★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK20 > 163.html
 ★阿修羅♪
序文 本書の目的と構成  木村 敬    【新党全記録】
http://www.asyura2.com/0601/senkyo20/msg/163.html
投稿者 愚民党 日時 2006 年 3 月 05 日 16:15:01: ogcGl0q1DMbpk
 

TOP 【「新党全記録」目次】 http://politics.j.u-tokyo.ac.jp/lab/edu/seminar/study/1st-semi/mokuji.htm#jobun



本書の目的と構成

  木村 敬

http://politics.j.u-tokyo.ac.jp/lab/edu/seminar/study/1st-semi/essay/jobun.htm


1. 本書の重要性

 本書は、92年5月に細川護煕氏が結成した日本新党に始まり、98年4月27日に結成された「新」民主党に至るまで、数多く結成され、そして消えていった「新党」の足跡を、後世に伝えるため、ここにまとめて記録するものである。

 これらの時期に結成された「新党」は、その先駆けである細川が93年7月の総選挙後に首相に就任し、38年間続いた自民党一党支配体制の崩壊をもたらしたことに象徴されるように、新しい政治・新しい時代の到来を国民に感じさせる画期的な役割を果たした。しかしながらその一方で、自民党に対抗する勢力として細川政権を支えた主な勢力が大同団結して結成された新進党は、結党2年で内部の路線対立から解党し、国民の期待に応えられなかった。細川政権崩壊後の政治状況において、新党は雨後のたけのこの如く生まれながらも離合集散をくり返し、これら「新党」に対する国民の感情は、もはや冷め切ったものとなってしまった。それは現在、誕生されつつある「新」民主党に対する国民の期待感にもまた体現することができよう。

 このように、これらの「新党」が浮かんでは消えていった政治過程は、閉塞と腐敗の自民党一党支配に対する国民の怒りと新しい政治への熱い期待、そしてその破綻の結果訪れた政治への落胆と不信をそのままにあらわしている。

 短期間に浮かんでは消えていった「新党」たち。しかし、政党としては余りにも短いその生涯においても、このように彼らがあらわしているものは、この世紀末、今この時代を生きる私たちの政治に対する思いそのものなのではないだろうか。
また、「新党」の誕生は、我が国における連立政権時代の幕開けでもあった。細川連立政権以来のわずか4年余りで、以下のように、私たちは様々な形態の「政権」の中で生きてきた。頻繁に政権が変わる自体に対する批判はあるとしても、わずか4年の間に、イタリアの政治学者・サルトーリが示したところの連合政権の形態が全て出揃った点は、政党論や政権論についての巨大な実験を我が国がしているという興味深い論点を提示している。

 細川政権(93.8−94.4)    最小勝利連合政権
 羽田政権(94.4−94.6)    過小規模連合政権
 村山政権(94.6−96.1)    過大規模連合政権
 第一次橋本政権(96.1−96.11)過大規模連合政権
 第二次橋本政権(96.11−    )単独少数政党政権

 こうした連立政権を可能にしたのが、この時代に数多く結成された「新党」なのである。よって、「新党」の研究は我々に新しい政権論をもたらすのではないかと考える。

 加えて、この時代の「新党」は、政党組織面からしても、日本における新しい政党論を示し得るのではなかろうか。戦後すぐの混乱期を除けば、日本における政党は、「分裂」から誕生した民社党や新自由クラブ、「合同」から誕生した自由民主党や日本社会党など、ごく少数に限られるのみならず、党の生成過程において、時代に応じたある種の傾向が見られる。ところが、93年前後に誕生した「新党」は、ほぼ近接した同時期において、「ゼロ」から誕生した「新党」、与野党の「分裂」から誕生した「新党」、野党の「合同」から誕生した「新党」、と、あらゆる党生成パターンが出尽くした。今回の「新党」の研究はこれまで学会での議論が余りなされなかった党生成過程の比較研究に関して、興味深い対象となるだろう。

 また、テレビメディアやインターネットの普及といった情報化社会の到来を踏まえて、広報等における政党のあり方も大きく変容している。この時代の「新党」は、こうした新しい時代の世論に対応するために様々な試みをしてきた。そうした「新党」の側面もまた、私たちの新しい政党論に資するのではないかと考える。
こうした重要性に鑑み、本書において、私たちは「新党」に関する資料を収集・整理し、新党についての研究を行おうと志したのである。


2. 本書の目的

 私たちは、今回、92年5月結党の日本新党に始まり、97年末に解党した新進党まで、現代日本政治において極めて大きな役割を果たした5つの「新党」を選び、綱領・政策・理念から当時の政治状況・議員構成・党機構、はたまた地方議員や党のロゴマークに至るまで、その政党の生まれてから死ぬまでに残した足跡を、どんな些細なものであっても収集・整理し、失われゆくその貴重な資料を、後世のために残すため、本書を編集・公刊することにした。

