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□[縦並び社会・格差の源流に迫る]強まる金持ち優遇|毎日新聞
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1848616/detail?rd
[縦並び社会・格差の源流に迫る]強まる金持ち優遇
高級品を買い求めるセレブのパーティーは6日夕、東京・南麻布の料亭で始まった。4000万円のフェラーリや380万円の真珠のネックレスが展示され、起業家、タレント、外交官ら約400人が日本舞踊を眺めながらワインを傾ける。
上場会社の社長(31)の個人資産は30億円。三つの億ションを持ち、株も多数所有している。「株は税金の面でも有利だから」と言う。
メリルリンチ日本証券の昨年6月の発表によると、100万ドル以上の資産(居住目的の不動産を除く)を保有する人は世界で830万人。その6人に1人が日本人だ。
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98年7月。小渕恵三首相は就任後初の会見で「最大の課題は景気回復。(恒久減税を)できる限り早くやりたい」と抱負を語った。高額所得者ほど負担が重い所得税の最高税率引き下げと法人税減税は自民党総裁選の公約だった。
会見の4日後、宮沢喜一蔵相と自民党税制調査会は、さらに所得税を一律に割り引く定率減税の実施で合意する。首相の側近は「金持ち優遇の批判をかわすために追加された」と振り返る。
所得税・住民税の最高税率は99年に65%から50%まで引き下げられた。景気刺激のため一層の緩和が持論の竹中平蔵総務相。司会を務めた経済財政諮問会議は02年、税制改革をテーマに挙げ、政府税制調査会の石弘光会長をたびたび招いた。竹中氏は会見で「経済の活性化が非常に重要だという点では完全に意見が一致している」とプレッシャーをかけた。
最高税率をめぐっては、政府税調でこんな議論もあった。
昨年5月、兵庫県知事の井戸敏三委員は「格差拡大が言われる中、高所得の方々に所得に応じた負担をしてもらわないと低所得者とのバランスが取れなくなる」と最高税率引き上げの検討を求めた。だが、別の委員が「(累進課税を緩和して)社会主義国家から資本主義国家になったと思っている矢先に、また元へ戻すのか」と反対する。石会長が「当然その話(反対意見)が出てくると期待していた」と述べ、検討は見送られた。
小渕内閣の減税のうち定率減税は来年廃止される。「金持ち優遇」だけが残った。
「格差拡大に悪影響を与えかねない」。元財務省幹部がそう認める減税がある。03年から5年間、これまでの半分以下の一律10%の税率に下げられた株式譲渡益と配当所得への課税だ。働いて稼いだ所得と合算する総合課税ではない分離課税。株で1万円もうけても、100億円もうけても税率は同じ10%だ。
減税実施後、株価は上昇基調に転じる。IT長者が注目され、ネットトレーダーが急増した。給与所得で最高税率50%を負担している人(課税所得1800万円以上)は全納税者のわずか0・5%(05年度推計)。元同省幹部は「本当の金持ちは収入を株による所得に簡単に変えられる」と指摘する。
例えば自社株を大量に保有するベンチャー企業のオーナーは上場後に株式の一部を売却したり株式の配当を増やせば、税金は軽くなる。「金持ちの税金を分離課税で安く済ませてしまうのは大問題と分かっていた。だがそれ以上に、貯蓄から投資への流れを進め、日本の経済を良くする必要があった」
分離課税支持の答申を出した政府税調の石会長は「仮に株による所得に5割の税率をかけたら日本から投資が逃げる。逃げ足の速い所得には課税できない」と説明する。それでも「高所得者にきちんと課税できなかったのは反省点。税率をできれば20〜25%に上げていきたい」と言う。
一方、総合課税を主張してきた東大教授の神野直彦委員は「強い者をより強く、負けた者はそのままにする方が社会が活性化するというのが政府の考え方だ」と語り、警告する。「その結果格差は拡大し、社会病理となって噴出している」
=おわり
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この連載は鯨岡秀紀、吉富裕倫、井上卓弥、鵜塚健、中西拓司、夫彰子、清水憲司、小松雄介、ワシントン木村旬、同吉田弘之が担当しました。
2006年04月13日19時35分
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