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不払い128万件 受信料裁判あるの
経費流用問題などを契機に燎原(りょうげん)の火のごとく広がったNHK受信料の支払い拒否。昨年来、NHK側は法的手段に訴える考えを強調し始めたが、「裁判も辞さず」との姿勢を強める視聴者も少なくない。今年は全国各地で“受信料問題の法廷闘争”が繰り広げられる可能性も高いという。裁判で最大の争点となるのは、いったい何か。 (市川隆太)
NHK広報局によると、受信料の支払い拒否・保留件数は昨年十一月末時点で、前期(八−九月)比約一万四千件増の約百二十八万件にのぼった。「拒否・保留」という表現だが、要は不払いだ。ただ、一昨年九月末(不払い約三万一千件)から始まり、二カ月あたり二十万−三十万件で増えてきた“伸び”はペースダウン。約八万一千件の支払い再開もあったといい、NHKは「信頼回復に努めたことでNHKに理解を深めていただいたと受け止めている」(橋本元一会長)と自信をのぞかせている。
新規受信契約者には韓国美人女優らのカレンダーをプレゼント−こんなキャンペーンをホームページで大々的に宣伝するなど、視聴者心理をくすぐる作戦にも余念がない。
しかし、新年度からは、よりハードに、不払い者に対する「簡易裁判所を通じた支払い督促」に踏み切る可能性が強い。橋本会長も昨年十二月、本紙放送芸能部のインタビューに対し、「督促を実行できる体制整備を(二〇〇六−〇八年度の経営再建計画に)盛り込む」と明言した。
NHKの申し立てを受け、簡易裁判所が支払い督促を発した場合、視聴者側が二週間以内に異議申し立てすると、支払い督促の効力がなくなり、正式な裁判で争うことになる。異議申し立てしなかった場合は、NHKは受信料を強制執行できる。
NHKは「支払いを求める額に応じて手数料や郵便切手が必要となる。請求額十万円以下の場合、手数料五百円・郵便切手千二百円の計千七百円程度が必要と試算している。視聴者の異議申し立てにより訴訟となる場合は、追加の手数料五百円・郵便切手六千円程度がさらに必要となる」(広報局)としている。
このようにコストをかけた背水の陣だが、不払い者たちがあっさり応じる気配はない。まず、NHKプロデューサーだった磯野克巳被告による番組制作費詐取事件の影響が大きい。詐欺罪で起訴された磯野被告は昨年九月の公判で「プール金をつくるためだった。デスク以上は誰でも(プール金の存在を)知っていた」と述べている(NHKは否定)。
さらに「ETV2001 戦争をどう裁くか」という番組のデスクだった長井暁チーフプロデューサーが内部告発した“NHKへの政界圧力問題”について、NHKが「政治家への番組内容の事前説明は通常業務である」(のちになって訂正)としたことへの反発もある。
元情報通信審議会委員の醍醐聡東大大学院教授(財務会計論)など大学教員、市民二百三十一人でつくる「NHK受信料支払い停止運動の会」も、政界圧力問題が結成のきっかけだった。
醍醐教授は「(政治家への)事前説明が通常業務と言ったNHKは“自主独立、不偏不党の放送”ということに抵触している」と批判する。
支払い督促という“伝家の宝刀”もコストがかかるため、醍醐教授は“竹光”にすぎないとみている。「実行には踏み切れないはずだ。牽制(けんせい)すれば支払いが増えると思っているのではないか。督促をやるとしても一、二例の長期滞納者に対してだろう」
しかし、仮に支払い督促された場合は「異議申し立てを行い、即座に裁判に移行する」と言う。「裁判は債務者のいる場所で開かれるから、NHKの担当者は日本中を回らなければならなくなるだろう」
全国で受信料裁判が起きる異例の事態に発展したとすれば、なにが論点になるのだろうか。
醍醐教授は放送法三二条の解釈をめぐる「視聴者とNHKの契約内容」を争点に立てる考えだ。
放送法三二条は受信設備設置者にNHKとの契約を義務づけているが、醍醐教授は「受信料の支払いは、日本放送協会放送受信規約五条に書かれているにすぎない。放送法は受信料支払いでなく、受信契約を義務づけているだけだ」と言う。そのうえで“受信料支払い”と“公正な番組の放送”は「双務契約の関係にある」と指摘する。
話が難しくなってきたが双務契約とは何だろう。商店でジャムパンを百円で買ったが、あとで見たらクリームパンだった−こんな場合、客は「ジャムパンください、と言ったのに、店が間違えた」と不満になる。商店には“ジャムパンを渡す債務”が、客には“百円を払う債務”があると考えるのが筋だろう。こういう双方に債務がある契約を双務契約という。
商店が債務を果たさなかった(債務不履行)のに、客だけ債務(百円)を果たすのは、あまりに酷だということで、民法上も、双務契約には「当事者の片方が債務を履行するまで、相手は自分の債務履行を拒否できる」という同時履行の抗弁権がある。「ジャムパンをくれるまで、百円払いません」と主張できるそうだ。
醍醐教授は、視聴者は客、NHKは商店にあたり、受信料問題も双務契約にすぎない、としたうえで、「NHKには“何人の干渉も受けずに不偏不党の放送を行うこと”などの債務がある」と主張する。同時に「私たちは他の不払い運動とは違い、NHKが正しい姿に戻ったら、過去にさかのぼって支払う」と話す。
▽“NHKの憲法”ともいえる「NHK倫理・行動憲章」に、政治家らへの事前説明をしないと明記すること▽検証番組などの形で番組の政治介入の真相を明らかにすること−が支払い再開の条件だという。
ジャムパン(干渉を受けない不偏不党な放送)をくれるというから料金(受信料)を払ったのに、中身がクリームパン(政治家に事前説明するような放送)だったから、ジャムパンに変えてくれるまでは払いたくない−というわけだ。
これに対し、NHK広報局は「反論は控えたい」としつつも「一九六四年の臨時放送法制調査会(郵政相の諮問機関)答申では『受信料はNHKの業務を行うための費用の一種の国民的な負担であって…国家機関ではない独特の法人として設けられたNHKに徴収権が認められたところの、その維持運営のための特殊な負担金と解すべき』との考え方が示されている」と説明する。双務契約ではないと言いたげだ。
裁判は▽受信料支払いは法律上の義務なのか▽それとも双務契約なのか▽双務契約だとしたら、NHKに視聴者への債務不履行があったか、などがポイントになりそうだ。
政治家への事前説明問題に関する「こちら特報部」の質問に、NHKからは「うかがいを立てるような形での説明はしていないし、これからもしないということです」と、なんとも含蓄のある回答が返ってきた。
「受信料不払いの急増以降、うちの幹部は『政界批判もしなければ、まずい』と言い始めました」。あるNHKベテラン記者は、こう苦笑しているのだが−。
<メモ>放送法32条 協会(NHK)の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備またはラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であって、テレビジョン放送および多重放送に該当しないものをいう)もしくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。
日本放送協会放送受信規約5条 放送受信契約者は受信機の設置の月からその廃止の届け出のあった月の前月まで、放送受信契約につき、種別および支払い区分に従い放送受信料を支払わなければならない。
民法533条 双務契約当事者の一方は相手方がその債務の履行を提供するまでは自己の債務の履行を拒むことを得。ただし相手方の債務が弁済期にあらざるときは、この限りにあらず。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20060110/mng_____tokuho__000.shtml
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