★阿修羅♪ > ニュース情報3 > 152.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
(回答先: 「トロフィーに触れたい」 伊、仏の主力選手が会見 [共同通信] 投稿者 white 日時 2006 年 7 月 08 日 00:42:51)
□フランス優勝の鍵――ジダン/後藤健生
http://wc2006.yahoo.co.jp/voice/nation/goto/at00009841.html
フランス優勝の鍵――ジダン
■天才的ボールタッチは健在
僕は、ワールドカップ(W杯)開幕約2週間前の5月26日にヨーロッパに入った。各地で行われる準備試合を見るためだ。その最初の試合が、同27日にサンドゥニで行われたフランス対メキシコ戦だった。
この試合、ヴィエラとマケレレは相変わらず素晴らしかったが、ジダンの動きは悪く、リベリも途中出場したもののまったく噛み合わず、とてもフランスが優勝候補とは思えなかった。実際、W杯に入ってからもフランスはもたついていたが、スペイン戦あたりからジダンの調子も急に上向いてきて、とうとう決勝にまでこぎつけた。
すでに現役引退を表明していたジダンだが、動きさえ良くなれば、天才的ボールタッチは健在だ。3人くらいに囲まれても平気なのだ。
ポルトガルとの準決勝の前半23分、アンリから戻されたパスを受けたジダンが、ちょっと前かがみになった姿勢でボールを足元で保持し、左サイドバックのアビダルが上がってくるのを1テンポ半ほど待って、正確にアビダルの走る速度に合わせて、プレーしやすいグラウンダーのボールを出したあたりに、僕はその真骨頂を見た。
同じく、ポルトガル戦の27分。リベリが右サイドをドリブルで持ち上がり、やや後方に上がって来たジダンにパスを送った場面があったが、リベリのパスがちょっと後方にずれてしまった。普通の選手だったら、いったんストップして、パスを受けてから、すぐに動き直して攻撃につなげたことだろう。
だが、ジダンは、この自分の体の後方に来たボールを、半身になって後ろの足でコントロールして引き寄せ、そのまま体を半回転させてドリブルに移った。つまり、半身になってボールをタッチしている間も、自分の体の中心(重心)は止まることなく、前へと移動を続けていたのだ。じつに、スムースな動きだった。
いったん立ち止まってしまえば、コンマ数秒でも攻めのスピードは落ちることになるのだ(この場面は、直後にジダンが倒された。判定はノーファウルだった)。
■PKに見たジダンの頭の良さ
ジダンの頭の良さを見たのは、33分のPKのときだった。
ポルトガルのGKリカルドは、PK阻止の名手だ。準々決勝のイングランド戦では、PK戦で4本のうち3本をセーブしている(ハーグリーヴスに決められた1本も、きちんと反応していた)。しかも、リカルドは、ヤマを張って、どちらかに飛ぶタイプのGKではない。相手の動きを見て、シュートコースを読んで、反応しているのだ。
そこで、ジダンはほとんど助走を取らず、ワンステップで、しかも、鋭く、速い振りでシュートした。リカルドにコースを読まれないための工夫だったのだろう。そして、キックされたボールは速く、正確に右下に突き刺さった(しかし、リカルドはそれでもきちんと反応しており、ボールは指先をかすめた)。
見ごたえのある、PKでの攻防だった。
ちなみに、イングランドの選手は、PKを蹴るときにこうした工夫が足りず、「自分の得意のコースに蹴っておけばいい」と思っているようだが、それが、イングランドがPK戦に弱い原因のひとつでもある。
■決勝戦はイタリア優位
さて、フランスの決勝での相手はイタリアだ。イタリアがメンバーを変えたりしなければ、ジダンはガットゥーゾのマークを受けることになる。ガットゥーゾにとっても、ジダンをストップさせることは大きな見せ場となるはずだ。
決勝は、イタリア優勢と言っていい。たとえば、イタリアの右サイド(カモラネージ+ザンブロッタ)はフランスの左サイドに勝てるだろうし、その他、どこのマッチアップを見ても、イタリア優位。フランスが互角に戦うためには、ピルロからのパス展開を止めること。そして、ジダンがガットゥーゾのマークをかいくぐって、攻撃をリードすることの2つが必要条件となる。
(メディアアトリエ)
後藤健生(ごとう・たけお)
1952年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。1964年の東京オリンピック以来のサッカー観戦歴は、生涯観戦試合数が約3500試合、ワールドカップは74年西ドイツ大会以来現地で観戦している。「CLからユース・大学まで"なんでも生観戦"!」がモットー。2006年はドイツ開催だけに、32年ぶりに原点に戻る大会となる。著書に「決定版・世界サッカー紀行2006」(文春文庫)、「日本サッカー史・代表篇」(双葉社)など。