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ODA主務官庁を死守した外務省の哀れ
今や仕事はこれだけ
2月28日、「海外経済協力に関する検討会」(座長・原田明夫前検事総長)が最終報告を安倍官房長官に提出した。その報告によれば、小泉行政改革の一環である途上国援助(ODA)の実施機関の一元化について、形の上では外務省が主務官庁の地位を勝ち取ったように見える。
すなわち、わが国のODAについては、技術協力と無償援助は外務大臣を主務大臣とする国際協力機構(JICA)が、そして有償資金協力(円借款)は財務大臣を主務大臣とする国際協力銀行(JBIC)がこれまで担当してきた。それを小泉首相は「政府系金融機関の統廃合」という掛け声の下に一本化しろと命じたのだ。
外務省はODAを手放しては一大事と、省を挙げて必死の工作を重ねた。OBまで駆り出してODAは外交の最強の手段であると訴えた。その甲斐あってODAの実施機関はなんとか国際協力機構に統合されそうだという報道がさかんに報じられるようになった。
しかし、私がここで問題にしたいのはそのような小泉改革の欺瞞(ぎまん)ではない。なぜそれほどまでに外務省はODAの所管にこだわったかということである。
かつて外務省は「外交一元化」の名の下に、外国政府との交渉にかかわる業務である限り、すべてこれを一元的に取り仕切っていた時代があった。しかし国際社会が多様化、専門化するに従って外務省の能力では対応できなくなっていった。それどころか対米追従外交に終始する外務省には任せておけないと、関係省庁が次々と外交権を侵食していった。揚げ句の果てに、外交の要である日米軍事同盟の主導権までも防衛庁に奪われるようになった。この上ODAまでも手放すようなことになると外務省に残る仕事は旅券発行と儀典だけになる。
今回の報告によって外務省はひとまず安堵したことだろう。しかし喜ぶのは早い。死守したはずのODAの実施についても、外務省の無能ぶりへの批判が後を絶たないのだ。外務省の正念場はむしろこれからである。
▼天木直人(あまき・なおと) 元レバノン大使。1947年生まれ、京大法学部中退で外務省入省。イラク戦争に反対する公電を送り、小泉首相の対米追従外交を批判して「勇退」を迫られる。著書に「さらば外務省!」「ウラ読みニッポン」(講談社)など。
【天木直人 ニッポン外交の迷走】2006年3月6日 掲載
http://gendai.net/?m=view&g=syakai&c=020&no=25070
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