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(回答先: 「本当の豊かさとは自国で食料を賄えること」 一言だけ添えますが 投稿者 yu-min-yu 日時 2006 年 3 月 27 日 00:44:03)
yu-min-yuさん他読者の皆様へ
事業には、保護してでも行われるべきものと、事業の存在意義そのものが問われるべきものとがあると思います。
農業は前者です。
後者の例は、原子力発電所、在日米軍基地、地方空港の建設などです。こうしたものの建設にはしばしばその経済効果が期待され、地元住民にも雇用創出・利便性などへの期待からその建設を支持する者がいるわけですが、経済効果などというものは、耐震偽装マンションを作ったり壊したりしても得られるわけで
(GDPはこうした「経済効果」も算入した概念:下記URL参:
真の豊かさを測る指標、GPI(GDPに代わる概念として)
http://www.asyura2.com/0510/dispute22/msg/742.html
訂正/GPIの説明
http://www.asyura2.com/0510/dispute22/msg/743.html)
、経済効果や在日米軍基地のように「お国の戦略のため」といった理由しか挙げられないような事業はその存在意義を疑ってかかる方がよいと思います。
本質を捉えた議論が必要だということです。
日本政府は、農林水産省も含め、農産物の輸出に力を入れて、日本の農業に競争力をつけよう、などと言っていますが、これは、農業を経済主体としか見ていないという意味で非常に危険な風潮だと私は思っています。
農業は、命を扱い、命を育む行為です。人間が生きる糧とする食べ物を作り出すという意味だけでなく、虫、鳥、カエルや小魚などの生息環境にもなるという意味でも、命を育むものです。
(参考:ヤマアカガエルは農家の行動を知っている
http://www.ruralnet.or.jp/syokunou/200507/07_tanbo.html
国内の淡水魚とカエルの種のうち、4割が、水田の周辺に生息(日本農業新聞)
http://www.asyura2.com/0510/nature01/msg/392.html)
また、特に日本の稲作の場合には、国土保全機能、洪水防止機能、水源涵養機能、土壌流出防止機能、土砂崩壊防止機能、気候緩和機能といった、いわゆる「多面的機能」もあります。
(参考:田んぼの多面的機能(宮城県 もの知り館 他)
http://www.asyura2.com/0510/nature01/msg/393.html)
こういった特質をもつ農業を他産業と同列に論じたり、農業保護を叫ぶ者を「既得権を守ろうとしているだけだ」というふうに見たりするのは、本質を全く見誤った議論と言わざるを得ないと思います。
また、農産物の貿易ということも、工業製品の貿易と同じように考えることはできません。
農産物を貿易することは、土壌の栄養分や水を貿易することと同じ意味を持つからです。水については、バーチャル・ウォーター(仮想水)という概念があります。
FoE Japanが「『バーチャル・ウォーター』って何?」と題して説明しているものを紹介します:
日本は貿易立国として、工業製品を輸出する代わりに1次産品―農産物(60%)と林産物(80%)を輸入している。野菜や樹木はその生長過程で大量の水を消費する。(殆どは空中に蒸発散してしまうが)日本の消費者に届いた時に、我々は成長過程で必要だった水の存在を忘れている。淡水の少ない国では、飲料水と農業用水と工業用水の間で水の争奪が行われている。輸出用の野菜や木材に費やされた水は、輸入国に商品と共に輸出されていると見なすことが出来る。これが「バーチャル・ウォーター」である。
世界の人口が増えつづける一方で、淡水資源は漸減の方向で、食料不足が顕在化する前に、飲料水の不足が深刻化している。中央アジアのアムダリヤ流域・5カ国間の水の配分争いは水の現物を巡ってのことだが、水の価値が商品化すると共に、バーチャル・ウォーターにも対価を払うべきとの議論が巻き起こっている。
日本は中国から大量の野菜や木材を輸入している。一方中国の黄河流域は砂漠化がどんどん進行している。一時的には安い、中国製品を買っても、地球環境劣化に対する補償は何時の日か、日本人に被ってくるかも知れない。現に砂漠緑化のODAが過去5年間で数百億円、民間ベースでの緑化活動に日本から投じられている資金・人員も、かなりの量に達している。これらは中国から日本に来る「バーチャル・ウォーター」の補償だと言えないだろうか?
水不足の深刻な国・地域から一次産品を輸入すべきでないと言うWTOルールを策定すべきと、私は考える。一次産品輸入国は、その輸出国のバーチャル・ウォーターを、現状では搾取していると考えられるからだ。
http://www.foejapan.org/trade/doc/040917.html
また、これは農産物貿易に限らないことですが、貿易には、輸送の際、環境への負荷が伴います。食料品の貿易については特に、フードマイレージという概念があります。
フードマイレージ=輸入相手国別の食料輸入量×輸出国から日本までの輸送距離(参考:
http://www.e-shokuiku.com/jyukyu/13_3.html)であり、これが大きいほど、CO2排出など環境への負荷が大きいということになります。
また、農業の多面的機能は輸入できません。
このように、農業は特異な産業です。
輸入できるのだから食料自給率が低くたって構わない、だから農業を無理して保護する必要などない、といった議論は、農業を経済的側面のみから捉え、他国・他国の人々、環境を全く考慮しないものであり、農業の本質も捉えられていなければ、他を思いやるという、人間として当然の感覚をも失った議論だと思います。
もちろん、こういった、農業の特殊な性質を根拠に農業保護を主張していくためには農業が環境破壊をしていてはいけないわけで、地下水の過剰汲み上げ、土壌流出(この二つは特にアメリカが問題ですね)、化学肥料の多投・連作による地力の低下、農薬等による環境汚染、といった問題を解決していくことも非常に重要であり、農業保護を求める農民たちは率先して環境保全型・循環型農業を行っていくべきでしょう。しかし、環境保全型・循環型農業は、手間がかかり、したがってコストもかかります。政府がバックアップする必要があるでしょう。農業保護を訴える農民には小規模農民が多いことから、余計に政府の支援が必要です。
農業の存在そのものの維持と、あるべき農業の姿への誘導と支援が、政府には求められているということだと思います。
WTOの交渉で決まる関税の引き下げ幅によっては日本の農業は壊滅的打撃を受けます。
(参考:日本の農業は今地獄の一歩手前にいるようです
http://www.asyura2.com/0510/senkyo16/msg/257.html)
WTOは、自由貿易体制の確立が至上命題の組織ですから、私が上で述べたような農業の特異性はほとんど考慮されません。
そのような組織で、世界の農業のあり方が決められようとしているのです。
これは、農業に携わる者だけの問題ではないと思います。
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