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住民投票に見る岩国と沖縄=上野央絵(西部報道部)―「毎日新聞」記者の目
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投稿者 天木ファン 日時 2006 年 3 月 22 日 10:16:43: 2nLReFHhGZ7P6
 

住民投票に見る岩国と沖縄=上野央絵(西部報道部)

 ◇国、正面から必要性説明を−−不信の火種ばらまくな

 米海兵隊岩国基地(山口県岩国市)への空母艦載機部隊移転受け入れへの「反対」が、約51%と有資格者の半数を超えた岩国市の住民投票(3月12日)結果を見て「民意は3度裏切られるのだろうか」と感じた。私は昨年10月の在日米軍再編中間報告以来、再編の舞台である沖縄県名護市と岩国市を取材してきた。その上で思うのは、国が「日米安保は新たな時代に入った」として米軍再編を進めようとするのなら、正々堂々と国民にその必要性を語りかけるべきだということだ。

 過去2度の「民意」とは96年にあった「基地整理・縮小への賛否」を問う沖縄県民投票と、翌年の「米軍普天間飛行場代替ヘリ基地建設の是非」を問う同県名護市民投票だ。いずれも民意は「基地はいらない」と出た。しかし県民投票直後に大田昌秀知事(当時)は米軍用地収用手続き(代理署名)拒否を撤回。名護の比嘉鉄也市長(同)も投票直後に建設受け入れを表明した。どちらも「民意に反する」と非難が起きた。

 3度目の“裏切り”を予感したのは、岩国市の井原勝介市長(当時)の4度の記者会見の際に抱いた、釈然としない思いからだ。「市民の意思で岩国の未来を選択できる貴重な機会」と言いつつ「国防政策は国の責任」とかわす。「任期中に交渉できるか」と問われても「まず地元の声を国に届ける」の一点張りだった。

 しかも井原氏は周辺7町村との合併(20日)に伴い、19日に市長を失職した。艦載機部隊移転を受け入れるかどうかの判断は、新市の市長選(4月23日)の争点にはなっても、国との交渉当事者はそれまで不在となる。国は3月末までに、米軍再編最終報告を決める構えだ。となると、結局「反対」の民意は宙に浮くことになる。一体、何のための住民投票だったのか疑問だ。

 ただ、普天間移設を象徴とする基地問題が進まない状況をみれば、2度の住民投票に一定の歯止め効果があることも否定できない。

 その意味では井原氏に共感できる部分もある。それは、受け入れ容認を前提に振興策を国に要求する地元経済界などへの反発だ。元々移転反対の井原氏が、住民投票を発議した動機も議会が振興策を理由に容認に動き始めたからだ。投票率が50%を超えて成立すれば「反対」が過半数となるのは確実な情勢だった。終盤に「条件闘争」を口にして容認と受け取れるような態度を示したのも、投票率を上げるための戦術だった。

 岩国市や議会、周辺7町村が「受け入れ反対」で足並みをそろえていた昨年6月、岩国商工会議所(笹川徳光会頭、当時)が、滑走路増設などを条件に米軍厚木基地機能の誘致を決議した。商議所のある有力者は「住民投票になったのも、元々は会頭が走り過ぎたからだ」と声をひそめた。

 笹川氏は昨年1月の年頭所感で「(艦載機部隊を)誘致すれば岩国が受けるメリットは歴然」と沖縄を念頭に置いた「バラ色の夢」を描いた。だが、名護市など沖縄本島北部の市町村が普天間代替施設受け入れと引き換えに得た「北部振興策」の評価は定まらない。ある首長は「サミット(先進国首脳会議)などいろいろあったが、どれも線香花火に終わった」と疑問を口にする。

 米軍基地は、雇用創出の意味で経済振興につながる存在だが、同時に自発的な産業育成の芽を摘む足かせともなり得る。岩国基地周辺の工場群は、高度経済成長期に米軍から煙突などの高さ制限を課せられ、主力工場が撤退した。沖縄と違って軍用地料が入らないこともあり、米軍基地の存在による「逸失利益」感は余計に強い。

 今回の投票結果を、国が「地域エゴだ」と切って捨てるのはたやすい。しかし「51%の民意」の重さに思いをはせてみてほしい。単に「自分の住む所で騒音が増える」というだけではなく「日米安保の質的変化」といわれる米軍再編の渦中に巻き込まれたことに、漠然とした不安を抱いている人は少なくないはずだ。

 艦載機部隊受け入れ派の60代の男性は「基地の存在に疑問を抱いたことのない市民が目覚めてしまった」と話し、地元への今後の影響を懸念した。

 国が、米軍再編が本当に日本の将来のためになるという自信があるのなら「基地賛成か反対かといえば、反対でしょうね」(小泉純一郎首相)の一言で済ませてはいけない。住民が振興策を期待するからといって、それにつけいって利用することなく、誠意を持って正面から必要性を説いてほしい。そうしなければ、日米安保に対する不信の火種は、じわじわと全国に広がっていくだろう。

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 ご意見、ご感想は〒100−8051 毎日新聞「記者の目」係へ。メールアドレスkishanome@mbx.mainichi.co.jp

毎日新聞 2006年3月22日 東京朝刊
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