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◇政府主張揺らぐ根拠／沖縄返還密約元局長証言
政府が否定し続けている沖縄返還の対米支出に関する「密約」について、米政府の公開公文書が報道された二〇〇〇年五月、元外務省アメリカ局長の吉野文六氏（８７）が、当時の河野洋平外相（現衆院議長）に事実を否定するように依頼されたと二十四日、証言した。密約の証明を補強する別の公文書が明らかになった〇二年や、吉野氏が密約を認める証言をした直後の今月、それぞれ外相は「二〇〇〇年に河野外相が吉野氏に密約がないことを確認した」ことを根拠に事実を否定している。吉野氏の証言は、事実を認めない政府の根拠を揺るがしており、政府の説明責任があらためて厳しく問われる。（社会部・粟国雄一郎）
吉野氏への働き掛けについて、河野氏は二十四日の本紙の取材に、事務所を通して「古い話なので覚えていない。外務省に聞いてほしい」と回答した。
麻生太郎外相は同日の衆院外務委員会で「（吉野氏は）いま八十七歳になられていると思うが、最近になって言われているという話は漏れ承っている。（密約は）なかったことにしてくれと河野外相が頼んだという話だが、そのようなことはなかったということだ」。民主党の武正公一氏の質問に答えた。
米公文書の存在を朝日新聞が報道した二〇〇〇年五月、河野外相は会見で、吉野氏に電話で事実を確認したことを明らかにし、「吉野氏は『密約はない。日本に該当する文書はないだろう』と話していた」と述べた。
一方で吉野氏は二十四日の本紙取材に、二〇〇〇年の報道後に外務省の事務方から「問い合わせがあったら事実を否定してほしい」と電話で頼まれたと証言。その後、河野氏本人からも電話で否定するよう依頼されて了承した、と語った。
〇二年、ＴＢＳや毎日新聞が別の公文書の存在を報道したが、当時の川口順子外相は「二年前にも同じような報道があり、河野洋平外相が当時の局長（吉野氏）に聴いたところ、事実はないということで調査済み」と、“河野確認”を根拠にあらためて確認する考えがないことを強調した。
吉野氏が報道各社に「密約」を認める証言をした直後の今月十日には、麻生外相が「外務省の態度に変化はない」とした上で、「河野氏が吉野氏に『密約はあったのか』と聞き、『ない』と答えたことをもって、この話は終わっている」との立場を示している。
否定かたくな識者批判
一連の政府の態度について、田島泰彦・上智大教授（メディア法）は、「国民を欺き続ける、犯罪ともいうべき権力の組織的かつ悪質な行為だ」と痛烈に批判。「政府は国民に対してこれだけ明白なうそをつき続けている。政治家の発言があまりにも軽い」と語った。
国に密約を認めて謝罪するよう裁判を起こしている元毎日新聞記者の西山太吉さん（７４）は「政府否定の原点が完全に崩れた。これ以上のどんな証明が必要だというのか。それでも否定するなら、公文書や吉野証言のどこが違うのかをちゃんと説明するべきだ」。
事実を否定する政府を再追及しないメディアの体質を批判し、「国民がこの状況を許してはいけない」と語った。
政府の「密約」否定の経緯
２０００年５月 朝日新聞と我部政明琉球大教授が「密約」を裏付ける米政府の公開公文書を発見、報道。・青木幹雄官房長官が記者会見で密約を否定。「沖縄返還に関する日米間の合意は、１９７１年の返還協定ですべて明らかにされている」（２９日）・河野洋平外相が閣議後の会見で密約を否定。吉野氏に電話で確認したことを明らかに。「返還に際しての日米合意は沖縄返還協定がすべてだ。歴代外相は密約が存在しないことを明確にしてきている」／「吉野氏は『密約はない。日本に該当する文書はないだろう』と話していた」（３０日）
２００２年６月 ＴＢＳや毎日新聞が密約の証明を補強する米政府の公開公文書を入手して報道。・福田康夫官房長官が記者会見で密約を否定。「密約は一切ない。肩代わりをしていないので密約をする必要もないというのが論理的帰結だ」（２７日）
・川口順子外相が記者会見で密約を否定、調査の考えがないことを強調。「（２０００年当時）河野外相が当時の局長に聴いたところ事実はないということで調査済み」（２８日）
０６年２月 元外務省アメリカ局長の吉野文六氏が「密約」を証言。
・安倍晋三官房長官が記者会見で密約を否定。「まったくそうした密約はなかったと報告を受けている」（９日）・麻生太郎外相が記者会見で密約を否定。「（２０００年当時）河野外相が吉野氏に電話で確認したことをもってこの話は終わっている」（１０日）
・政府が密約否定の答弁書を閣議決定。「外務省としては、発言の内容は承知していない」（２１日）
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200602251300_03.html
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