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永田問題でかすむ『4点セット』 自民圧勝の郵政選挙もそうだった
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20060303/mng_____tokuho__000.shtml
送金指示メール問題では自民党を攻めるはずの民主党が、お粗末な危機管理で一転し批判にさらされた。まるで白が黒に裏返るオセロゲームを見るようだ。白か黒かで一気に流れが変わるオセロ現象は、政界にとどまらず産業界や社会心理にも現れる。いま直面する「オセロ社会」とは。
「民主党も永田さんも何を謝り、何を反省し、誰に謝罪すべきかまったく分かっていない」。自民党の武部勤幹事長は先月二十八日、永田寿康衆院議員の謝罪会見後、記者団に対し、怒りをあらわにした。
わずか十二日前、永田氏が衆院予算委員会で「送金指示メール」問題を指摘した直後、武部氏は顔面蒼白(そうはく)だった。「そのような事実は全くない」と疑惑を全面否定しながらも、永田氏に抗議するかどうかについては「予算委に任せたい」と述べるにとどまり、傍目(はため)にも動揺している様子だった。
その後、メールの信憑(しんぴょう)性に疑問符が付くと、武部氏は徐々に顔色を回復。そして冒頭の「名誉回復宣言」に至った。
■オセロ社会がやってきた
一方の永田氏は疑惑追及の急先鋒(せんぽう)という立場から、議員の身分を失いかねないところまで追い込まれている。「一寸先は闇」と言われる政界だが、二人の議員は二週間足らずの間に、まさにオセロゲーム現象を体現した。
自民、民主両党の攻防も白から黒へと一気に塗り変わった。小泉政権は野党からライブドア事件、BSE問題、防衛施設庁談合事件、耐震偽装事件の「四点セット」を追及されて守勢に立たされ、与党の実力者からも経済格差の拡大など「改革の影」に対する懸念が出た。
だが、民主党の失策によって形勢は大逆転。四点セットの責任追及は吹き飛んだままだ。与党は今後も民主党、永田氏の責任を厳しく追及していく構えで、衆院三分の二以上の議席を背景に永田氏を除名すべきだという強硬論も出ている。
同時に「永田氏を除名にすれば、巨大与党の横暴だと批判され、一気に流れが変わる」(与党幹部)と次のオセロ現象を恐れる声もある。
政界のオセロ現象と言えば、昨年九月の総選挙が記憶に新しい。民主党は総選挙のたびに議席数を大きく伸ばし、政権奪取をうかがう勢いだったが、小泉首相の「郵政民営化」の一念に敗れ、次々に議席を失った。自公両党は小選挙区で約49%、比例で約51%の得票率ながら議席は三分の二を超える圧勝。制度自体がオセロ現象をはらんでおり、次の総選挙では逆の結果もあり得ることになる。
政治評論家の森田実氏は政界オセロ現象について「マスメディアの非常に発達した大衆社会の特徴だ」と指摘。その上で、背景と問題点をこう解説する。
「かつて、政党の地方組織や支持団体には、個々の有権者に情報を伝える能力があった。そういう政治と国民のパイプがオセロ現象のブレーキ役を果たしていた。それが完全に形骸(けいがい)化してしまい、テレビの影響力が非常に強くなった。一人一人の人間とテレビが直結されてしまい、オセロ現象が起きる。脆弱(ぜいじゃく)社会の産物だ。テレビをうまく使った政治家が最小の努力で人気者になり、権力を握る」
経済界でも「オセロ」はキーワード化しつつある。
松下電器産業の中村邦夫社長は昨年の入社式で「昨今の競争の激しいデジタル化時代を『オセロゲーム』の時代と呼んでいます。今、最後尾にいても、技術がお客様に認めてもらえたら、トップになることができ、まったくその逆もある」と訓示。デジタルカメラ最後発だった同社が、独自の手ぶれ補正技術を入れることで、今やカメラメーカー各社を押しのけて首位になった事例を挙げた。ヒット商品が出ればシェア総取りも可能だが、ヒット商品自体は短命の時代になった。
