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強殺容疑の米兵引き渡し
地元配慮の政治的判断
神奈川県の米海軍横須賀基地所属の米兵ウィリアム・リース容疑者(21)による強盗殺人事件。不平等の批判を浴びる日米地位協定の改定要望をかわすように七日、同容疑者の身柄は“迅速”に日本側へ引き渡された。基地負担に反発する地元感情への配慮や、地位協定の運用改善の成果を誇示するような姿勢がかいま見える。 (横須賀支局・斎藤裕仁、横浜支局・原昌志)
「日本の警察が、事件発生から三日目(実際には四日目)に米軍基地内に立ち入り、捜査を行うことは、他の地域ではできない。米軍の代理人が取り調べに立ち会うのは初めてのことであり、画期的なことです」
横須賀市役所で前日、「ごめんなさい」と日本語で蒲谷亮一市長に陳謝した在日米海軍司令官のジェームス・ケリー少将。日本の捜査当局への協力ぶりを強調した言葉には、地元の市民感情を損ねないよう配慮した思いがにじみ出ていた。
ラムズフェルド米国防長官の決裁を経てリース容疑者を神奈川県警に引き渡したのは、事件発生から五日目だった。
在日米軍がこのように迅速に捜査に協力するのは、異例のことだ。背景には、〇八年の横須賀基地への原子力空母「ジョージ・ワシントン」配備計画がある。市民団体の反対運動が起きている「この難しい時期」(在日米軍関係者)に市民感情をこじらせたくないという“政治的判断”が働いたように見える。
空母機動部隊を率いる第七艦隊司令官のジョナサン・グリナート中将も「横須賀市民との良好な関係が悪化しないように事件を二度と起こさないために全力を尽くしたい」と深々と頭を下げた。
両司令官は、松沢成文知事も訪問して陳謝した。同県内にあるキャンプ座間への米陸軍第一軍団司令部の改編移転など、米軍再編問題への悪影響も避けたいとの思惑も見え隠れする。
蒲谷市長は、再発防止の徹底に加え、被害者の遺族補償に万全を尽くすよう強く要請したが、両司令官から回答はなかった。賠償能力がない若い米兵が引き起こした犯罪の被害者が、泣き寝入りさせられるケースも少なくない。真の解決には補償制度の確立も急務だ。
今回のケースは、政府が強調する「運用改善」の好例ともとれる結果になった。しかし根本的な問題は残ったままだ。
日米地位協定では、米側が容疑者を確保している場合は、日本側が起訴するまで、原則的に身柄は日本側に引き渡されない。一九九五年の沖縄での少女暴行事件をきっかけに運用が見直され、殺人や強姦(ごうかん)といった凶悪犯罪は起訴前の引き渡しができるようになり、今回もそれが適用された。
ただ、あくまで米側の「好意的考慮」に基づく対応で、引き渡しの可否は米側の判断に委ねられる。このため在日米軍基地を抱える十四都道県でつくる渉外関係主要都道県知事連絡協議会(会長・松沢知事)は「米国に最終決定権を留保した合意内容は不十分」とし、政府に原則的にすべての事件で引き渡すよう地位協定の改定を求めている。
地位協定問題に詳しい本間浩・法政大教授(国際法)は「米国は自国では犯罪者の人権擁護が進んでおり、他国は遅れていると考えている。改定は、実際は非常に難しい」としつつ、「運用は行政の判断であり、法を根拠にしていない。仮に起訴前引き渡しが米国憲法に違反すると訴える容疑者が出たら、対抗できるのか。その恐れがあれば、米側が日本側に『好意』を払わない可能性は常にある。改定で明文化が必要だ」と運用に頼る現状を懸念する。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20060108/mng_____kakushin000.shtml
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