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http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070401ig90.htm
インターネットの電子掲示板を使った中傷などの人権侵害行為が激増している。匿名をいいことに、やりたい放題の“無法地帯”がそこにある。これを放置するわけにはいかない。
警察庁のまとめによると、ネット上の誹謗(ひぼう)中傷について、全国の警察に寄せられた被害相談は、昨年1年間で8000件を超えた。前年比40%増、2001年の3・5倍もの件数だ。
手口は悪質きわまりない。特定の病院や医師を名指しして「バカ医者」呼ばわりし、「何でもかんでも手術を勧めるが、70%は死んでいる」と書き込む。
罪を犯した少年の住所・氏名を暴いたりもする。昨年は、電子掲示板で「うざい」と名指しされた女子高生が自殺を図る事件も起きた。
被害者に打つ手はあるのか。
02年に「プロバイダー責任法」が施行された。被害者らがネットの接続業者や掲示板の管理人に、書き込み内容の削除や書き込んだ人物に関する情報開示を請求できるようになった。ただ、これに応じるかどうかは業者側の判断に任されていて、実効性がない。
請求に従わない業者らに対しては、名誉棄損などの民事訴訟を起こす道が残されている。だが、裁判所が情報開示や賠償を命じても従わない業者がいる。
国内最大の掲示板「2ちゃんねる」管理人の西村博之氏の場合、損害賠償と制裁金で計約5億円の支払いを命じられながら、「死刑になるなら払うが、支払わなくてもどうということはない」と言って、判決を公然と無視している。
こうした債務者に対しては、強制執行の制度があるが、債権者が自ら、債務者の財産の所在を特定しなくてはならない。それは容易でなく、被害者側はしばしば泣き寝入りするしかない。
03年の民事執行法改正で、裁判所が債務者に全財産の開示を命じる制度が導入されたが、これも効き目がない。
命令に従わない債務者に刑事罰を科すことは、「ヤミ金業者に強力な武器を与えることになる」などとして見送られたためだ。刑法の名誉棄損罪を適用するのは手間がかかるので、すべてのケースへの対応はとても無理だ。
現行の法制度でネット上の不正に対処するには限界がある。
かつて、住宅金融専門会社の債権回収が問題になった時、預金保険機構に強制調査権限を付与する法律を整備し、不良債務者の資産を徹底的に洗い出した。こうした特別立法で、ネットの分野に限った手だてを講じるのは一案だろう。
とにかく、知恵を出し合うことだ。