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□【検証 小泉改革】格差社会、気分に影 機会平等、競争…光は? [産経新聞]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060321-00000000-san-pol
【検証 小泉改革】格差社会、気分に影 機会平等、競争…光は?
平成十八年度予算案が二十七日にも成立する見通しの通常国会は「堀江メール」騒動で与野党の攻守が逆転したが、論戦のカギは間違いなく「格差社会」だった。ジニ係数や生活保護世帯増加、大阪のタクシー過当競争、地域、世代間格差、教育格差が小泉改革の「影」として取り上げられた。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)韓国戦のように二度負けても三度目に勝てばいいと小泉純一郎首相。格差は是か非か−を前半国会から検証した。(船津寛)
「一度、二度負け組になっても、あきらめちゃいけないね。こういうことがあるんだね」
WBCで日本の奇跡的な準決勝進出が失点率で決まった十七日夜、首相は感慨深げに語った。予選二次リーグで一勝二敗、あるいは宿敵・韓国に二連敗したことを「二度の負け組」にたとえたのだろう。「あきらめちゃいけない」と力を込めた首相の言葉通り、日本は準決勝で韓国に完勝、決勝にコマを進めた。
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六日の参院予算委員会。「構造改革で格差が広がるというのは論理矛盾だ。規制緩和その他をやれば、結果の平等でなく機会の平等が保障される。垣根が低くなる」と自民党の片山虎之助参院幹事長が訴えた。
理論上は「構造改革」路線によって公平に競争できるという機会の平等が実現され、既存の格差はなくなる。与党幹部らしく首相の政策判断は間違っていないと主張したが、片山氏はこうもつけ加えた。
「問題は数値じゃない。何となく、実感、気分ですね」
「公平な競争」がもたらす結果の格差が国民の「不安」「不満」感を増幅させる。フジテレビ系の報道番組「報道2001」の世論調査(二月九日調査)では、75・2%が「格差拡大を感じる」と答えた。
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こうした世論をバックに、野党第一党の民主党は「小泉改革には光と影の両面がある」との批判を論戦の中心に据えようとした。
「長期、短期合わせて一千兆円におよぶ財政赤字は、自民党政権の失政の結果であり、その四分の一は、小泉首相がつくった。そのツケを現役世代の頑張っている人たちに回し、所得格差は拡大する、地域間格差は拡大する、少子化に歯止めがかからない、そして教育における機会の平等まで奪われている」
前原誠司代表は五年間の「小泉政治」について、「所得格差の拡大」を証明するデータとして「ジニ係数」という聞きなれない用語を持ち出して総括した。前原氏は「小泉首相の在任中に0・47から0・50に拡大した」と指摘した。
これに対し、小泉首相は「高齢者世帯の増加、世帯人員の減少といった世帯構造の変化を考慮すると所得格差の拡大はない」と語気を強めて反論した。
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□逆転可能な社会課題に
■タクシー戦争、年収300万/希望奪う教育の不平等
小泉改革によって、「格差」は果たして拡大したのか。
≪規制緩和の実験場≫
前半国会でたびたびクローズアップされたのが大阪のタクシー戦争。運転手の過酷な勤務実態が報告された。
民主党の細川律夫氏は二月二十八日の衆院予算委員会で、NHK番組で放映されたナレーションを紹介した。
「大阪は規制緩和の実験場と呼ばれるようになっている。利用客は減っているのに、大阪の街を走るタクシーの数は増えるばかりだ」
平成十四年の道路運送法改正で、タクシーの需給調整規制が廃止された。これにより、昨年一月末までに全国のタクシー台数は約一万四千台も増えた。特に、大阪府内ではタクシー会社によって四十種以上の料金体系があるといわれるほどの過当競争に陥った。
しかし、利用者数はほぼ横ばい。当然、タクシー乗務員の収入は減少する。厚生労働省のデータでは、同じ時期の乗務員の全国平均年収は約五百五十五万円から約五百四十三万円に減少。超激戦の大阪府内では十六年の平均年収は三百八万円まで落ち込んだ。ちなみにこの年の全産業平均(約五百二十八万円)の58%に過ぎない。
小泉首相は規制緩和によって、福祉タクシーや観光タクシーなど利用者が喜ぶサービスが出てきたと反論。「今までの規制が一番楽だったという人もいるが、それではお客さん向けのサービスは進展しない。努力する会社とそうでない会社の間にサービスの展開が違ってきて当たり前だという点もあるので、今回の規制改革がタクシー業界を一方的に過酷な状況にしていると断定するのはまだ早い」と強気だった。
