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[2006年04月12日付]
政府の食料・農業・農村政策推進本部は先週、中川昭一農相が提案した「21世紀新農政2006」を決定した。本部長の小泉純一郎首相が「守りから攻めが大事」と強調、政府一体の取り組みを関係閣僚に指示した。だが、小泉首相が好む「攻めの農政」は威勢はいいが、危惧(きぐ)もつきまとう。世界貿易機関(WTO)農業交渉での「守り」を軽んじる論理に、決してすり替えてはいけない。
新農政2006は、今後の農政展開で戦略的な数値目標を掲げた。5年間で「農林水産物・食品の輸出額倍増」「新食品・新素材の市場規模3倍超へ」「バイオマス(生物資源)輸送用燃料50万キロリットルに」――など、夢のある目標が「攻めの農政」を形づくっている。
農産物の輸出増や、でんぷんや糖を多く含む作物のエタノール燃料化などは新たな需要拡大につながる。確かに、日本が少子高齢化に伴う人口減少社会に突入した今、需要開拓に力を入れないと消費が減り続け、国内農業は縮小を余儀なくされてしまう。
しかし、「攻めの農政」という美名で、棘(とげ)を隠していないだろうか。小泉首相は「構造改革」の御旗で市場原理主義を貫き、社会的弱者や地方を窮地に追いやる格差問題を生じさせている。新農政2006も、その小泉構造改革路線に乗っているからこそ、首相から信任を得たことは見落とせない。
新農政2006は実際、「国際化の進展」への対応を戦略の柱に据えている。日本は現在、WTO農業交渉で米国など食料輸出国と激しく応酬しながらも、主要少数国として交渉をまとめる立場にある。2国間での経済連携協定(EPA)締結の推進も打ち出している。
WTOやEPAの交渉で農産物の一層の市場開放という譲歩を念頭に、その国内対策として「攻めの農政」を鼓舞しているとの疑念がわいてしまう。もし、その政治的意図が隠されているなら、国内農業者へのだまし討ちであり、到底許されるものではない。
米をはじめ外国産に需要をさらに奪われても、輸出やエタノール燃料化などで国産の活路を見いだせばいいという短絡的な発想は、微塵(みじん)もあってはいけない。輸出はおのずと量が限られる。バイオマス利用も原料代が安く、生産者に負担を一方的に強いる危険性がある。とても輸入増の打撃を埋めることはできない。
新農政2006は国内農業の体質強化で、5年間での「食料供給コスト2割縮減」も明記した。これは流通、小売りも含め国内全体で取り組むもので、農業の担い手の所得増につなげるべきだ。WTO交渉の決着後、国産価格を下げる数値目標にされる不安をぬぐわないと、農業の担い手育成に水を差しかねない。農政改革が加速する中、あえて疑念を呈しておきたい。
http://www.nougyou-shimbun.ne.jp/column/0604/12.html
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