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(回答先: JAL123便墜落事故に関して(戦争板より) 投稿者 ウソ捏造工場 日時 2006 年 5 月 12 日 19:02:21)
Book Review Indexから
【つ】
角田四郎
『疑惑 JAL123便墜落事故』
角田四郎:『疑惑 JAL123便墜落事故』, 早稲田出版,1993.12.28., ISBN4-89827-152-9, \2136+税.
書評
概説
非常に腹が立つインチキ本.1985年8月12日におきた日航123便墜落事故について,悪意あるデマをバラまいている.事故機は自衛隊の戦闘機により撃墜されたのだというのが角田氏の主張.事故の原因は自衛隊の標的機が衝突したことだとし,その過失を隠蔽するために撃墜したのだという.救助の遅れなども証拠隠滅のための策謀だという.
JA8119の墜落の原因ははっきりしている.操縦系統の油圧系がすべて破壊したことによる操縦不能.この事実を十分理解せず(むしろ文献のいいとこどりをして事故機が操縦できたと結論づけている),事故機が操縦できたという前提に組み立てられた角田説は,荒唐無稽の一言で棄却可能.
それでも角田氏の本に沿って批判を試みれば,角田説のポイントになる証拠は角田氏自身の目撃体験と,事故現場から持ち帰った1個の正体不明の金属片.
これらがまったく信頼できない.まず物的証拠の 金属片が極めて胡散臭い.ミサイルの破片と言いながら,この重要な物証を角田氏は処分してしまったという.鑑定に耐えうるものではないらしい.
目撃証言では,事故機の近くを飛ぶ戦闘機を角田氏は目撃したというが,機種などの詳細が不明な上に,同時に目撃したとされる事故機そのものの見え方が事実と食い違っている.ここから,事故機の目撃証言自体が捏造の可能性が指摘でき,戦闘機を見たということもおよそ信じられない.角田氏以外にこのとき戦闘機を見た者もいない.
ついでに指摘すると,本書はその主張に一貫性が欠けている. 角田氏は事故の発生高度が実際は15000フィート程度だったと推測している.ことに,角田氏の目撃例は事故機の高度が一般に言われているものより著しく低い.しかし一方では,公式な事故発生高度の 23900フィートを支持した立場から,執拗に隔壁破壊説を非難している.
さらに言って,角田氏の隔壁破壊説批判は誤りが多い.
以上から,本書はまともに取り合う価値のないものと私は判断している.要するに角田説は妄想である.
Contents
準トンデモ本
角田説の骨子
標的機衝突説の決定的矛盾
戦闘機が先導したか
事故機がどう見えたか
8月18日に墜落現場に行ったことに ついて
きわめて胡散臭い金属片
隔壁破壊説に対する反論について
霧の発生
風が弱い
急減圧の人体への影響が少ない
衝撃波
空気流が向きを変えたら衝撃波の破壊力は残らない
尾部が壊れれば尾翼は壊れないのでは
点検口が尾部の圧力を逃がすように機能したはずだが
水平尾翼の構造
垂直尾翼をかけ上がるうちに空気の勢いは減衰されてしまう
隔壁破壊説への私見
補足
2chほか色々な掲示板を見ると角田説の人気のすごさをいつも思い知らされる.もしかして,事故調の公式な事故原因に不満がある人は,B-747の後部圧力隔壁が破壊したとすると,垂直尾翼がバーンと破裂すると考えているのだろうか.また,客室では尾部にものすごい風が吹き荒れ,人が吸い出されると考えているのかも.とすれば,「そんなこたねーだろ」と反感を持つのも無理はない.
実際は,事故調はそんなことは言っちゃいない.どこぞのインチキ本を真に受けすぎである.
