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天木直人・メディアを創る ( '06/01/14) 上海総領事館員の自殺事件騒動に思う
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投稿者 天木ファン 日時 2006 年 1 月 14 日 21:50:30: 2nLReFHhGZ7P6
 

1月14日―メディアを創る

 上海日本総領事館員の自殺事件騒動に思う

 上海日本総領事館員の自殺事件をめぐる一連の外交的動きと報道振りについて、私には勿論意見がある。しかし何しろ人の自殺に関わることでもあり軽々に意見を述べることにはためらいがある。そんな中でニューズウィーク(日本語版)1月18日号のジャームズ・ワーグナー副編集長の意見は私の意見の一部を代弁してくれている。
「・・・04年5月に起きたこの事件を(今頃になって)週刊文春が報じると、日本の政府関係者は中国の裏切りに『心底驚いた』様子を示し、中国は日本の卑劣な非難に驚き、憤慨して見せた。お亡くなった領事の悲劇を軽んじるつもりは決してない。ただ日中両政府の態度は真に受けないでほしい。やられた側は抗議し、やった側はすべてを否定する。スパイ行為が発覚した際のお決まりのやりとりだ・・・
 心配なのは日本の対中政策だ(それが存在すればの話だが)。現時点では厳しい姿勢を示すのは妥当かもしれない。しかし政府指導者たちの攻撃的な態度を見ていると、冷静に熟考した現実的な政策というより、衝動に駆られた感情的なものに思えてくる。次の首相候補者と目される政治家たちはこぞってタカ派ぶりを強調しているが、日中関係がポスト小泉に向けた権力闘争の巻き添えになったりするのは見たくない・・・」
  ワーグナー氏の意見に加えて私の意見はこうだ。この問題は外務省にとって頭の痛い問題であったに違いない。だからこそ谷内事務次官が、秘密を部外に漏らす職員がいることに不快感を示したのだ。
この問題は表面化して争うべきものではない。なぜならばスパイ行為というものは、あってはならないことであるが、外交ではそのリスクがあることを前提に、その事態に適正に対応するように外交官の訓練がなされていなければならないからだ。女性関係をネタに脅迫されたということがあったとしたら、外務省幹部の責任でもあるのだ。
それが表面化すれば世論の手前上抗議をせざるを得ない。しかしスパイ行為を行った国が「ハイ、そうですか」と認めるはずはない。しかも世界中が見ている中で「お前がスパイ行為をやったのは、ウィーン条約違反だ」などと批判すれば、批判された国はそれを否定するほかはない。かくしてこの問題は日中間の出口の見えない係争になってしまった。
ただでさえ靖国参拝で険悪になった日中関係にまたあらたな懸案が突如として現れてしまった。外務省としては泣きたいところであろう。しかしその難題も、対応次第でダメッジコントロールが出来るはずだ。この問題がこれ以上不毛な日中間の対立に発展するかしないかは、ひとえに外務省の力量にかかっている。外務省も小泉首相や世間に叩かれてばかりいないで、たまには力量を示したらどうかと応援したくなる。

統治されることに馴れすぎた日本人

これも人の言葉の借用である。1月13日号の週刊金曜日に作家、映画監督の森達也が強烈な文章を書いていた。それはこの国の天皇制に対する問題提起であり、体制にあまりにも従順な日本人に対する警鐘である。彼の言葉を断片的に引用させてもらいながら私なりの思いを伝えたい。
「・・・ムッソリーニはパルチザンによって愛人とともに射殺され、その遺体はミラノの広場で逆さ吊りにされ市民たちによって辱められた。自害したと伝えられるヒトラーも、もし遺体が見つかっていたならば、おそらくはベルリンの市民たちに、同様の仕打ちを受けていたであろう。しかし昭和天皇は生きながらえた。それだけではない。皇居広場には大勢の人が集まり、『陛下に申し訳ない』と号泣し、割腹した人も大勢いた。国を破滅に導いた指導者に対してこの圧倒的な差異は日本人の精神性と結びついているのだろうか・・・
もっとも、この国は、アメリカの占領統治に対しても実に整然と従属した。米軍が警戒していたテロや叛乱など、殆ど起きなかった。民族主義を標榜する右翼も率先してGHQの走狗となっていた・・・当たり前のように統治されること。この国はその意識がとても強い。だからこそ歴史を通じて、市民革命は一度も起こらなかった・・・
発布された日本国憲法のいちばん最初の単語は何か。『日本国民』ではない。『朕』である。前文の前に、以下の勅旨が掲げられている、
 朕は、日本国民の総意に基づいて、新日本建設の礎が定まるに至ったことを深く喜び・・・枢密顧問の諮詢および・・・帝国議会の議決を経た帝国憲法の改正を裁可し、ここにこれを公布せしめる・・・
(天皇制とは)憲法が「法の下の平等」の原則に反する例外を認めていることである。人間であることを宣言すると同時に、人間とは異質な存在にならざるを得ないという状況を、皇室は選択せねばならなかった。何のために?生き残るためだ・・・
天皇制は擬似求心力としてのフィクションだった。為政者が統治のためにこのシステムを利用してきたことは、歴史を見れば明らかだ・・・
日本国憲法が施行された時(47年5月)、日本は連合国の占領下にあった。東京裁判が終わったのは48年11月。つまり日本の戦争責任を裁いているその真っ最中に、日本国憲法は『朕』を自称する昭和天皇によって公布され、施行されたのだ。天皇の戦争責任を追及しようとする姿勢など米国にはまったくなかったことがよくわかる・・・天皇制というヒエラルキーは残し、一段高いところに占領軍が位置する統治政策を米国は選んだのだ。
人はこれを国体護持という。ポツダム宣言の受諾が遅れた理由は国体護持の明記がなかったからだといわれている。その間に広島と長崎に原爆が落とされることになった・・・


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