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[米兵女性殺害] 「沖縄タイムス」社説'06/01/07
地位協定の壁を払え
不平等性の放置は疑問
政府はこの期に及んでも日米地位協定の運用の改善で対応しようと考えているのだろうか。
神奈川県横須賀市で三日、派遣会社員佐藤好重さんが米海軍横須賀基地を母港とする空母キティホークの乗員に暴行を受けて殺害された。昨年暮れには、東京都八王子市で米海軍厚木基地所属の水兵がワゴン車で男児三人をはね重軽傷を負わせたひき逃げ事故もあった。
女性を殺害した乗員の身柄は米軍側にある。ひき逃げ事故でも、在日米海軍司令部が、公務中を理由に身柄を日本側に引き渡さない方針を決めたという。またしても地位協定の壁である。
基地の外にある公道で子供たちをはね、「気が動転して逃げた」ことを認めている犯人を日本側で身柄を拘束し、取り調べできないというのは協定の欠陥であり、異常というしかない。
小泉純一郎首相は女性殺害事件について「遺憾だ」といい、「米軍も規律の保持に厳正に取り組んでほしいと思う」と述べた。だが、事は深刻であり、「遺憾」で済む問題ではない。
地位協定改定に対する「今の段階では考えていません。信頼関係に基づき、事案ごとに(日米で)話し合って解決していきたい」という見解も、到底納得できない。
地位協定は一九九五年に県内で起こった米兵暴行事件を機に(1)殺人、強姦など「凶悪な犯罪」については起訴前の引き渡しに米国が「好意的考慮を払う」(2)米国は「その他の特定の場合」についても、日本側からの身柄引き渡し要請を「十分に考慮する」―と運用の改善で合意した。
だが、基地あるがゆえに発生した事件や事故にもかかわらず、加害者の側が「好意的考慮」を払うというのはどういうことか。本末転倒であり、「特定の場合」の意味も明確ではない。
この条項で国民を守れないのは、過去の事例からも明らかだ。沖国大のヘリ墜落事故でも県警の捜査権が事実上無視されたことを忘れてはなるまい。
沖縄をはじめ基地所在地の住民が持っている不信感は、運用面での不平等さを放置していることにあり、米軍に対する政府の対応の弱さにあることを認識しなければなるまい。
根源には軍隊の暴力性
横須賀市での女性殺害について平和団体「非核市民宣言運動・ヨコスカ」の広沢努さんは「綱紀粛正に向け、米軍サイドは、さまざまな工夫を凝らしてきたと思うが、凶悪事件がなくならないのは、結局軍隊の閉鎖性や暴力性にある」(神奈川新聞)と述べている。
沖縄では九五年以降、二〇〇五年十一月までに殺人、強姦、放火、強盗の凶悪犯罪で五十二人(三十四件)が摘発されている。
窃盗や暴行事件などを含めるとその数は相当なものになるはずだ。
事件が発覚する度に米軍は「良き隣人政策」を強調し、綱紀粛正を打ち出すが、その欺瞞性については米軍自らが知り尽くしているのではないか。
個人主義を尊重する米側のスタンスは、基地の外での行動は「兵士個人の問題」に帰するとしているからだ。
だが、駐留する他国民の人権をないがしろにしてまで犯罪を犯した兵士を守ろうとする姿勢は、世界に向かって基本的人権の擁護を訴える民主主義国家の恥といわねばなるまい。
米兵による事件・事故は基地がなければ起こりえず、発生においては米軍も責任が免れないことをもう一度厳しく指摘しておきたい。
主権国家らしい対応を
基地・軍隊を許さない行動する女たちの会の高里鈴代共同代表は「地域の安全に対する問題が、地位協定の特権で放置されている」と話す。
その上で「住民は基地内で事件を起こさないが、米兵は基地の内外で安全に保護され基地の外に出て事件を起こす」と、協定に孕む矛盾を指摘する。
厳然としてある矛盾を改善できなければ、地域住民の安全が脅かされ続けるのは言うまでもない。だからこそ抜本的な見直しが必要なのである。
基地を受け入れている以上、政府は米兵による事件・事故が基地外で発生した場合、公務であるか否かにかかわらず日本の法律で対処できるようにすることが、国民を守るべき主権国家としての責務だ。
政府はこの機を逃してはならず、米兵の犯罪抑止には地位協定を根本から変えていくことこそ手だてだということを肝に銘じてもらいたい。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20060107.html#no_1
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