 本書の目的は、一つには我々の研究の成果報告であり、二つには新党についての資料的価値である。

 そもそも、前述のような現代政治における新党研究の重要性に比べ、「新党」についての研究は未だ発展途上にあると言っていい。93年以降の政治過程については、93年総選挙や95年参院選を通じた投票行動の研究や、はたまた、「自民」「非自民」の観点から論じられた政治状況分析が殆どを占めていると言っても過言ではない。私たちは、研究対象を「新党」それ自体とし、後述する複数の視点から多元的に新党を分析・把握する必要性を感じ、今回はそのような研究をすることになった。
また、「新党」は、このように多くの重要性を持つものの、政党としては余りにも短期間に浮かんでは消えていったため、統一した資料の整理が為されていないだけでなく、資料の散逸それ自体が著しい。本書のもう一つの目的は、このように、散逸しつつある各党の資料を収集し、ひとところに整理保存して今後の研究の一助とならんとするものである。


3.本書の展開

 本書の目的が、前述のように、散逸しつつある各党の資料を収集し、後世の研究等の一助となるべく、整理保存することである以上、各党の資料は些細なものに至るまでほぼそのままに、手を加えず掲載することに重きを置いている。
しかしながら、それらの資料・データをただ総花的に羅列するだけでは、資料集として、または、「新党」の全体像を映し出す意味において、全く用を為し得ない。

 よって、本書では以下の視点により「新党」を4つの切り口から探求・整理し、本書を構成することとする。

                   政治状況

             政党組織       政府の中の政党
              党機構          基本政策
            役員・党活動       議会内ポスト


                 有権者の中の政党
                    支持率
                   選挙結果


出所:吉野孝「アメリカ政党研究の新動向」『選挙研究』1997年第12号P.20掲載図に修正を加えた。

 第1部 「政治状況」 政党単位で、全体を包含するその党にまつわる政治状況について時系列的に研究する。

 第2部 「政府の中の政党」 連立政権時代の到来を受け、各党が政府(政権)との関係で何を志向し、何をなしたかを研究する。これまで日本の政党論として余り関心が持たれなかった部分。

 第3部 「政党組織」 各党の特徴をその組織形態から研究する。所属議員の変遷についてもここで扱う。党組織では、政党助成金の関連から、党の財政状況についても重点的に調査している。

 第4部 「有権者の中の政党」 新党が国民の中で受け入れられた過程と、その広がりについて研究する。支持率のみならず、選挙区での支持基盤と地方選挙への対応にも焦点を当て、多角的に調査したデータを加える。

 本資料集は全3巻で構成されている。これらは本書の基本的視点として、政党分析の視点に設定した、前述の「政治状況」「政府の中の政党」「政党組織」「有権者の中の政党」の4点を軸に分類整理している。

各巻の大まかな内容は、以下のようになっている。
第1巻 「政治状況」と「政府の中の政党」(第1−2部)
第2巻 「政党組織」(第3部)
第3巻 「有権者の中の政党」と「証言編」「論文編」「新進解体後の各政党・会派」(第4−7部)


4. 本書の範囲とデータの収集

 本書では、「日本新党」「新党さきがけ」「新生党」「新進党」「太陽党」の5党について扱った。

本書は、この5党に関する資料・データの収集・整理のみならず、新進党解党・分裂後に登場した各党についても、出来る限りの資料を掲載した。

 よって、本書では、資料的価値の大小、及び、考察・調査対象としての適当さから、この5党以外の短期間で解党した小規模政党については割愛することにした。

 また、民主党については、現在(98年4月8日)、民政党・新党友愛・民主改革連合3党とともに、4月末の「新」民主党への移行が決定されているが、党名が民主党となり、事実上の3党の民主党への合流となることや、これまでの新党と異なり、今後相当期間の党の存続が予想される(?)ことから、調査・研究の対象としては適当ではないと判断し、割愛することにした。

 本書所収の資料は、主に出版物として刊行されているものについては、刊行物の原著にあたることが容易であることから、本書の限られたスペースを有効に利用し、内容のあるものとするために、割愛した。本書は、前述のように散逸する恐れの多い非刊行物や内部資料にスポットをあてるのみならず、既刊行物や新聞資料等の一般に頒布されている資料・情報についても、後世の「新党」研究等に資するように、各党の全体像が看取りやすいように、党別・政策別の観点から編集・整理した。

