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(ホリエモンはなぜ生まれたか:6)不正隠す「匿名」資金
●投資組合 縄張り意識、遅れた法整備
「投資事業組合を作りたい」という相談が監査法人に相次いでいる。相談してくるのは、投資資金を集めたい地方金融機関や投資ファンド、余裕資金の運用先を探しているIT(情報技術)企業だ。「説明会に講師で出向くと数百人集まることもある」と大手監査法人のベテラン公認会計士は話す。
投資事業組合はいわば投資家から集めた資金をためこむ器だ。登記や会計監査の義務がある「有限責任組合」のほか、いずれの義務もない「匿名組合」「民法組合」がある。民法組合は投資だけでなく、マンションの管理組合などに幅広く利用されている。
だれが出資し、どこに投資しているのかといった情報を開示する義務はない。「ブラックボックス」であることに魅力を感じる出資者もいる。
ライブドア事件では、この投資組合が粉飾に利用された。同社が新株を投資組合に取得させ、市場で売却して利益を得た疑いだ。投資組合に集まる資金の出資者は匿名なので外部から不正は見抜けず、ライブドア株を買った多くの個人投資家が損失を負った。
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投資目的の組合の第1号は82年にベンチャー企業の未公開株への投資を目的につくられたと言われる。90年代後半には、海外のタックスヘイブン(租税回避地)を利用した税金逃れや、投資ファンド商品を作るために投資組合が利用される例が増加。98年に「有限責任組合法」が生まれた。
ただ民法組合や匿名組合の制度は残り、今も投資組合が全国にいくつあるのかの正式な統計さえない。
この投資組合が最近、金融商品を巡るトラブルによく登場する。05年10月に経営破綻(はたん)した平成電電を巡っては、同社に機材をリースしている匿名組合が高配当をうたって約500億円の出資を募った。平成電電の破綻で出資者は資金回収が難しくなっている。
「未公開株を特別に買い付ける投資組合に出資しませんか」と電話で勧誘してくる業者によるトラブルも増えている。横塚章弁護士は「投資組合に実態があるのか、本当に未公開株を買っていたのかを投資家が確認することは難しい」と話す。
海外市場への投資もからめた「商品先物オプション取引」、上場見込みがないのに「上場する」と言って勧誘する「未公開株」、投資内容が不明な「ファンド商品」――。複雑な金融商品が出回り、金融知識に乏しい多くの人にとっては危険が増している。
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99年春、蔵相の諮問機関の金融審議会で蝋山昌一第一部会長(当時)は、投資家保護のために業態や商品ごとにバラバラの規制を統一して「金融サービス法」づくりをめざす、と表明した。しかしこの構想は同年秋に早くも頓挫する。
金融業を所管するのは大蔵省だけでなく通産省(現経済産業省)、農水省、郵政省(現総務省)などにまたがり、銀行法、保険業法、郵便貯金法など10以上の業法があった。横断的な法律を作られると自らの監督権限が弱まる、と考えた各省が反発し、調整がつかなくなったからだ。
宮沢喜一蔵相(当時)から「なぜ消費者保護の法整備にそんなに時間がかかるのか」と不満をぶつけられた大蔵省金融企画局は、業者が金融商品を販売する際の説明義務についてのルールのみを法律にまとめることで調整に取り組み、「金融商品販売法」が00年春、成立した。
金融庁のもとに入った金融審は03年暮れ、再び金融サービス法構想の一環として、投資家保護の投資ルールを一本化する「投資サービス法」を提言した。金融サービス法ほどすべてを網羅していないものの「そこへのステップになるもの」(金融審委員)だった。
ただ、それさえも検討作業は遅々としていた。05年6月の金融審での審議でも、まだ各省庁の「縄張り意識」が目立った。
経産省の代表は、なるべく自由に投資をしたい企業を代弁し、法案の一部の規制について「明らかに過剰だ」と不満を表明した。国土交通省は現行規制で「それなりに十分だ」と主張し、新法は必要なしとの立場をとった。農水省もそれに同調した。
調整の末、投資サービス法構想は「金融商品取引法」案として今国会に提出される。法案では投資組合すべてに登記や会計開示を求め、罰則も設けることが検討されている。ただ、組合の目的や出資構成によっては規制されない組合も出てくると見られる。
金融庁幹部は「あまり締めつけすぎると、海外の大口投資家が日本への投資を敬遠しかねない」と言う。
弱い個人投資家を保護するのが本来の目的だったはずなのに、行政当局の一連の議論では「投資家の自己責任」にも重点が置かれた。業界からの攻勢もあって、業者の責任範囲を限定することにも気が配られた。
01年に米国で起きたエンロン事件では不正会計に特別目的会社(SPC)が利用された。このとき、日本の会計士業界では「SPCと同じように利用できる投資組合にも注意が必要だ」とささやかれていた。
だが「対岸の火事」に当局も業界も動かず、投資組合問題はライブドア事件まで焦点にはならなかった。(林尚行、多田敏男)=終わり
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◆キーワード
〈金融商品取引法〉 幅広い金融商品の販売・勧誘ルールを定める法案で、今国会に提出される。これまで「投資サービス法」案と呼ばれていた。金融商品ごとの縦割りの法制を見直し、消費者保護のために横断的に業者を規制するのが目的だが、預金や生命保険など規制対象に盛り込まれていない分野もある。有価証券報告書の虚偽記載や風説の流布、インサイダー取引などの罰則強化も盛り込んだ。
http://www.asahi.com/paper/business.html
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