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□120分間の戦い――最後の2分に泣いたドイツ
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120分間の戦い――最後の2分に泣いたドイツ
4度目のワールドカップ(W杯)優勝の夢が消え去り、ドイツは悲しみに沈んでいる。
7月4日(日本時間5日)、ドルトムントで行われたイタリアとの伝統の対決は、延長戦までもつれる激闘の末、残り1分となったところからイタリアが立て続けに2ゴールを決め、2−0でドイツを降した。W杯準決勝でドイツが敗れたのは、1934年、1958年、1970年に続く4度目となる。
「ベルンの奇跡」から52年、ドルトムントの国際試合では負け知らずだったドイツだが、この日の敗北によって今大会での快進撃に終止符を打ち、あとは8日の3位決定戦でポルトガルと対戦するのみとなった。W杯では5回目となるイタリアとの対戦で勝利を収めることはできなかったが、スタジアムには熱狂するドイツサポーターの「ドイチュラント、ドイチュラント(ドイツ、ドイツ)!」の声援が響き、控室に帰るドイツの選手たちを見送った。
イタリアは延長後半14分にファビオ・グロッソ、さらに16分にアレッサンドロ・デル・ピエーロがゴールを決め、ドイツの希望を打ち砕いた。6度目のW杯決勝進出となる“アズーリ”は9日、ベルリンで優勝をかけてフランスと対戦する。
■予想を覆したドイツの活躍
思いがけない敗退による落胆はつきないが、思い返してほしい。今大会が始まる前、いったいだれがドイツ代表の躍進を信じていたというのか――とんでもない楽観主義者だけだったはずだ。しかし、ドイツ代表が勝ち進むにつれ、ユルゲン・クリンスマン監督とその一風変わった手法に対する批判はぴたりと消えた。ドイツに住もうがカリフォルニアに住もうが、とやかく言う者はいなくなった。クリンスマンが連れてきたアメリカ人フィットネスコーチの役割が疑問視されることもなくなった。ドイツほどフィジカル面でベストな状態を保ったチームはほとんどなかったのである。
「僕らはこのチームを誇りに思う。若い選手が多いけど、おたがいに敬意を払っている」とミロスラフ・クローゼは言う。クローゼは攻撃では期待されたような働きができず、5得点しただけにとどまったが、今大会のベストプレーヤーの1人であることは間違いない。フィリップ・ラームは「終了間際で点をとられたのは本当に悔しい。言葉で言い表しようがないよ」と、肩を落とした。
これと対照的に肩の荷が下りたのが、イタリアのマルチェロ・リッピ監督だった。「あの2本のおかげでPK戦をせずにすんだよ」
■チームワーク対チームワーク
グループリーグのポーランド戦(1−0)で勝利して以来、3週間ぶりにドルトムントに戻ったドイツは、これまで経験したことのないほどの熱狂の嵐に迎えられた。ドイツとイタリアの両チームの緊張が解けるには、試合開始から15分ほどが必要だった。やがてイタリアはジャンルカ・ザンブロッタとマルロ・カモラネージが両サイドで攻撃に加わるようになり、その危険性をいよいよ増していった。もっとも、司令塔アンドレア・ピルロにコントロールされるイタリア代表の場合、普通の状況であってもドイツのセンターバックは気を緩めることができなかったのであるが。
4日前の6月30日(日本時間7月1日)、ドイツは30度近い気温の中でW杯制覇3回を誇るアルゼンチンと2時間にわたる死闘を演じた。この試合の後、彼らはいかに今大会を通じて団結を強めてきたかを強調していた。しかし一方のイタリアも、我慢のゲームが続くなか、熱狂的なドイツサポーターの影響を受けることもなく、後半に入ってドイツが果敢にゴールを狙うようになっても、円熟のチームワークを発揮していた。
ドイツ先制の最大のチャンスは前半34分だった。クローゼからのスルーパスをペナルティエリア右の格好のポジションで受けたベルント・シュナイダーが、ジャンルイジ・ブッフォンが守るゴールめがけてシュートしたが、ゴール上に外れてしまった。後半18分には、ルーカス・ポドルスキーがイタリアDFを背負いながらのシュートするが、またもブッフォンに阻まれ、さらにそのこぼれ球をアルネ・フリードリヒがシュートしたが、むなしくゴールの上を通過していった。
通算出場70回を数える国際試合において、つねに中盤の要を務めてきたミヒャエル・バラックだったが、この日は違った。アルゼンチン戦での暴力行為によって出場停止となったトルステン・フリングスのポジションにセバスチャン・ケールが入ったため、守備的な役割も果たさなければならなくなったのだ。また、本来は控えのティム・ボロブスキーがスタメンとして戦列に参加した。
2人の新戦力は、その力を十分に発揮した。ボールを供給する役割のバラックがこれまでとは違ってうまく機能しなかったため、ボロブスキーは左サイドでほとんどの攻撃に絡んだ。W杯初出場のケールは、グループリーグのコスタリカ戦と決勝トーナメント1回戦のスウェーデン戦で計25分間ピッチに立ったにすぎなかったが、ディフェンスラインでめざましい働きを見せ、フリングスの闘志を彷彿とさせた。
また、クリストフ・メツェルダーはペア・メルテザッカーと協力し、イタリアのゴールゲッター、ルカ・トーニを封じた。だが、ディフェンスラインの左サイドでカモラネージをマークしていたラームは、3月1日のイタリアとの親善試合(1−4)のときと同じようにてこずり、トップではクローゼとポドルスキーがファビオ・カンナーバーロ率いるイタリアDF陣の執拗なマークに苦しめられた。
戦術に忠実な戦いが展開された90分が終了したのち、延長戦の冒頭、ドイツは2度の恐怖の瞬間は克服することができた。延長前半1分、交代で入ったアルベルト・ジラルディーノがバラックをかわして放ったゴールポストの内側に当たるシュート。さらにその60秒後には、ジャンルカ・ザンブロッタのゴール手前16mからシュートが、クロスバーに当たって跳ね返った。
一方、ドイツはルーカス・ポドルスキーが延長前半15分と後半7分にシュートを放ったが、失敗に終わった。
「このチームはドイツに誇りを与え、世界にドイツ代表の新しい一面を示すことができた。これからもわれわれは多くの進歩を成し遂げることができるだろう」クリンスマン監督は語った。今後の進退については、「まだ考えられない」という。
1970年のメキシコ大会の準決勝でイタリアとの「世紀の対決」に敗れて以来、W杯準決勝では負けたことのなかったドイツの敗北について、フランツ・ベッケンバウアーは「ドイツにもイタリアと同じように勝利を手にするチャンスはあった。残念だね。最後の最後で、イタリアはわれわれよりもラッキーだったし、クレバーだったよ」とコメントしている。
(文:ティーモ・ミュラー/kicker 編集:メディアアトリエ)
kicker(キッカー)
1954年創刊のドイツを代表するサッカー紙。サッカーファンはもちろん、プレーヤー、監督からも絶大な信頼を集めている。近年はサッカーのみならず、スポーツ全般をカバーする。今回のワールドカップドイツ大会では、地元のトップスポーツメディアとして、大取材チームを結成。32か国全チームに担当記者とカメラマンを配置し、圧倒的なカバレージで報道する。