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小泉「改革」のツケが回ってきた  コスト優先が招いた耐震偽装事件 【SENKI】
http://www.asyura2.com/0601/senkyo18/msg/919.html
投稿者 愚民党 日時 2006 年 1 月 22 日 23:52:56: ogcGl0q1DMbpk
 

規制緩和―官から民へ

小泉「改革」のツケが回ってきた

コスト優先が招いた耐震偽装事件

http://www.bund.org/editorial/20060125-1.htm

 姉歯元建築士による耐震データ偽装事件は、発覚から2か月たっても未だその真相が解明されていない。耐震偽装が行われたマンション・ホテルは18都府県93物件(1月11日現在)。監督官庁の国土交通省は、木村建設や総研がかかわった600棟にのぼる疑惑物件の調査に追われている。コスト優先で安全性を犠牲にした今回の耐震偽装事件。規制緩和―「官から民へ」といった小泉流「改革」のツケが回ってきている。

「姉歯事件」は氷山の一角

 今回の耐震偽装事件は、建設コストをできるだけ削減して儲けるために、総研・木村建設・ヒューザー・姉歯元設計士などがぐるになって行ったものであることは間違いない。さらに、鹿島や大林組など大手ゼネコンが施工を請け負った物件の中に、実際は姉歯元建築士が耐震設計を行い、木村建設が建設を下請けした物件が存在していることも暴露されている。もはやことは「木村建設」という中小ゼネコン一社の問題ではない。建設業界全体をまきこんだ大事件へと発展している。  

 ところが政府・自民党は国会への証人喚問には一貫して消極的で、武部勤・自民党幹事長にいたっては、「悪者探しに終始すると、マンション業界つぶれますよ、ばたばたと。景気がこれでおかしくなるほどの大きな問題です」(11月25日、釧路市での講演)などと語っている。自民党小泉政権が、耐震偽装事件の幕を引こうと懸命なのは、自らが進めてきた規制緩和―「官から民へ」路線こそが、今回の耐震偽装事件を招いた元凶に他ならないからだ。責任追及が自分たちのところにまで及ぶことを恐れているのだ。  

 今回の耐震偽装事件の背景には、1998年に行われた建築基準法の全面的な改定がある。早稲田大学理工学部大学院で建築学を学んだ建築家でもある関岡英之氏は、『拒否できない日本』で次のような事実を暴露している。  

 1998年の建築基準法改定は、1995年の11月、政府が建築審議会に建築基準法の見直しを諮問したのが発端だとされている。1995年といえば阪神大地震で、倒れないはずの高速道路の橋脚が倒れ、多くの住宅や建物が倒壊し、耐震基準の甘さや手抜き工事が大きな社会的問題になった年だった。それゆえ、建築審議会による建築基準法の見直しは、誰もが耐震設計や建築基準を大幅に強化するものだと思っていた。ところが実際は、全く違ったのだ。  

 できあがった建築審議会の答申は、「(建築基準は)国民の生命、健康、財産保護のために必要最低限のものとする必要がある」としている。二度と阪神大震災のような大きな被害を出さないためというのなら、耐震などの建築基準は「必要最大限」のものとされるべきだろう。ところが答申は「必要最低限」としている。これはどういうことか。その理由は同答申の別の個所を読むと見えてくる。  

 「海外の基準・規格との整合性等を図ること」「わが国の建築市場の国際化を踏まえ、国際調和に配慮した規制体系とすること」。つまり同答申がもっとも強調していることは「耐震基準の強化」ではなく、建築基準や製品規格に関してグローバル・スタンダード(国際基準)を導入せよ、ということなのだ。  

 日本は、世界有数の地震多発国である上に、狭い国土に人々が密集して暮らしている。それゆえ、従来の建築基準では、地震の少ない国を基準としている海外の建築基準や国際規格より厳しい基準・規格が採用されてきた。ところが、建築審議会の答申は、「国際基準との整合性」「国際化」の名の下に、日本の建築基準を海外並の「必要最低限」にまで引き下げることを提案するものだったのだ。  

