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小泉外交・光と影/3 「同盟」一辺倒の日本
◇米は対中で硬軟戦略
アメリカ独立宣言が起草された東海岸の古都フィラデルフィアで1月10日、日米中の計四つの研究機関が、安全保障をテーマにした非公開のセミナーを開いていた。
昼食を取りながらの意見交換で、上海国際問題研究所の日本研究者が切り出した。
「カリフォルニア州で始まった陸上自衛隊と米海兵隊の訓練は尖閣諸島に上陸するための訓練ではないのか」
北米大陸をはさんだ西海岸では、前日の9日から27日まで、同州の海兵隊基地で離島防衛を想定した初の日米合同訓練が行われていた。中国は米軍と自衛隊の一体化を進める在日米軍再編の動きに神経をとがらせている。上海国際問題研究所は中国政府寄りというより、中国政府と一体の組織とみられていた。
日米両国政府は昨年2月、在日米軍再編協議を進めるにあたって「共通戦略目標」を定めた。その共同発表文書には「台湾海峡をめぐる問題の対話を通じた平和的解決を促す」という一文が盛り込まれている。中国は反発した。中国と台湾が武力衝突すれば、日米は台湾支援に動くという脅し−−と受け取ったのだ。
国防総省の中国部長を務めたアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のダン・ブルーメンソール研究員は、中国の思惑をこう読む。
「小泉純一郎首相の靖国神社参拝に対する中国の批判は戦術にすぎない。中国の地域的な野望にとって最大の障害は日米同盟の強化なのだ」
一方、米国の対中政策だが、これが複雑だ。端的に言えば、国務省と国防総省のスタンスが違う。国務省は相互依存を深める米中経済を背景として中国との間に「戦略的協力関係」を築きたい。国防総省は中国の軍事的膨張を「将来的な脅威」と見て身構えている。
AEIの研究員で、ブッシュ政権の安全保障政策に影響力を持つネオコン(新保守主義派)の論客、トーマス・ドネリー氏は昨年末、米、英、日にインドを加えた「4大国同盟」を提唱する論文を発表した。旧ソ連の友好国だったこともあるインドは今や人口11億に迫る「世界最大の民主主義国」。中国の台頭を封じ込めるため、米国は「自由主義の国際秩序を支える戦略的パートナー」としてインドを取り込もうとしている、というのが論文の趣旨だ。
「封じ込め(containment)」は東西冷戦時代の米国の対ソ戦略の基本だった。それを今こそ中国に当てはめるのだと公言する米政府高官はいないが、3月にはブッシュ大統領が初めてインドを訪れる。小泉首相は昨年4月、麻生太郎外相もこの1月、かの地を訪れた。「4大国同盟はすでに現実だ」と、ドネリー氏は見る。
外交で中国に「国際社会の責任ある一員」たるよう働きかけつつ、軍事的には「封じ込め」を探る。それが米国の対中戦略といえよう。これに対して中国は、日米の離反を図りつつ米国に接近する。はざまに位置する日本は、靖国問題を抱えて中国への外交的アプローチを封じられたまま、日米同盟を強化して米国の軍事戦略を支える道をひた走っている。
同盟強化の過程で自衛隊の役割は拡大し、新しい装備が増える。昨年11月、訪米した自民党国防族議員はロッキード・マーチン、ボーイングなどの大手軍需企業に招かれ衛星を利用したミサイル防衛(MD)の将来システムや新型戦闘機の売り込み攻勢にさらされた。
「日本はさんざんアメリカから武器を買わされた揚げ句、気がついたら中国と仲良くなったアメリカにお荷物扱いされていた、というようなことにもなりかねない」
自民党幹部の間にもこんな声がある。=つづく<コラージュ・日比野英志>
毎日新聞 2006年2月1日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/feature/yureru/news/20060201ddm002030066000c.html
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