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7月21日に開催されたBBA主催SIG-OG第9回「みえてきたオンラインゲームの未来像」講演の第2部では、韓国ゲーム研究の第一人者として著名な魏晶玄氏から「日本のオンラインゲームの進化・発展の方向性は正しいか」と題した講演が行われた。魏氏は講演に先立ち、韓国の最新ゲーム業界トピックとして「オンラインカジノの摘発」「FIFAオンラインの人気」「MMORPGの苦戦」という3つのニュースを紹介した。
「オンラインカジノの摘発」は、客がゲームを通して得たポイントを現金に換金するなど、カジノ行為をしていたPC房業者の摘発が進んでいること。「FIFAオンラインの人気」は、NeoWizの開発したオンラインサッカーゲーム「FIFAオンライン」が同時接続者数18万人を越えるヒットとなったこと。そして「MMORPGの苦戦」は、「ZerA」(ネクソン)などの新規MMORPGが不振であることなどである。
中でも魏氏は、オンラインカジノの摘発が韓国ゲーム業界を大きく揺るがす大事件になっていると説明した。これは韓国の一部のPC房が、ポーカーや花札などのカジュアルゲームを客に遊ばせ、ポイントを換金して払い戻していたというもの。店内のゲームサーバにログインして遊び、ポイントをサイバーマネーとしてチャージ。店外に待機する自動車の中で換金する仕組みだ。
こうしたPC房は「成人PC房」「射倖性PC房」などと呼ばれ、この半年間で警察により1300件の取り締まりと8486人の立件が行われた。もっとも、韓国で約2万件あるPC房のうち、その中の約2割がこうしたサービスを行っていたとのことで、これは「一部」で済む問題ではない。さらに魏氏によると、今後同じような批判がゲームポータルにも広がる可能性があるという。
摘発は昨年11月から本年6月にかけて行われたが、こうしたニュースは日本ではほとんど報道されていない。魏氏は「日韓は情報の交流が盛んだが、お互いに表層的な部分に留まっている」と指摘。その言葉には重みが感じられた。
次に魏氏は本題に戻り、韓国のWEB2.0の現状と、オンラインゲームにおける展開例について紹介を行った。
魏氏はWEB2.0の特性を「開放性」「参加」「共有」「連結」という4つのキーワードで説明。実例として、韓国の検索ポータル「Naver」における「知識in」(チシギン)サービスについて紹介した。Naverは1997年にサービスを開始し、今日ではシェア70%を誇るポータル最大手。ハンゲームなどで日本でも知名度の高い韓国NHN社が運営している。知識inはユーザーの質問に対する回答をウェブ上で検索できるサービスで、2002年より開始されたキラーサービスだ。おもしろいのは、Naverが知識inのAPIを公開していることで、ネット上にはユーザが作成した知識inページが数多く存在している。
もっとも、魏氏はこうしたWEB2.0的な特徴はゲーム業界では新しいものではなく、韓国ゲーム開発者の間でも「オンラインゲームの中にはWEB2.0的な特質が見られるが、WEB2.0という言葉が普及してしまった結果、逆に自分たちのゲームをいかにWEB2.0にあわせるかに苦労している」という談話を紹介した。他の産業においても「品質で劣っていた製品が、WEB2.0的な特質を備え、市場のトップシェアを握った例」が多くあると指摘。具体的にはPC-9801シリーズとIBM-PC、中韓でのコンソールゲームとオンラインゲーム、さらにはガソリン自動車と燃料電池車にも同じ特徴が見られること。その上で成功した製品に共通してみられるのが「インターフェースの標準化・共通化」「製品・サービス構造のモジュール化」「サードパーティの活性化」にあると指摘した。
また魏氏はオンラインゲームから生まれた新サービスの例として、MMORPG「君主」におけるストリーミング番組を紹介した。これは「君主」ゲーム内でおきたさまざまな出来事を、ニュース番組の形でユーザに配信するというもので、番組構成はテレビニュースそのもの。またユーザの創造性の発揮という意味では、市民記者の投稿によるウェブ新聞「オーマイニュース」や、ストリーミングで個人放送局が簡単に作れるウェブサービス「Afreeca」などの事例を紹介した。オーマイニュースは全世界で2万人の市民記者を抱えており、韓国では「新聞を殺した」といわれるほど影響力を持つ。日本でも8月にオーマイニュース日本版が開始予定だ。AfreecaはCCDカメラのキャプチャ動画をストリーミング配信するサービスだが、デスクトップ画面の配信もできるため、テレビキャプチャカードで表示した動画をネットで再配信できる。先日のW杯ドイツ大会では「オレ解説」のサッカー中継を配信するユーザーや、テレビでサッカー中継を見ながら、音声はAfreecaで楽しむユーザーもいたほど。Afreecaの利用ユーザーは4〜5万人という。
一方で日本のオンラインゲームには、コンソールゲーム文化の影響から、まだゲームサービスやプラットフォームとしての認識が弱く、国際展開や多彩な課金モデルへの対応、ゲームを土台とした新サービスの展開などに対して、対応力に疑問を投げかけた。現在韓国で考えられているものとしては、「Eラーニング」「Eヘルス」「ポータル&ニュース」「コミュニティ」「放送」などがあるが、それには「ゲーム」という概念にとらわれすぎては難しいという。また日本のオンラインコミュニティ文化は携帯電話が主流だが、これは国内展開のみに限定されていること。日本のオンラインゲームもまた、サーバを各国別に閉じてしまう例が多く、おしなべて閉塞的な側面が強いことを指摘。「日本のオンラインゲームは子供が遊ばないゲームが多い」と指摘し、オンラインゲームの教育利用も含めて、未来のグローバル・バーチャル・ソサエティの中で取り残されないための施策が必要だと締めくくった。
今回の両氏の講演は、共にオンラインゲームを「ゲーム」としてだけ捉えると、視野狭窄を招いてしまう、という点で共通していた。一方でテレビゲームを「ゲーム」としてだけ捉えると、縮小再生産に陥ってしまう、というのは日本のゲーム開発者の共通意識だったはずである(「脳トレ」などのヒットも、こうしたゲームデザインにおけるラジカルな思想が背景にある)。日本はコンソール市場が強いこともあり、オンラインゲーム市場の本格的な立ち上がりは次世代コンソールからとも言われているが、伝統的なMMORPGによるユーザの囲い込み合戦に限界があることは、韓国市場における新規MMORPGの苦戦ぶりなどからみても明らかだ。伝統的なコンソールビジネスがオンラインで「テレビゲーム2.0」になりえるか。大きな課題だろう。
http://www.rbbtoday.com/news/20060723/32514.html