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(Net IT Biz:3)オンラインゲーム 出会いは画面を超えて
●「冒険」仲間、本当に結婚
「ファイナルファンタジーXI」で、公演する「ゆきひで」さん(中央)と、周りに集まった観客。話の中身は画面の下に文章で示され、客は「w」(笑いの意)などと書き込んで反応する。人物はすべて世界中から集まったプレーヤーの「分身」だ=(C)スクウェア・エニックス
350年後、内戦とモンスターに脅かされる地球に似た星。そこで巡り合った怪力の巨人と魔法使いの妖精。冒険を続けるうち、2人は愛し合い、結ばれた――。話の前半はオンラインゲーム「エターナルカオス」の世界。後半は大阪市の会社員、西口雅也さん(33)と妻真純(ますみ)さん(31)との、現実の話。2人はこのゲームで知り合い、今年2月に結婚した。
●巨人と妖精、協力し合い
「エターナル」には、見ず知らずのプレーヤーたちがインターネットを通じて同時に参加する。モンスターとの戦いや物資の取引で、チームを組んだり、協力したりしないと先に進みにくい。
雅也さんは「巨人」として、当時は北海道に住んでいた真純さんは「妖精」として、毎夜のようにゲームを続けた。ピンチに助け合う関係は、一方が数日現れないと「かぜでもひいてた?」と気遣う間柄に。画面上で会話のように文章をやりとりする「チャット機能」で世間話もするようになる。
実際に初めて会ったのは昨年12月。「初対面の感じがしなかった。ゲームのなかで信頼感が高まっていたから」と真純さんは振り返る。3カ月後にはゴールインした。
ゲームを運営するガマニアデジタルエンターテインメントには13組から「ゲームで知り合って結婚した」との報告があった。浅井清・最高執行責任者は「不思議なことではない。同じ目標に向かう仲間同士が親密になるのは、スポーツや音楽活動も同じ」という。
「ドラゴンクエスト」シリーズなど、プレーヤーが主人公になって楽しむのが「ロールプレイングゲーム(RPG)」。メーカーが精巧なシナリオを用意し、プレーヤーはこれに沿いながら主人公を動かす。
しかし、インターネットとの融合がRPGを変えた。「オンラインRPG」にもモンスターを倒すといった目標はある。ただ、参加者たちはネット経由で会話し、それぞれの意思で動く。「世間」がなりたち、シナリオもゴールもない「日常」が開けた。
「ゆきひで」さんは、スクウェア・エニックスのオンラインRPG「ファイナルファンタジー11」に現れるお笑い芸人。こんな存在はメーカーも想定しなかった。
●仮想の町にお笑い芸人
ゲームの舞台となる「町」で公演予定をふれて回る。ネットの向こう側に「観衆」がそろうと、文章で漫才を始める。話がうまく落ちると「観衆」から笑いを表す文章が寄せられる。
方々の「町」から呼ばれる人気で、公演は150回を超えた。操るのは静岡県、伊豆長岡温泉の旅館に勤める花里征英さん(34)。帰宅後、4時間ほどゲームの世界に入る。「芸人として自覚がわいてきた。サラリーマンでは無理なことがこの世界ならできる」
オンラインRPGは90年代後半に米国で生まれ、韓国、中国、台湾で発展した。家庭用ゲーム機が主流の日本は乗り遅れたが、高速大容量通信の普及で02年ごろに韓国の「リネージュ」「ラグナロクオンライン」などが紹介され、ファンが拡大した。
国内最大級の「ラグナロク」には同時に10万人以上が参加することもある。運営するガンホー・オンライン・エンターテイメントの森下一喜社長は「もはや一つの都市コミュニティーだ」との認識に至っている。
多人数打ちマージャンや得点を競うアクションゲームなど、なじみのゲームのオンライン化も進む。経済産業省関東経済産業局やメーカーでつくる「オンラインゲームフォーラム」が調べたオンラインゲームの市場規模は05年で820億円。
新清士・立命館大学大学院講師は「トランプなど、もともとゲームは人間同士が対戦するもの。当然の流れだ」とみる。ゲーム産業の収益構造も月額利用料など継続的な収入に比重が移りつつある。同フォーラムによると、05年発売のオンラインゲームでソフト売り切りは前年から約2割減って62本。ソフト無料で、後のサービスが有料なゲームは前年の2倍以上の128本だった。
●熱中しすぎ、海外で死者
ただ、普及の陰でゲーム漬けの人の増加も懸念される。ネットの向こうに仲間がいるため、途中で抜けにくいのが、オンラインゲームの問題だ。同フォーラムは今月5日、利用者や運営会社向けのガイドラインを発表。「1時間に15分程度の休憩をお勧めします」などと利用者に促す。
先行する韓国では、熱中しすぎで死者が出たと報じられ、中国では政府が連続プレー時間の制限に乗り出した。お茶の水女子大の坂元章教授は「政府が規制すると、ゲームの持つ豊かな可能性が制約される。業界が適切な遊び方を示すなどして、利用者が自らオンラインゲームへの接し方を学んでいけないものか」と話す。(山川一基)
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◆納得・ネットク
●オンラインRPGの課金システムは、30日ごとに1500円を払う「ラグナロク」のような月額課金と、基本料金は無料だが、ゲーム内で使う物資を買う時にお金をとる「エターナル」のような「アイテム課金」の二つに大別できる。最近は新しい参加者を増やそうと「アイテム課金」が増える傾向にある。
●実社会と似た問題も増えている。ゲーム内で使う通貨をネットオークションで利用者同士が換金する「リアル・マネー・トレード」は、詐欺の温床になるため運営者が禁止しているが、後を絶たない。ゲーム内で窃盗など「犯罪」を働く者も出る。「ファイナルファンタジー11」の中には数十人の「監視員」がいて、無法者を捕まえる。悪質なら一定期間牢屋(ろうや)にも入れる。
http://www.asahi.com/paper/business.html