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秋田小1殺害 なぜ起きる母親の事件 【東京新聞】
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投稿者 愚民党 日時 2006 年 6 月 07 日 06:35:17: ogcGl0q1DMbpk
 

秋田小1殺害 なぜ起きる母親の事件

 娘が水死した母親が、子どもと仲良しだった男児の死体を遺棄した疑いで逮捕されるという前代未聞の展開をみせた秋田県の小一男児殺害事件。少子化の中、子育てする親同士が親しくなるケースは多いが、近年、親しいがゆえに子どもが犠牲になる犯罪も起きている。“子どもつながり”の母親の事件はなぜ起きるのか。 (浅井正智、竹内洋一)

 ■28世帯の団地 祭りも不参加

 「こういう小さな町で母子家庭だと周囲の目が気になる。だから自分からほかの人と交わろうとはしなかったのでは。団地の中でも孤立していた」

 今年四月十日、秋田県藤里町で町立藤里小四年の畠山彩香ちゃん(9つ)が水死体で発見された。その後、五月十八日、他殺体で見つかった同小一年米山豪憲君(7つ)の事件に関与したとして、死体遺棄容疑で逮捕されたのが、彩香ちゃんの母鈴香容疑者(33)だったという衝撃的な一報から一夜明けた五日、地元の主婦(45)はこう口を開いた。

 畠山容疑者は秋田県二ツ井町(現能代市)に生まれ、高校卒業後、栃木県内のホテルで二年間勤務した。結婚したものの彩香ちゃんが生まれた半年後に離婚。職を転々としていたが、彩香ちゃんが小学校に上がる直前に仕事はやめ、生活保護に頼っていたという。

 畠山容疑者の少女時代を知るという男性(67)は「感情の波が大きく、高校生のころから友だちはいなかった」と明かす。

 畠山容疑者を孤立に追い込んだのは、自身の性格だけでなく、住んでいた新興団地が持つ特異性もそれに輪を掛けたようだ。

 畠山容疑者が住む朝日ケ丘団地は、藤里町が過疎対策のために一九九四−九七年に開発した町営住宅。二十八世帯のうち、米山、畠山両家を含む十世帯が町外から転入してきた。

 「自治会に入るよう呼びかけても聞いてもらえないし、地元の秋祭りや運動会にも出てこない。あの団地は農村の中にある『都会』みたいなものだ」と旧来の住宅地に住む男性(69)は話す。

 ■娘写ったビデオ渡され逆ギレも

 そんな中で豪憲君の一家は、畠山容疑者、彩香ちゃんと親しく付き合っていた数少ない存在だった。

 彩香ちゃんは豪憲君の兄と同級生。豪憲君も一緒になって遊んでいた。母親同士も仲がよかったという。新興団地で、子ども同士のつながりをきっかけに大人が親しくなるという、都会と全く同じ構図がここにある。

 彩香ちゃんの四十九日法要の後、報道陣の質問に答えた畠山容疑者は「(豪憲君の)お父さんもお兄さんも彩香と遊んでくれた。恨まれる人たちではない」と語った。

 ならば、なぜ畠山容疑者は最も親しい一家に対して、容疑をかけられるようなまねをしたのか。

 彩香ちゃんの死後、豪憲君の母親から彩香ちゃんが写ったビデオを渡され“逆ギレ”した容疑者の姿も目撃されている。

 今、地元では朝の町に「おはよう」という子どもたちの元気な声はどこからも響いてこない。彩香ちゃんが四月に水死体で発見されてから、藤里小では集団登下校が行われ、さらに豪憲君殺害後は、保護者による車での送迎になったためだ。親や先生から禁じられているのだろう、子どもたちが放課後に外で遊ぶ光景も消えた。

 前出の男性は力無くつぶやいた。「死んだ町になってしまった」

 ■文京の事件では動機語らぬまま

 母親が自分の子どもの同級生や友だちを“手にかけた”ケースとしては、九九年十一月、東京都文京区の女児殺害事件がある。山田みつ子受刑者=懲役十五年が確定=は、息子と同じ幼稚園に通っていた男児の妹=当時(2つ)=を幼稚園から連れ出し、首を絞めて殺害。静岡県の実家の裏庭に遺体を埋めた。