垂直尾翼のトルクボックスのように,突出していて偏平で薄板でできた箱は内圧に弱い.割り箸の袋や封筒を息で膨らませていただくと分かるかと思う.偏平な断面が円に近づくはずだ.これのごく小規模な現象が,事故機の垂直尾翼に起きたのだと考えられている.リブとストリンガーをつなぐリベットをまず1本切る.すると他のリベットの負担が増えるのでリベットは各個撃破され,次々と破断する.そうするとトルクボックス外板は外に膨らもうとし,リブには圧縮力が生じて座屈する.結果,トルクボックスは形状を保つことができなくなり,飛行中の風圧に対し抵抗できなくなる.形状が変わるので受ける空気抵抗も強くなる.その結果として尾翼は倒壊し,破壊されてしまう.こうい悪循環が起きる(より詳しくは加藤寛一郎元教授 の『壊れた尾翼』参照のこと).
こういった垂直尾翼の破壊は,空気の侵入口にあたるトルクボックスの点検口に,フタがついていれば防げたものと言える.ここをフタすると,機体後部は円形断面になるので内圧に別に弱くない.APUの隔壁は破壊され, APUも脱落するだろうが,これ自体は操縦不能を招かないので,墜落は免れると考えられる.従って,その後B-747に施されたというトルクボックスの点検口を布でフタしたという処置は,いたって合理的な対策だと私は考えている.
客室内の突風については,強くて台風程度という加藤先生の説が信憑性が高い.手計算でもそんな数値が出てくる.詳しくは拙稿を参照願いたい.
関連サイト
早稲田出版ホームページ
本書の出版元のページ.「ノンフィクション」のコーナーに本書があり, まだ入手可能らしい.いまだに読者からの熱い反響が寄せられている.
墜落JAL123便
アクエラ氏の サイトにある本書の大変ユニークな書評.角田氏から直接手紙をもらった ことも書いてある.それによると例の金属片は角田氏はまだ持っている らしい.すなわち「手許に置かないことにした」(P.413)というのは嘘. はからずも角田四郎氏が嘘つきだと分かってしまった書評.
航空事故調査委員会
航空事故調査委員会による公式な123便事故の報告書の概要. 報告書本体も大容量ながらPDFでダウンロード可能.
123便事故特集 目次
日本航空機長組合による123便事故に関する主張ページ.これ自体は 下記日乗連の冊子ともどもトンデモとは言えない(賛同できない箇所も 少なくないが).なので,『疑惑』のようなインチキ本が冒頭でその主張を 転載していることには,異議を唱えた方がよいと思う.
「日航123便に急減圧はなかった」
日本乗員組合連絡会議による冊子のHTML版.独自の事故調批判と 原因に対する考察がある.特にその考察は専門家ならではの迫力がある. 全てについて賛同できるわけではないが.
JAL123便事故の真相は?
2ch掲示板の航空・船舶板にある JAL123便スレッド.匿名掲示板とはいえかなり突っ込んだ書き込みがある (まさに玉石混淆).標的機説はほぼ完全に論破されているし,救助が 遅れた理由もかなり詳しく解説されている.結局議論に勝てた「撃墜太郎」 はまだいない.
●日航機墜落事故での自衛隊の活躍●
2ch掲示板の軍事板にあったJAL123便 スレッドの過去ログ.本書の出版について自営業氏のコメントが印象的.
御巣鷹山の救助活動はあの通りだったんですか?
2ch掲示板の自衛隊板にったJAL123 便スレッドの過去ログ. 救助が遅れた理由はここにもかなり詳しく解説されている.
常識ぽてち - 常ぽて●潜水病と高山病
デジタルたまごや発行の メールマガジンの記事.ずばり潜水病と高山病の解説がある.潜水病には 窒素による中毒症状もあるというが,いずれにしても酸素の多い少ないは 関係ないし,飛行機に乗っていてかかることはあり得ない.
http://www.aerodevice.net/ar/kakoc/jal123.htm
sin氏の■- Air Rescue -■ 掲示板の過去ログ.角田説を支持する方の,反論に対する再反論が非常に 印象的.
(2001.01.15.記)(2005.08.16.更新)
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