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ポスト小泉選び『国民参加』の本気度
小泉劇場 主役づくり
ポスト小泉を決める九月の自民党総裁選に向けて、同党は「国民参加」の路線を打ち出した。小泉純一郎首相は後継について「国政選挙に勝てる」ことを条件に挙げて国民受けを重視する。総裁選は、過去にも党内の駆け引きや思惑から投票ルールの変更を繰り返してきた。今回、「国民参加」の狙いと本気度とは。
■「政権禅譲」のための方便?
「山口県の自民党員は二万三千人くらいしかいない。党員以外も投票できるようになり、地元の安倍さん(晋三官房長官)に全国から十万票単位で票が入ってくれれば…」
自民党山口県連の関係者は国民参加型の総裁選に期待し、こう本音を漏らす。
後継候補の一人、谷垣禎一財務相の地元、自民党京都府連の幹部は「多くの人の意見を取り入れて選ぶことに反対する人はいない」と認めながらも、「総裁選びのルールが恣意的(しいてき)で、何らかの意図があるとすれば問題だ」と警戒する。
人気投票的な総裁選挙をした場合、好感度ナンバーワンといわれる安倍官房長官が有利なのは否めない。一見、民主的に見える国民参加型の選挙が、実は安倍氏に政権を禅譲するための“方便”に使われるのではないかという懸念を払しょくできないようだ。
さらに、自民党の愛知県連幹部は「党費も払っていない人が投票できることになれば、党員から不満が出てくる」と率直に問題点を述べる。
国民参加型の総裁選を最初にぶち上げたのは武部勤幹事長だった。
昨年十一月二十六日に民放のテレビ番組に出演した同幹事長は、小泉首相の後継を選ぶ党総裁選の方法について「予備選挙をやったらいいと思う。国民が参加する形にしたい」と述べた。
この時点では賛成する声は広がらなかったが、小泉首相自身が今月五日、「国民が参加している実感を持てるよう知恵を出してほしい」と武部幹事長に指示したことから、にわかに現実味を帯びてきた。
現行の総裁公選規程では、党所属国会議員(四百七人)が各一票をもち、都道府県連にも党員・党友数に応じて四−十票(計三百票)が割り当てられる。党員でなければ投票権はなく、この規程を変えるには党大会か両院議員総会での決定が必要となる。
十八日の党大会で決める今年の運動方針案では、総裁公選について「国民が参加意識を実感できるよう、開かれた形で活発な政策論争を展開しなければならない」と国民参加型の路線を示している。もっとも、規程改正は議題にはなく、武部幹事長が模索するのは「模擬総裁選」の実施だ。本選挙に先立ち、総裁にふさわしい人物を国民に呼び掛けて模擬的に選ぶという方式だ。
具体的に検討されているのは、全国で十一ある衆院比例代表のブロックごとに、党員以外の国民が参加できる「模擬投票」を実施することや、一般国民を対象とした世論調査、インターネット投票などだ。
■本番に影響を与える可能性
模擬投票の場合、その結果は総裁選の得票には反映しないが、本投票に先立って実施することで党員や国会議員の投票行動に影響を与える可能性もある。実際に、小泉総裁が誕生した二〇〇一年の総裁選では、先に開票した都道府県レベルの投票で小泉氏が他候補を圧倒し、その後の国会議員による選挙でも地滑り的勝利を収めたのは記憶に新しい。
「国民参加」路線は人気投票的な要素が強まるだけに、自民党内には批判がくすぶる。
山崎拓前副総裁は「党員でない者が(総裁を)選んだらおかしい。総裁選に国民投票的な要素を入れるということは、首相公選の考え方だが、自民党の憲法改正論議の中では、首相公選論を排した」と批判する。加藤紘一元幹事長も「一般国民投票、世論調査でやるなら、国会議員や党員はいらない」と同調した。
■「地方には全く話きていない」
地方の自民党員は戸惑いも見せる。同党広島県連関係者は「国民参加は党の中央で話題になっているだけで、地方には話が全くきていない」と説明。十六日には各都道府県の党幹事長らが集まる連絡協議会があり、地方で総裁選について議論が始まるのは、その後からとみる。
これまで二十一回実施されている自民党総裁選は、どのようなルールだったのか。
過去三回をみると、一九九九年は党員・党友(当時二百九十一万人)の一万人分を国会議員一票分に換算した。小泉首相が誕生した〇一年の特徴は、ほとんどの都道府県で党員票の一位候補が各地の割り当て票を全部とる「総取り式」を採用したことだ。圧倒的な地方票を獲得した小泉首相が、その後の国会議員による投票での圧勝につなげた。
小泉首相の続投を決めた〇三年の総裁選では、地方票は候補者の得票に応じて票を配分する「ドント式」に統一し、国会議員の投票と同時に開票した。
このように、過去の総裁選ではルールをたびたび変更し、候補者それぞれには有利、不利に働いてきた。それでも、党員以外の国民に参加を呼びかけるという方式はなかった。
■「安倍氏選出を不動のものに」
武部幹事長らが、ここにきて「国民参加」を言い出したのはなぜか。
政治評論家の小林吉弥氏は「昨年九月の総選挙で圧勝した小泉人気に便乗して総裁選に国民の関心を引きつけ、高い支持率を維持させたい思惑もある」と述べて、国民やメディアが注目した「小泉劇場」の再現が頭にあると説明する。そのうえで「より直接的には、偉大なイエスマンを自称する武部さんが、小泉首相の意向に沿って、次期総裁候補として国民的な人気の高い安倍官房長官の選出を不動のものにしたいという動機だ」と推測する。
■『最初から結論ありき』
政治評論家の森田実氏は「初めに結論ありきだ。安倍氏にあるのは人気だけで、人気で安倍氏を選びたいという自民党へのメッセージだろう。人気以外で勝る福田康夫氏(前官房長官)にだけはしたくないということだ」と分析する。
さらに「自民党の総裁を選ぶのに、党員以外を参加させるのは政党論としてもナンセンスで間違い」と指摘、「国民参加」の総裁選の意味に疑問を投げ掛ける。
「国民参加」の総裁選を標榜(ひょうぼう)する一方、小泉首相は靖国問題の争点化を否定した。与党でも公明党の神崎代表が十一日、「次の首相は靖国神社を参拝すべきではない」と強調するなど、アジア外交の打開がからんだ世論の関心事だ。前出の小林氏は「これが争点になると(参拝の意思がある)安倍氏が不利となるための争点隠しで、開かれた総裁選に逆行する」と批判する。
小泉首相の意向が左右しがちな総裁選に対して、明治大学名誉教授の岡野加穂留氏(比較政治学)は「首相が辞めるならば、靖国問題をはじめ、何のしばりもつけず、黙って辞めろといいたい」と引き際に注文をつけて、こう強調する。
「後継選びを思うように進めたいという本心を隠して、総裁選というショーを国民に見せるのは、鮮やかに人をだます流行のテーブルマジックと同じだ」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20060113/mng_____tokuho__000.shtml
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