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揺れる日米中:小泉外交・光と影/1(その1)
米国、「遊就館」を注視
◇皇国史観、靖国不信広がる
「中国、韓国以外に靖国参拝を批判する国はありません」。先週の参院代表質問で靖国神社参拝について聞かれた小泉純一郎首相は、そう答えた。公式声明を見る限りではその通りだろう。だが、内実は違う。旧敵国であり、今は同盟国である米国の内部に微妙な変化が生まれている。靖国神社に併設されている戦争博物館の、第二次大戦に至るルーズベルト政権の対日政策や米軍主導の戦犯裁判を批判する展示や映画の強調が、米国を身構えさせている。
「yushukan(ユーシューカン)」を話題にしたのは米共和党穏健派の重鎮で、昨年2月まで駐日大使を務めたハワード・ベーカー氏だった。
「あれでは日本が戦争に勝ったみたいだ」
離任に先立って自民党の有力議員を訪ね、日中問題について意見交換した時のこと。ベーカー大使は苦笑を交えて不満を伝えた。
靖国神社が創建130年記念事業の一環として戦争博物館「遊就館」の大改修を終えたのは02年7月。改修後は皇国史観が一段と強調された。日米開戦は資源禁輸で日本を追いつめた米国による強要であり、日本は「自存自衛」と「白人優越世界打破」のために立ち上がったという歴史観が整然と示された。売店には日本の戦争責任を問い続ける中国を逆批判する書籍類が平積みされ、政治性を強めた。当時既に80歳に迫っていたべーカー氏は自ら足を運び、確かめたのだ。
旧日本軍による真珠湾攻撃から64年にあたる昨年12月7日(日本時間8日)。犠牲者を悼む半旗が掲げられたワシントンで、米国のアジア問題専門家たちが訪米中の前原誠司・民主党代表を招き、朝食会を開いた。
日中両国のナショナリズムが話題になったこの席で、昨年1月までブッシュ政権の東アジア外交担当官だったジム・ケリー前国務次官補が「靖国神社参拝によって、日本の首相がyushukanの考え方を肯定していると受け取られないか」という懸念を表明した。
遊就館を知らないという知日派外交官は、まずいない。東京勤務が長かった古株の一人は今月中旬、匿名を条件にワシントンで毎日新聞の取材に応じ、こう語った。
「日中間に歴史解釈の違いがあるというだけの話なら米国は無視するが、yushukanは無視できない。真実を語っているとは思えない。首相が戦没者に敬意を払うのはいいが、問題はyushukanとのかかわりだ」
ポール・ジアラ元国防総省日本部長も遊就館の展示に対する不満を記者にぶつけた。
「第二次大戦が他国の過失によるという印象を受けるどころか、日本の戦争が正しいとさえ思わせる高慢な内容だ」
ジアラ氏は「outrageous(常軌を逸している)」という表現を用いて首相の靖国参拝を批判、「日本の孤立化を招き、ひいては同盟国アメリカまでアジアから孤立する」とつけ加えた。
ブッシュ大統領自身は靖国参拝を批判していない。だが、足元の官僚や政治家の間で不満が広がっている。日米同盟が根底から揺らぐわけではないが、以前は「日本の問題」として発言を控えていた人々が不満を隠さなくなった。この傾向は、昨年10月17日の小泉首相の秋季例大祭参拝直後から目立ち始めている。<2面につづく>(次回から2面に掲載)
毎日新聞 2006年1月30日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/china/news/20060130ddm001030019000c.html
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