しかし、衆院大阪16区選出の北側一雄国土交通相は「法定の最低賃金(地域別で時給六百八−七百十四円)を割るような実態も出てきている」との懸念を表明。三月六日の参院予算委では「この規制緩和には、プラスの面と問題点、課題もあると思っている」と疑問符をつけた。
≪さまざまな格差≫
連合は先月初め、「小泉首相の『格差社会』認識を問う」という題の冊子をまとめた。それによると、貯蓄ゼロ世帯が平成十七年には23・8%と昭和三十八年の調査開始以来、最悪を記録した。これに対し、貯蓄保有世帯の平均額は平成十六年で千五百四十四万円と、同九年の千二百八十七万円から逆に20%も増加していた。資産格差の拡大を如実に示すデータだ。
「格差」は所得や資産面からだけ論じられたわけではない。自民党内からは「地方切り捨て」という小泉首相就任以来、党内にたまっていた不満が噴出した。
町村信孝前外相は二月二十八日の衆院予算委で「それぞれの地域により差があるのは一定程度はやむを得ない」としながらも、北海道の公共事業費の減少が全国平均を上回るペースで進んでいることに不満を示した。
町村氏によると、全国の公共事業費のピークは九年度の約九兆円。この年、北海道開発事業費として九千九百億円が計上されている。しかし、これまでに全国で14・6%減少したのに対し、北海道は19・1%も減少。町村氏は「もうちょっと景況感を反映した思い切った地域配分をやっていただいてもいいのではないか」と訴えた。
これに対して、北側国交相は「限られた予算だ。公共事業全体が抑制されていくなかで、その傾向はこれからも多分変わらない。そういう中で、いかに優先順位をつけ、重点化をしてやっていくかが大事だ」とはねつけた。
世代間格差も問題になった。民主党の内藤正光氏は、国民年金の未納・未加入率の上昇によって、「現在の現役は、まじめな支払い者が不払い者のツケ回しを負わされている」(三月九日、参院予算委)と主張した。
≪格差の再生産≫
小泉首相は「格差が出るのは別に悪いことだとは思っていない」(二月一日、衆院予算委)と主張する。「そのままの状態が固定化されてはいけない」(二月二十八日、衆院予算委)とも訴えた。WBCの王ジャパンのように二度韓国に負けても、三度目に勝てばいい。そんな逆転可能な社会を目指すという。
だが、前原氏は現在の格差が将来の格差につながっている現状がすでに生まれていると指摘した。いわく、「格差の再生産、希望の格差」(二月七日、衆院予算委)が現れている。
前原氏が「一番ショッキングな図」として取り出したのが、就学援助率と学力の相関関係。東京都教育委員会の資料に基づき、東京二十三区ごとの小学五年の国語の平均点と中学二年の英語の平均点を調べたところ、援助率の高い区は、平均点が低いという顕著な相関関係が示された。前原氏は「学力が伴わない、大学にいけない、正規雇用されないという格差の再生産となっている」。
小泉首相は「学校の成績がよくないからと言って悲観することはない」と反論したが、前原氏は「不謹慎な発言だ。所得が低いことによって、(教育の)機会平等が与えられていない」と声を荒らげた。
生活保護の受給世帯は小泉首相が就任した十三年には七十八万世帯だったのが、昨年は百四万世帯と急増した。経済協力開発機構(OECD)が昨年二月にまとめたリポートでは、日本の貧困率(中位者の等価可処分所得の半分以下しかない者の人口比)は15・3%で、加盟二十四カ国中五位という統計もある。
≪政治の役割≫
小泉首相によると、構造改革路線の要点は「それぞれ地域なり企業なり個人なりの能力を生かすような環境を整えていくこと」だ。それが「政治で一番大事なことだと思っている」と、首相は自らに言い聞かせるように国会で説明した。
小泉首相の任期はあと半年。国際競争という荒波の中、構造改革は後戻りできない。その結果、生まれる「格差」とどう向き合うか。「ポスト小泉」に求められる重い課題になりそうだ。
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【用語解説】ジニ係数
イタリア人統計学者のジニが発明した所得分配の不平等さを測る指標。0から1で表し、全く格差がない場合は0、1人がすべての所得を占有していると1になる。0・5で上位4分の1の人がすべての所得の4分の3を所有している。先進国平均は、税や社会保障で再分配された再分配所得で0・3前後とされる。グラフに見るように、当初所得(厚労省調べ)と、再分配所得(同)、全国消費実態調査(総務省調べ)、家計調査(同)を当てはめた場合では、それぞれはじき出される数値が異なってしまう。
(産経新聞) - 3月21日3時27分更新
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