 こうした答申を受け1998年、建築基準法が改訂された。その内容は、「阪神大震災の教訓を生かす」どころか、耐震基準・建築基準を大幅に緩和するものだった。

規制緩和で引き下げられた耐震基準

 1998年の建築基準法改定の最大のポイントは、建物の建て方を細かく規制していた従来のルール(仕様規定)を、建築材料の性能を規定する新しいルール(性能規定)へと変更したことにある。  

 仕様規定とは、地震多発国日本で古くから伝えられてきた大工さんたちの「匠の技」「高度で精妙な木建築の伝統工法」(関岡英之『拒否できない日本』)を前提としたものだった。例えば、近年米国から導入されたツー・バイ・フォー工法のような「釘をガンガンうちつけるだけの素人でもできる単純な工法」(同前)は、旧来の建築基準では受け入れられないものだった。  

 「仕様規定」から「性能規定」への変更は、日本の建物の建て方自体を大きく変えてしまった。関岡氏は、「建築基準法の改定が生み出したものは、日本古来の匠の技を不要にし、外国の工法や建材がどっと日本に入ってくる道を開くこと以外の何物でもない」(同前)と厳しく批判している。  

 実はこうした建築基準の緩和は、阪神大震災が起きるはるか以前から日米両政府の間で合意されていたものだった。阪神大震災からさかのぼること6年前の1989年5月、日本との巨額の貿易赤字に陥った米国は、通商法スーパー301条(不公正な貿易慣行・障壁を有すると疑われる国に対し報復措置をとるという条項)を日本に対して発動した。いわゆる日米貿易摩擦だ。このときスーパーコンピューター・人工衛星とならんで標的にされたのが建築材料だった。  

 米国は、日本の建築基準法や製品規格が米国製木材などの建築資材の輸入を妨害していると日本を非難。当初日本政府は、耐震設計の必要などから反論していたが、1990年6月、「建築基準は原則として性能規定とすることが好ましい」とした日米合意を受け入れてしまった。米国側は、米国通商代表部が作成した『外国貿易障壁報告書』2000年版で「米国の木材供給業者のビジネス・チャンス拡大につながった」と日本の建築基準法改定を高く評価している。  

 95年の阪神大震災をきっかけに改定されたと日本国内では理解されている建築基準法。だが実際は、米国製建築資材や米国流建築工法に門戸開放するための「規制緩和」こそが目的だったのだ。そして日本のゼネコン・建設業界も、建築基準の緩和はコスト削減につながると歓迎したのであった。

小泉改革は人々を幸福にしない

 今回の耐震偽装事件で、総研が中小建築会社に指導していたのは、アメリカなどから輸入する格安の建築資材・内装品を多量に使った低コスト戦略だった。こうした低コスト戦略は、1998年の建築基準法の改定によって可能になったものに他ならない。木村建設は、総研の低コスト戦略を率先して導入して急成長した。姉歯元建築士は、総研―木村建設が押し進めた低コスト戦略に従い、「経済設計」という名の耐震設計偽装に手を染めていった。かくして、震度5弱で倒壊の恐れのあるホテルやマンションが次々と建設されてしまった。  

 建築基準法の改訂と並んで検査業務の民間委託も行われた。従来、建築の安全性に係わる検査業務は、一定規模以上の自治体の建築主事が担当していたが、1999年に民間検査機関の参入が始まった。  

 政府の行革推進本部は、「建築主事は既得権益を守っている。全廃すべきだ」と民営化を強力にプッシュした。その結果、初年度は21の機関が参入した程度だったが、都市部を中心としたマンション・ブームで毎年10〜30機関が新規参入。昨年度は民間機関による建築確認申請が5割を越え、官民が逆転。民間検査業界の競争は激化し、「早く・安く・甘く」が合言葉になっていた。姉歯元建築士の耐震偽装を素通りさせたイーホームズも、そうした民間検査機関の1つであり、「仕事の早さ」で業務をのばしてきた企業だった。  

