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[許すな組織暴力]第1部 闇勢力の増殖(1)狙われた証券マン(連載)
2006. 03. 06 東京朝刊 社会39頁
◆「あんたの裁量で新規株出せ」 金融に暴力団触手
大阪市内の小さな不動産会社の応接室。「社長」を名乗るスーツ姿の男は、企業名がずらりと並んだリストを差し出した。
「この40銘柄を、1000株ずつ買いたい」
男の申し出に、大手証券会社の支店に勤める営業課長(35)は不安を感じた。
初めての取引にしては規模が大きく、資金の出所も分からない。ただ、顧客は一人でも多く欲しかった。
課長は翌日、男の口座を開設し、総額1000万円の取引を成立させた。
数日後、課長は、本社の審査部門からの連絡を聞いて凍りついた。
男の正体――それは指定暴力団の現役幹部だった。
□ ■
本社は弁護士を通じ、男に取引の停止を通知した。
暴力団の株取引を禁じる法律はないが、日本証券業協会は1991年、損失補てん問題などをきっかけに、暴力団との取引の自粛を決議している。これに基づく措置だった。
その直後、課長個人に対する脅迫が始まった。
「あんた個人の裁量で新規公開株を出せ」――男は電話で、公開を間近に控えた企業の株を譲るよう要求してきた。新規公開株は、公開直後に値上がりが見込める。「かわいい子供が2人もいるな」。家族関係も把握されていた。
課長は上司に事情を話して地方に異動した。
一家4人で引っ越した翌日の夜、インターホンから男の声が響いた。
「港に沈めてやろうか」
課長は悩んだ末、無断で新規公開株を男に売り渡したが、すぐに発覚して退職に追い込まれた。
それから2年半余り。
今、新たな職に就いた課長は「攻撃の矛先が、まさか私個人に向かってくるとは思ってもみなかった」と振り返る。
■ □
バブル崩壊後、金融界に対する闇勢力の不当要求が大きく変化している。
金融不況当時の5、6年前、標的になったのは「不良債権の回収」だった。大手都銀の行員(39)は2000年春、首都圏の支店で、ある不動産会社に融資した地上げ資金4億円の回収を担当した。この会社は指定暴力団とつながりが深く、他行との合併案が浮上する中、回収を急ぐ必要があった。
だが、相手は応じない。自宅に脅迫電話が続き、ホテルに軟禁された。回収は断念せざるを得なかった。
「この業界は簡単に暴力団との関係を切れない。同じ話はいくらでもあった」
行員はそう打ち明けた。
□ ■
最近は、こうした手口がさらに進化している。
一昨年11月、不正行為をしたとして準大手証券を懲戒解雇された男性(33)の場合、きっかけは携帯電話の「アダルトサイト」などの料金滞納だった。
「滞納料金が利子で雪だるま式に膨らんだ」と暴力団関係者に脅され、男性は、顧客から預かった計1000万円をそのまま渡してしまった。
利用者が急増しているインターネット上での株取引を巡っても、ネット専業証券の幹部は「暴力団とは無関係を装って開設された口座のトラブルが絶えない」と訴える。
そして今、警察庁も、危機感を募らせている。
「不審な男が口座開設に来た」。昨秋、複数の証券会社から、同庁に情報提供が相次いだ。各社とも最終的に開設を断っていたが、調べると、男は、名古屋に拠点を置く指定暴力団山口組弘道会の構成員だった。
昨夏、前会長が山口組6代目の組長に就任した弘道会の資金源は、主に地元の公共事業を巡る利権とされ、銀行や証券とのつながりは、これまでほとんど報告されていない。
同庁幹部は指摘する。
「山口組の直系組織が、金融界に進出しようという意思表示なのではないか」
◇
1992年の暴力団対策法施行後も暴力団は勢力を維持し、エセ右翼、エセ同和による脅迫まがいの行為も絶えない。なぜ、こんな無法が放置されるのか。第1部は、増殖する「組織暴力」の実態と背景を探る。
写真=大手証券会社の営業課長は、この雑居ビルの一室にある不動産会社で株取引を持ちかけられた(大阪市で)
【読売新聞】 http://www.yomiuri.co.jp/index.htm
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