 山田受刑者は逮捕された当初、「親同士の心のぶつかり合いがあった」「子育てで悩んでいたのに、夫は真剣に相談に乗ってくれなかった」などと供述。ただ、公判では「どうして殺意を持ってしまったのか。自分でも分からない」と繰り返し、詳しい動機を語ることはなかった。

 今年二月には、滋賀県長浜市で、男女の幼稚園児二人が友だちの母親に刺殺される事件が起きた。同じ幼稚園に長女が通っていた中国籍の無職鄭永善被告は、乗用車で二人を幼稚園に送っていた際に、車を路上で止め刺し殺したとされる。

 鄭被告は知人に「(保護者の)仲間に入れてもらえない」と悩みを打ち明けていたことがあった。県警の調べに対しては、「(長女が)なじめないのは周りの子が悪い。このままでは自分の子が駄目になってしまうので殺した」「特定の子を狙ったわけではない」などと供述。だが、幼稚園内でのトラブルは確認されていなかったという。

 ■一方的な劣位妄想性障害か

 秋田県警は豪憲君殺害についても畠山容疑者の関与を追及する方針だが、どんな動機が考えられるのか。

 精神科医の斎藤学氏は「畠山容疑者は娘の死に『人の手が加わっている』と主張していた。すると、よく一緒に遊んでいた豪憲君がかかわっていたのではないかと、最初から目を付けていた可能性がある。さらに豪憲君の家庭に対して一方的に劣位を感じ、すべてを悪意に受け取ってしまう妄想性障害もあったのではないか。その点で文京区の事件と似ている側面がある」と分析する。

 福島章・上智大学名誉教授(犯罪心理学)は「彩香ちゃんが事故死だったと仮定すると、突然自分の娘を失い精神的に不安定な状態になった。外を見れば娘と一緒に遊んでいた豪憲君が元気に学校に通っている。なぜ自分の娘だけが、というねたみの感情が生じ、それが不安定な精神状態の中で憎しみに変わったのではないか」と推測する。

 子育てを経験した母親が他の子どもに敵意を向ける可能性について、福島氏は「子を産み育てるのは、母性のプラスの面だが、虐待などのマイナス面もある。普段は抑えられているが、精神的に不安定な状態になると、マイナス面が現れる」と指摘する。

 「子どもの虐待防止センター」理事長で小児科医の坂井聖二氏は「畠山容疑者が亡くなった彩香ちゃんをきちんと養育していなかったのは、小学校が民生委員に通報したということから見ても明らか。そのことで地域社会から冷たい目で見られ、それに対する復讐(ふくしゅう)の思いが、衝動的に豪憲君に向けられたのではないか」との見方を示す。

 「窒息する母親たち−春奈ちゃん事件の心理ファイル」の著書がある臨床心理士の矢幡洋氏は「文京区と長浜市の加害者は、ささいなことをきまじめに考えすぎて被害妄想になった側面があったが、今回はそれとはまったく違う。報道されている畠山容疑者の生活ぶりを見る限り、反社会性人格障害といっていい」と強調する。この障害は、無責任さや良心の欠如、さらに人をだますなど犯罪者によくみられる人格障害とされる。

 矢幡氏はこう推測する。「自分の娘の死に関して、豪憲君に何らかの責任があるという憎悪をため込み、発作的、衝動的な行動に出たのではないか」

 畠山容疑者の“心の闇”の追及はまだ始まったばかりだ。

 <デスクメモ>
 警視庁担当時代、文京区の女児殺人事件を取材した。春奈ちゃんは大好きなプーさんのマフラーで首を絞められた。豪憲君はどんな苦しみで亡くなったのか。秋田というと「釣りキチ三平」の舞台というイメージしかなかったが、自然豊かな土地で、どうして鬼の所業が起きたのか。真相究明を見守りたい。 (蒲)


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20060606/mng_____tokuho__000.shtml

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