 地震でいつ倒壊するかも知れない耐震偽装マンションをつかまされ、充分な損害賠償も公的救済をえられずに立ちすくんでいる住民たち。それは、コスト優先の小泉「改革」によって翻弄され、生活の安定や日々の安全を破壊されている私たち庶民の姿を象徴している。日本社会を格差社会・極端な階級社会へと変貌させる小泉「改革」に反対の声を上げよう。


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地震多発地帯に原発立地は日本だけ

原発の耐震設計も危ない

 マンションやホテルの耐震偽装が注目を集めているが、原発の耐震性をめぐっても同様の疑惑がある。34年前、中部電力・浜岡原発2号機の設計に関わった技術者の谷口雅春氏は昨年4月15日、静岡県庁で記者会見を行い、「耐震計算の数値ごまかし」を内部告発した。  

 谷口氏は語る。「耐震性を調べるため、炉心構造物の重量などの調査をしました。当時は東海地震の危険性が世の中に広まる前でしたから、耐震といっても従来の横揺れの地震についての調査でした。それでも会議では、大地震がきたら『もたない』という結果。私が担当した炉心部分も『完全につぶれる』というデータ結果でした。計算をした担当者は『いろいろ耐震補強を工夫したが、諦めた』と言っていました」  

 ところが会議では、「岩盤の強度を福島原発並に強いことにする。核燃料の固有振動数は、実験値を使わずにGEの推奨する値に書き換える。振動をやわらげる建屋の建材の粘性を高いことにする」といったデータ改ざんを「対応策」(?)として決定。浜岡原発は当初計画通りに建設されることになってしまった。谷口さんは、良心の呵責に堪えきれず同社を退職した。  

 浜岡2号機の地盤を巡っては、1980年の段階で地質学者の生越忠氏も地盤データのばらつきが不自然で、「地盤の強度は法令を満たしていないおそれすらある」と指摘している。浜岡原発では、その後同じ地盤の上に3号機、4号機、5号機が増設されている。すべての原子炉の地盤データ・耐震計算に改ざんの疑いがある。  

 地震予知連絡会元会長の茂木清夫氏は、そもそも世界有数の地震多発地域である日本列島に50余基もの原発を建設すること自体に無理があると警告する。図1の世界地図は、茂木氏が69年に発表した論文に掲載されたもので、世界の原発分布と、過去100年にM7以上の地震が発生した地点を重ねて示したものだ。  

 原発が集中しているアメリカ東部やヨーロッパでは、まったくといっていいほど大地震は起きていない。大陸性の地盤は非常に安定しているからだ。原発立地とM7以上の震源が重なっているのは世界で日本と台湾しかない。台湾政府はすでに原発からの撤退を決定している。大地震の多発地域で原発建設を進めているのは、世界で唯一日本だけだ。ましてや巨大地震の震源域のど真ん中に立地している原発など、世界で浜岡原発以外ない。  

 とんでもないリスクを抱えながら、日本政府は、「石油や天然ガスなどの資源を持たない日本では、原子力に頼る以外エネルギーを確保する道はない」と原発推進の政策を変えようとしていない。だが、「国内に資源がない」という点では、原発の燃料であるウランも100%海外からの輸入に頼っている。  

 原発から生じるプルトニウムを燃料として再利用する「核燃料サイクル計画」は技術的に頓挫し、ウランにプルトニウムを混ぜたMOX燃料を使用するプルサーマル計画も高い危険性が指摘されている。地震多発国でありかつ資源小国である日本は、原発依存ではなく、風力や小型水力など再生可能な自然エネルギーへの転換をこそ進めるべきだ。


(2006年1月25日発行 『SENKI』 1201号1面から)

http://www.bund.org/editorial/20060125-1.htm

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