松下はプラズマテレビ販売の世界シェア四割を占める「勝ち組」なのだが、中村社長はその後も「オセロ」を繰り返し、危機感を隠そうとしない。液晶テレビ国内トップシェアを誇るシャープの町田勝彦社長も昨年の民放番組で「オセロゲームの時代。明日はわからない」と発言した。
経済評論家の三原淳雄氏は「例えばソニーはブラウン管時代の技術力からなかなか離れられず、薄型テレビ市場の序盤で失敗した。しかしプラズマで失敗して経営資源を液晶に集中したことで最近また持ち直している。ある技術部門のキーパーソン、あるいは一人のトップの交代で劇的に状況が変化する時代になった。一方で次の一手をどう打つか考える時間は限られており、ミスをすると挽回(ばんかい)が難しい」と分析する。
経済の現場が速度を上げれば、そこで働く人びと、その家族、地域社会もスピードアップを迫られる。
新潟青陵大の碓井真史教授(社会心理学)は「ゆっくり悩む時間すら与えられない、余裕のない社会になってきた。白か黒か今すぐはっきり決めろ、と常に迫られている」とみる。
碓井教授は、自殺や不登校などの増加は、実は徹底的に悩みきれないことの裏返しだと指摘する。借金まみれになっても、自己破産や生活保護を受けて再起を図る道はある。学校生活で行き詰まっても、自ら行動を変えて状況を変えられる可能性も残る。悩みもがいていれば、極端な手段に走らないはずだという。
「ところが、ダメならもういいやと、すぐその場を降りてしまう。あるいは逆に、ほとんど現実味のない一発逆転を狙う。本当はグレーゾーンの中でバランスを取って生きるその工夫が心の柔軟性につながるのだが、そんなのは面倒だという考えが広まっている」
オセロは終戦直後の一九四五年、水戸市の旧制水戸中(現水戸一高)学生だった長谷川五郎・日本オセロ連盟会長が考案。世界三十カ国で普及したその最大の魅力は「囲碁半年、将棋三カ月、麻雀(マージャン)二週間、オセロ五分」(長谷川氏)というルールのシンプルさと一発逆転の痛快さだ。
だが、オセロでさえ、実際の試合現場では優劣がはっきりするような勝負ばかりではない。
「相手に勝たせておき、終盤の五手ぐらいで一気にどんでん返しするというのが、他の盤ゲームと異なるオセロならではの醍醐(だいご)味。ただ、力が拮抗(きっこう)していればやはり接戦となり大逆転は起きない」(黒川幸明・同連盟事務局長)
■『グレーゾーン』が日常なのに
パタパタと相手の駒をひっくり返すあの瞬間でさえも、「グレーゾーン」に包まれているという。
「世界選手権レベルの選手が、返し忘れをわざとやる。その方が有利な戦況になる場合があるからだ。ルール違反なのか、統一的な見解はまだない。これだけ単純なゲームでさえ、単純ではないのです」
「オセロ社会」への懸念について碓井教授は語る。
「ネット普及以後、人びとは膨大な情報を得るようになったが、すべてを処理しきれないから、自らに直結しない物事については極めて無責任な態度を取るようになった。そうすると物事をショーとして面白く見たいという気持ちが起こるし、分かりやすく白黒つけてほしくなる。裏を返せば、グレーゾーンの日常で他人とうまく関係を結べない人々が、思いを投影させている結果ではないか」
前出の森田氏も、一気に流れが変わる社会に警告を発する。
「政治にとっての最大の価値基準は戦争をするか、平和をとるかだ。戦前と今は似てきている。戦争だけは反対だと、危険な傾向に歯止めをかける社会組織を持たないといけない。メディアが権力の手先になったら、チェックするのは市民組織のはずだ。人と人とのつながり、市民組織を復活させないと日本は強い社会にならない」
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