永田議員および
執行責任者に対する「処分」と自民党ならびに同党武部幹事長とそのご次男に対する
謝罪などの事実を検証・認定し、その事実から導き出される問題点を摘示してきた。
日本の戦後憲政史上初めてと言っても過言ではない、実質上の二大政党による政権
交代による民主主義の深化・豊富化に向かいつつある状況下で、このような大失敗を
し、その対処においても国民の批判を浴び、責任野党として政権政党への成長・成熟
への国民の期待に背いた大失態を演じてしまったとの自覚をしなければならない。
私たちは、この度の失敗の原因がどこにあるのかを摘出し、その反省の中から教訓
を引き出し、その教訓を責任野党の組織のシステムとしてビルトインし、またその一
員としての行動規範として体得するべく緊張感を持って自らを鍛えなければならな
い。
2 自らの力に対する客観的認識
私たちは野党に身を置いているという自覚を持つべきである。
次の与党たらんとする情熱と気迫を堅持しつつ、いつも自らを客観化し、謙虚に自
らの力量を自覚するという態度が必要である。つまり、与党のような権力は持ててい
ないのみならず、相手方の与党は、手にしている「権力」を手放さないことにその持
てる力すべてを動員しているという冷厳な事実を忘れないことである。
そして、政治および政治行動は、時機(タイミング)と時期(タイムリミット)に
規定され、その効果が感じられることから、どうしても拙速に流れたり、準備不足の
まま行動せざるを得ないことが多々あることを肝に銘じなければならない。
3 マネージメントとリスク管理
1)議員一人ひとりの政治活動についての「内なるガイドライン」
敢えて言うまでもなく、本事件を契機として、党所属議員一人ひとりが、議員
の職責の重さ、疑惑追及のリスクなどを改めて再認識するとともに、質問技術の
向上を図るなど、議員として自己教育に努めることが必要であり、次のような基
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準を持つべきである。
@情報提供者や情報取材者に対し猜疑心を持つ必要はないが、その人たちに対す
る信頼が確かなものであるかどうかを反すうすること。
A情報そのものの合理性について、周辺事情を含め調査すること。
B間接情報(伝聞)については、自らの目と耳と体で確認すること。
C自分がその立場ならどうするかを考えてみること。
D信頼すべき同僚、ないし政治のしかるべき機関にチェックを申し出ること。
などが、調査、質問、政策づくりの活動にあたって心すべきであろう。
2)政党のチェックガイドライン
一般的にも政党は個々の議員の自主性と自己責任に委ねつつも、以下のような
基準によってリスク管理をすべきである。
@慎重性の原則
疑惑追及や重大な政治的テーマであることを察知した場合、慎重の上にも慎重
を期する。とりわけ、「一発主義」や「功名心高揚」に陥らないように指導す
る。
A配慮の原則
当事者以外の人々に迷惑が及ばないよう最大限配慮する。
B客観化の原則
少人数のプロジェクトチームを形成させ、その内部における相互議論で、情報、
資料の客観化に努める。当該チームには、弁護士経験議員などを加え、国対役
員、関係委員会理事等と正確な情報を共有する。
C責任の原則
質問や追及に誤りが判明したときには、できうる限り速やかに、誤りを認め、
しかるべき責任を明らかにする。
3)危機管理機能の強化
@リスクを顕在化させないための機構を設置し、議員プロジェクトチームの活動
についてリスクの発生を予防する。そのため、例えば、個々の議員が随時相談
もできる窓口として、外部専門家の参加を得てのコンプライアンス委員会を設
ける。
Aリスクが顕在化したときの対応について、その責任を明確にしたうえで、危機
管理対応の部局を設け、とりわけメディア対応に成熟した専門スタッフを養成
することに努める。
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4)結語
民主党は野党である。しかし、責任野党(次の国政選挙を通じて政権交代を実
現し、政権を担う政党)でなければならない。
政権争奪のための闘いは日常の闘いであるが、これ自体大きなリスクを伴うこ
とであることを改めて自覚しなければならず、政治活動の基礎たるフィールドワ
ーク・情報収集や、調査、討論、政策立案のすべてにわたって、リスクに取り囲
まれているという緊張感を持つべきである。
しかし、政権与党と闘う以上“あつものに懲りてなますを吹く”ようなリスク
を嫌う、リスクを避ける政治文化に浸ってはならないことも明らかである。そし
て、「人はときとして過ちを犯す」こともまたひとつの真実である。
私たちは、過ちを犯すこともあることを謙虚に認めながら、これをできうる限
り押さえ込み管理するシステムをつくり上げ、リスクを管理しながら、リスクを
とって、政権交代に挑戦しなければならない。
失敗は恥ずかしい、失敗によって迷惑を掛けた人々には心の底から謝罪しなが
ら、「失敗」の経験から教訓を汲み出し、この教訓を私たちの貴重な財産とする
よう努めることが「責任野党」への再生の道であることを確信する。
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2006 年3 月31 日
民主党「メール」問題検証チーム
◎座 長 玄葉光一郎 幹事長代理
◎委 員 仙谷 由人 幹事長代理
平野 博文 総合調整局長
藤村 修 前国対委員長代理
松野 頼久 筆頭副幹事長
佐藤 雄平 副幹事長
加藤 公一 広報戦略本部事務総長
細野 豪志 役員室長
蓮 舫 副幹事長
河村たかし 衆議院議員
山田 正彦 衆議院議員
末松 義規 衆議院議員
平岡 秀夫 衆議院議員
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