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(回答先: メーカーのための電気用品安全法 [きっこの日記] 投稿者 white 日時 2006 年 3 月 02 日 22:15:14)
□音楽を殺す電安法/いとうせいこう
http://diary.nttdata.co.jp/diary2006/02/20060227.html
音楽を殺す電安法
自宅にて
電気用品安全法、略して電安法が４月から実施されることになり、ことに音楽関係者から激しい疑問の声が上がっている。だが、一般にはこの問題はあまり注目されていない。
ざっくり言えば、PSEマークというものをつけていない電化製品すべてが、安全性を確認出来ない製品として販売禁止になる。マークのない年度以前の製品は基本的にすべて売れなくなるわけだ。
まず第一段階として、01年度以前の製品が販売禁止になるのはテレビ、洗濯機、ビデオデッキ、オーディオ製品、電子楽器などの259品目。
これに対して、坂本龍一、高中正義、松武秀樹といった音楽界の重鎮が“対象機器の規制緩和”を求めて署名活動を始めた。くわしくは以下を見ていただきたい。
https://www.jspa.gr.jp/pse/
「このままでは専門機器を支える中古機器販売、下取り市場も閉鎖せざるを得ない状況になってしまい、これからの日本の音楽と芸術文化の発展に大きな支障をきたす」という主張は切実である。
楽器というものは新しければいいというものではない。往年の名器というものがあり、どんなに古くても他の楽器には出せない音を持っている。今のままだと、そうした音を出すための売買が不可能になってしまうのだ。
僕は若い世代のことを考える。彼らが真新しい楽器だけに接し、音の広がりを体験出来ないようなことになれば、これは確かに「日本の音楽と芸術文化の発展に大きな支障をきたす」。名器だけではない。中古楽器から音楽の世界に入る者が少なくない以上、本法案は日本のソフト産業にのちのち大きな禍根を残すことになると思う。
そもそも安全性を盾にこの法案を通した経済産業省自身が、同時にリサイクル政策を打ち出しているのだ。よりよいリサイクルへの道を作ることと、新しい電気製品を保護する電安法は矛盾しているのである。
現在、経済産業省は中古製品に対する自主検査を認めているようである。検査機関が天下りで出来ているのではないかという憶測も飛び始めているから、これはその対応なのかもしれない。だが、自主検査にも金が要る。金だけではない。経済産業省は自主検査に関して、事業者が全リスクを負うことを決めている。何か問題が起きれば、事業者はすべての責任をひっかぶらなければならないのだ。
たまたま先日中古楽器店に行ったのだが、規定年数を越えた輸入楽器は４月以降売れない、もしくは今と同じ値段では売れないと店主がグチをこぼしていた。検査するなら相当の値段のはね上がりが予想されるという。しかももし問題があれば、店の存続も危うい。
安全性確保は実際に大切なことではある。だが、どうもこの電安法は拙速に出来た法案ではないかという疑問が残る。どの業界団体の利益を優先したのか知らないが、先ほども書いたリサイクル政策とのバッティングや、自主検査という方法の曖昧さ（事業者への丸投げ）を含めて、あまりに実施を急ぎ過ぎている感があるのだ。
数年後、音楽に目覚めた中学生はPSEマークのついた新しい楽器のみに触れ、モーグのキーボードに触れることもなければ、ビンテージギターの音色も実体験出来ず、貧しい音の世界で耳を鈍くしていく。
日本から有能なミュージシャンは出なくなるだろう。これはそれくらい大きな問題なのである。よい音楽が生まれることを何より望む者は、坂本さんたちの署名運動に参加するべきだ。少なくともこの法案の存在に首を傾げるべきだと思う。
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