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http://www.nikkei-science.com/
ブリティッシュ・テレコム(BT)は2011年までの間に100億ポンド(約2兆円)をかけて,自社の公衆電話網をIP(インターネットプロトコル)に基づくネットワークにそっくり置き換える予定だ。BTの公衆電話網には2200万人が加入しており,同種の切り替えとしては最大のプロジェクト。「21CN (21世紀ネットワーク)」と呼ぶ計画で,最初の実験を昨年11月28日,ウェールズのカーディフにある1台の交換機から始めた。2008年からは全国展開を始める予定。
天才か狂気か?費用と規模からして,このプロジェクトは大きな賭けだ。天才と狂気の両様に見られてきたと,21CN計画の担当役員コクラン(Ralph Cochrane)はいう。しかし「自分たちが血迷っているわけではないことを,私たちは証明しつつあると思う」。
テレコム・イタリアなどはIPをベースにした長距離基幹回線をすでに持っている。しかし「古い回線網を捨て,まるごとIPベースの新品に置き換えようという試みは私たちだけだ」とコクランはいう。
単一ネットに統合,年に2000億円節約
インターネットプロトコルはデータを効率的に転送するために設計された。従来の電話網では通話先まで特定の伝送経路を設定,その回線は通話が終わるまで他には使えなくなるが,IPはこれと違って,音声データを複数のパケットに分けたうえ,各パケットを別々の経路を通じて送り,目的地に着いたところで再び組み立てる。この結果,同じ帯域幅でより多くの通話ができる。IPネットワークを使って音声データを送るVoIP(ボイップ,IP電話)が可能になったことで,スカイプ(Skype)やボネージ(Vonage)などのVoIPプロバイダーが生まれた。
BTが転換を迫られたのは,既存の電話網にさまざまなネットワークが増え,複雑すぎて管理に膨大な費用がかかるようになったからだ。これまで巨大通信企業各社は,DSL(デジタル加入者線)やISDN(総合デジタル通信網)といった新技術が生まれるたび,また金融など特定の分野で特殊用途が必要になるたびに,個別の新しいネットワークを構築するのが一般的だった。BTは英国内に16の全国通信網を持つが,これらは音声,ISDN,DSL,専用線に分かれている。
21CN計画はこれらすべてのネットワークを,数百のマルチサービス・アクセス・ノード(MSAN)を使うことで,単一のネットワークに統合する。 MSANはあらゆる種類の接続を制御するハードウエアで,さまざまなタイプの交換機が何千もごたまぜになっている状況が解消されるはずだ。
21CNでは,DSL(ユーザー数によって利用可能な帯域幅が変わる)と専用線(帯域幅とサービスは保証される)の違いは,どちらのタイプのサービスを提供するかをソフトウエアによってMSANに指示することによって実現することになる。唯一変わらずに残るのは,交換機から各家庭までの電話線だけ。個人生活や企業の習慣の変化もあり,新ネットワークによってBTは年間10億ポンド(約2000億円)の経費を節減できる見込みだ。
新ネットワークではすべての電話機がMSANに接続される。受話器を取ると,最寄りのMSANから40台ある通話サーバーの1台にメッセージが送られ,通話サーバーは発信音を生み出すとともに,ダイヤルされた番号を受け付ける。最初のサーバーが入力番号を処理できない場合は別のサーバーに通話の確立を依頼するが,音声通話そのものを構成するデータパケットはMSAN間で直接やり取りされる。
伝送品質をラベルで指定
従来のIP電話サービスは一般に音声品質が悪かったが, 21CNは「マルチプロトコル・ラベル・スイッチング」という標準に基づいて構築され,各パケットはヘッダーに組み込まれたラベルに従って転送されるとコクランはいう。音声通話やテレビ番組を伝送する場合には,ラベルはネットワークに対して,仮にパケットの一部が失われても遅れなしに転送するよう指示する。一方,電子メールの場合は,「急ぎではないけど,欠落なしに届けて下さい」という指示になる。この仕組みのほか,高品質のIP接続は通信量で飽和していないこともあって,21CNは旧来のネットワークと少なくとも同様にうまく機能すると考えられている。
カーディフで行われた初実験は1台の交換機と数百の回線を使った小規模なものだったが,BTによると問題はまったく発生しなかった。4月に予定される大規模実験では複数の場所を接続する。「天才か狂気か」がはっきりするのはそのときだ。