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政治部・天野豊文(3月27日)
麻生太郎外相の対中強硬姿勢が目立っている。小泉純一郎首相の靖国神社参拝への中国、韓国の反発に「靖国の話をするのは中韓だけ」と批判。政府が閣議決定した答弁書に反して「中国の軍事力増大は脅威」との持論も展開している。3月9日には、中国を唯一の合法政府と承認した日本の立場をよそに国会で「台湾は国」と繰り返し答弁し、修正する場面もあった。発言のたびに中国側が非難する連鎖が続き、東シナ海のガス田開発を巡る対立や、中国向け円借款の閣議決定先送りなどと相まって、日中関係は一層冷え込んだようにみえる。
発言も含め対中強硬路線を徹底した結果が本当に国益をもたらすのか、着地点は見えない。中国市場をにらむ国内経済界には「なぜ中国をことさら刺激するのか」とまゆをひそめる向きがある。首相の靖国参拝による日中対立にも「何度も参拝すべきではない」(マレーシアのマハティール前首相)、「日本か中国か。我々にそんな選択をさせないで欲しい」(シンガポールのリー・シェンロン首相)など、中韓以外から懸念が出ている。3月15日に麻生氏がガス田開発問題で「(中国の一方的)採掘が始まった場合、対抗措置を検討しなくてはならない」と国会答弁したことには、二階俊博経済産業相がテレビ番組で「本当は外相が慎重にならなくてはいけない」と苦言を呈したほどだ。
台頭する中国にどう向き合うか、必要なのは外交的戦略だ。麻生氏が対中強硬路線をひた走る理由は何なのか。親台湾派の顔が出ただけなのか、歯に衣(きぬ)着せぬ麻生節の行き過ぎなのか。もしそうなら、外相の資質をうんぬんされても仕方ないだろう。
「如何にして中共を開国方針に導くや。これが中国国民のためにも、極東開発のためにもまた世界経済のためにも最善の政策であることを示してこれを善導すべきである。地理上、歴史上中共と最も深い関係を有するわが国民としては、この政策の実行にあたり得ると思う」。麻生太郎外相の祖父、吉田茂元首相は半世紀前の1955年に「思出す侭(まま)」にこう記した。麻生氏は3月13日付の米紙ウォールストリート・ジャーナルへの「日本は民主的中国を待つ」と題した寄稿で「非常に重要なことに、中国は日本の過去の失敗から学ぶことができる」と書き、環境問題などでの日中協力の可能性を示した。日本が一時期、中国のリード役になるとの趣旨は重なり合う。
もし麻生氏の真意がここにあるとしても、うまく伝わらなければ意味がない。麻生氏は96年の訪中の際、中国の要人らを前に「隣国の政治家として中国の軍拡に危機感を持たざるを得ない」と発言。中国側に「今回ほど率直な意見を聞いたのは初めて」と評価されたエピソードを当時のエッセーで紹介している。そこに「妙に解(わか)った風な口をきいて、察しのよいそぶりなどしないことです。自分の考えを解り易く率直に粘り強く且つ誠実に語り合うことが大事」と書いた。しかし面と向かっての直言と間接的に伝えられる他者からの批判は、受け取り方に大きな違いが出るのはよく聞く話であろう。
「思出す侭」には「外交的センスとは無用に敵を作らぬ心遣いのことであろう」との一節もある。小学生だった麻生氏が元首相に手を引かれて靖国神社を初めて参拝したのがサンフランシスコ講和条約が発効した52年4月28日。麻生氏が「独立記念日」と呼ぶその日に、どういう判断を下し、どのように説明するのか。注目しているのは中国ばかりではない。
http://www.nikkei.co.jp/seiji/column.html
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