 資料・情報の収集については、党別に当時の各党関係者にあたることから始めた。解党済の党を中心に、既にこれらの「新党」に関する資料には散逸してしまったものも多く、収集は困難を極めた。数多くの人にあたることによって、各党で比較対照できるまでに各種資料を揃えるには、直接拝借出来た原典資料のみならず、インターネットホームページの掲載物や各種新聞の記事をも参照するようにしなければならなかった。これらの引用資料については各箇所にその旨、出典を原則記している。


5.謝辞

 本書は、97年度蒲島郁夫ゼミの成果報告書としての性格を有している。

 「政権交代と政党再編成」をタイトルに始めたゼミには、多くの著名な方々にゲストとして参加いただき、その場での貴重な証言や学生の質問へのお答えが本書にも有用に活用させていただくことが出来たのみならず、このような体験が政治無関心世代の我々を、ダイナミックな政治研究の場へといざなって下さった。貴重な時間を割いて本ゼミにご参加下さった、宮沢喜一さん(元首相)、後藤田正晴さん(元副総理、法相)、武村正義さん(新党さきがけ代表)、羽田孜さん(民主党幹事長)、細川護煕さん(元首相)[来ゼミ順]には、この場をお借りして感謝を申し上げたい。

 また、資料収集に当たっては、各党関係者に多大なる貢献をしていただいた。資料の原本を大量に頂いたのみならず、事務方の当事者として新党結成・政界再編の実際について貴重な意見をも頂戴した。ここに、お名前を挙げて感謝の意を表したい。[五十音順]

 日本新党については、枝野幸男さん(衆議院議員)、枝野佐智子さん(枝野幸男秘書)、高木真里さん(枝野幸男秘書)、中田宏さん(衆議院議員)。

 新党さきがけについては、田中秀和さん(新党さきがけ党務幹事室)

 新生党については、田辺貴子さん(元新生党職員・改革国民会議事務局長)、西尾利逸さん(元新生党職員・新進党参議院事務局長)。

 新進党については、窪田正彦さん(元新進党広報企画委員会職員)、前田陽子さん(同左)。

 太陽党については、濱口和久さん(元太陽党政務調査会政策委員)。また、羽田孜事務所からも多くの資料をじかに頂戴した。

 地方議会データについては、朝日新聞政治部選挙本部の馬郡昭彦事務局長や各地方全国自治体の議会事務局の協力を得た。

 学術的考察に当たっては、遠くからわざわざゼミに足を運んで下さった三宅一郎教授(関西学院大学)、船田氏へのインタビューを始め、新党研究の先駆者的立場から自ら取材したインタビューテープを提供して下さった大嶽秀夫教授(京都大学)にも感謝を申し上げたい。また、データ整理のためゼミ生が大挙して押しかけた筑波大学社会工学系研究室、助手の石生義人さん(現・講師)、大学院生の森裕城さん・三輪博樹さんにはデータの提供やSPSSについて教えていただいたのみならず、「非研究的活動」でも御一緒していただき、有意義なひとときを過ごさせていただいた。

 最後に、本ゼミ開講時から全面的に協力していただき、政治家や各関係者との折衝や様々なアドバイス・御教示を通じて、我々の無鉄砲な行動に適時、絶妙な水先案内をしていただいた吉田慎一客員教授・朝日新聞編集委員には、この場では述べ切れぬほどの感謝の思いでいっぱいである。

 本書の編集には、本郷の蒲島研究室とその設備を存分に活用させていただいた。秘書の竹内朝子さんにも大変お世話になった。ICCLP(東京大学法学政治学研究科比較法政国際センター)の皆さんには、研究室の近くゆえに、転任直後の設備の不備を大いに補っていただいた。お隣の樋口範夫教授には、研究室の静寂な環境を我々が壊してしまい、まことに申し訳なく思う次第である。そして、なにしろ、われらが教官の蒲島郁夫教授には頭が上がらない。研究室の騒々しさによる学部内での不評があれば、それらの責は全て我らゼミ生に帰するものである。この場を借りて、少しの謝罪と大きな感謝の思いを伝えたいと思う。

 93年前後の日本政治にとっての「熱い時代」はとうに過ぎ去り、今はその後続いている深い混迷の直中にある。本書が今後、この現代を研究せんと欲する研究家諸氏にとって研究の良きお供になれば、はたまた、当時の時代の雰囲気に触れようとする諸兄にとっても、本書が良き材料と刺戟になればと深く思わずにはいられない。

1997年7月 梅雨の晴れ間の東大本郷蒲島研究室にて


http://politics.j.u-tokyo.ac.jp/lab/edu/seminar/study/1st-semi/essay/jobun.htm

 次へ  前へ

  拍手はせず、拍手一覧を見る

▲このページのTOPへ HOME > 政治・選挙・NHK20掲示板


  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。