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記者の目:存亡かかる共産・社民 尾中香尚里(政治部)
共産党と社民党の党大会を、今年に入り相次いで取材した。国会の議席が激減した「老舗の護憲政党」は今、数だけでなく理念・政策の面でも危機にある。憲法改正の是非を問う国民投票法案の国会提出が模索され、政界では改憲への動きが加速しているからだ。
本気で改憲阻止を目指すなら、両党は「憲法を守る」一点でもっと積極的に共闘すべきではないか。ささいな理念の違いに縛られ主導権争いに終始すれば、改憲に迷う国民をわずかな違いで分断し、改憲阻止への逆効果になりかねない。
「共産党がわが党の平和政策をどれだけ口汚くののしってきたか。(社民)党の主体性が重視されるべきだ」。11日の社民党大会で地方党員の一人が、厳しい言葉で共産党との共闘に対する慎重論を展開した。共産党に対する社民党の「近親憎悪」にも似た感情を改めて実感した。
両党が昔から険悪だったわけではない。70年代には共産党と旧社会党(社民党の前身)が「社共共闘」を展開、全国の地方自治体に多くの「革新首長」を誕生させたこともある。しかし蜜月関係は80年1月の「社公合意」で幕を閉じる。旧社会党は公明党との「連合政権構想」で合意。「共産党は政権協議の対象としない」ことで一致した。
以来共産、社民両党の関係は悪化、やがて衆院の小選挙区比例代表並立制導入の影響で、ともに党勢を衰退させた。昨年の衆院選で、自民、公明両党は憲法改正を発議できる3分の2の勢力を確保。改憲は現実の政治日程にのぼり始めた。
国会で改憲の発議を阻めないなら、次は国民投票で「改憲反対」を過半数に持ち込む運動が必要だ。しかし両党とも自らの党勢拡大と、自党を中心にした「無党派層や保守層との連携」を強調するばかり。護憲政党同士の連携は、あえて避けているように見えた。
こうした状況にまず業を煮やしたのが、共産党の地方党員だ。1月の党大会では執行部に対し、社民党との共闘を求める意見が続出。地方の声に押される形で、志位和夫委員長は大会後、社民党の福島瑞穂党首に「改憲阻止での共闘」を提唱。その意外感が、1カ月後に聞いた社民党の地方党員との違いを、さらに強く印象づけた。
両党の地方党員の意識が異なる背景には、草の根の有権者との接触の度合いの違いがあると思う。
党勢が衰退したとはいえ、共産党は各種選挙で大半の選挙区に独自候補を擁立し、機関紙配布といった日常活動も根強く残るなど、それなりに地域に浸透している。一方の社民党は、人材もカネも支持労組に大きく頼ってきたため、10年前の党分裂で労組が民主党支持に流れた後は、有権者と日常的に結びつく基盤が大きく損なわれた。
だからというわけではないが、私は共産党の地方党員の方が、改憲反対の有権者の意識をより的確につかんでいるのではないかと思う。「『社共』だけが前に出ると幅広い勢力は結集できない」という社民党の懸念もわかるが、最も主張の近い勢力との共闘に及び腰なのに、無党派や保守層との連携を掲げても「本気度が疑われるだけ」という主張の方が説得力はある。
国民の多数が女性・女系天皇を容認していても「今国会での皇室典範改正」には慎重論が多数派だったように、憲法問題でも「改憲に賛成だが、拙速に行うのは反対」という人もいる。こうした人々の意識も掘り起こす度量の広さが求められる時、過去へのこだわりは邪魔になるだけだ。
「社公合意」の時に共産党書記局長だった不破哲三前議長は、今回の党大会で党運営の指導的立場を退いた。社民党の福島氏は弁護士出身で、政治家としては旧社会党時代を知らない。過去を乗り越える良い機会だ。両党は近く党首会談で共闘を確認するが、選挙協力も含め、現実の政治状況にさざ波を立てる行動を見せてほしい。
両党を取り巻く環境は「革新ブーム」に沸いた70年代とは確かに違う。「ミニ政党クラスとなった両党の共闘にどれほどの意味があるのか」との思いもないわけではない。
だが、世論調査などを見る限り、国民世論は政界ほど改憲一色ではないと思う。改憲に国民投票という要素が必要な以上、小さくても二つの護憲政党の動きはもう少し注目されていいはずだ。注目に値する政治行動を取ればの話だが。
毎日新聞 2006年2月23日 0時13分
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/feature/news/20060223k0000m070154000c.html
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