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http://www.yukan-fuji.com/archives/2006/10/post_7189.html
京都北部の住宅街、古都の風情が少々漂う中に珍妙な美術館がある。外見は普通の一軒家ながら、よ〜く見ると、『プロレス美術館、憩いのリング』との看板が…。
控えめなのは看板だけ。中に踏み込むや、プロレスのワンダーランドが広がる。真ん中には小さいリングが鎮座し、ベルトやマスクなどグッズであふれ、本棚にはプロレス関係の本がずらり。
あいあつもそこそこに、湯沢利彦館長(42)がいきなりゴングを「カーン!」。見学開始の合図で、ゴングは本物だった。
それから目の前にある棒を取り上げ、「実際の試合で使われた凶器です。見かけは棒に有刺鉄線を巻いた恐ろしげなものですが、触ってください。針の部分が尖っていないので、見かけより痛くない」と、プロレスの華、乱闘に欠かせない凶器の説明を始めた。インディーズ団体のレザーフェイス選手が使用したものだという。
その後は、畸人らしく、手当たり次第にグッズを説明する。アントニオ猪木の書き初め、猪木vsアリ戦の30万円と印字されたロイヤルシートチケットなど、お宝は1000点を超える。
湯沢さんはプロレス誌のライターとして活躍し、一連のグッズは豊富な人脈から寄贈されたり、ギャラだけでは生活できないレスラーから有償で引き取ったりしたもの。平成12年1月1日午前零時にテープカットした同館は入場無料だが、完全予約制。これまでの入場者数は約500人。
説明途中、突然、湯沢さんはマスクを取り出した。「これはですね、実は私が被るマスクです〜」。少し照れながら言う。額の「憩」の文字も鮮やかな金色マスクは、湯沢さんが自分のために作ったマスクだった。
湯沢さんは、身も心もプロレスの世界に入り込んでしまった男なのだ。
「プロレス美術館のモットーは、可能な限り手作りをすること。リングも試行錯誤を重ねて手作りしました。完成までに約200時間かかった」
「プロレスに付き物なのは流血、そう血でしょう。リングを作りながらそんなことを考えていたら、たまたま指を傷つけてしまい、血がポタポタと流れ出した。『これだ!』と、さっそく流れる血をリングに付けた」
確かに、リングには血痕が付着していた。
「それから病院に行ったら、結局4針縫うことになりました」
病院より自己のこだわりを優先する。まさに畸人の面目躍如である。
(畸人研究学会、海老名ベテルギウス則雄)(2006.09.25紙面掲載)