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http://www.toyokeizai.co.jp/CGI/kensaku/syousai.cgi?isbn=22264-2
ハードワーク
〜 低賃金で働くということ 〜
トインビー,P. 著/椋田 直子 訳
■発行日 : 2005年07月14日
■ISBN : 4-492-22264-2 C3036
■サイズ : 四六判 上製
■ページ : 306頁
■価格(税込) : 1,890円
経済効率を最優先させたサッチャー改革は、何をもたらしたか。雇用環境の悪化で苦悩する低賃金労働者たちの苦悩を、英ガーディアン紙の辣腕女性記者が綴った衝撃のルポ。
■目次
第1章 事のはじまり
第2章 ホーム
第3章 職探し
第4章 買い物
第5章 初仕事−運搬係
第6章 職探し−その二
第7章 給食のおばさん−いつも笑顔を絶やさずに
第8章 託児所
第9章 クラパムパーク団地のお隣さんたち
第10章 飛び込み電話セールス
第11章 早朝清掃
第12章 ケーキ製造所
第13章 老人ホーム
第14章 これしか道はないのか
第15章 あのころと、いま
以下ほ書評です。
http://book.asahi.com/review/TKY200509060311.html
ハードワーク [著]ポリー・トインビー
[掲載]2005年09月04日
[評者]苅谷剛彦
経済を活性化させるために、「小さな政府」をつくる。非効率な官業は民営化する。官民を問わず、割高になる人件費を切り下げるため、正規職員を減らし、雇用は派遣会社との外部契約に変えていく。どこかの国の選挙公約にも似た内容だが、その先には、どんな社会と暮らしが待ち受けているのか。本書は、サッチャー改革以来、20年以上民営化路線を進めてきたイギリスで何が起きたのかを、生々しく伝えた問題提起のドキュメンタリーである。
何より本書がユニークなのは、新聞記者を務める著者が、政府の定める「最低賃金」(それ以下での雇用は違法となる基準)で、本当に生きていけるかどうかを、自ら実践し、その体験をまとめたものだということだ。時給4.1ポンド(820円)の生活。それは公共の安アパートに移り住むことから始まる。引っ越し先の老朽化した建物は悪臭がひどく、麻薬や売春、暴力の温床でもある。
そして次に、職探し。申告できる職歴も職業資格もない(という設定の)50歳を過ぎた女性である著者にできるのは、派遣会社に登録し、時給800円前後の短期的な仕事を転々とすることくらいだ。いつも仕事があるとは限らないし、なければ無給となる。病院の運搬係、学校の給食助手、電話セールス…… 著者がどんな仕事をし、職場にどんな人々がいたのかが本書の中心部分だが、そこから見えてくるのは、仕事のきつさばかりではない。効率化とコスト削減のための外部契約が、かえって仕事の非効率を生んだり、コスト高になる矛盾も見えてくる。
こうした不安定な生活をする人々が、全体の30%を占める社会。国全体の経済成長にかかわらず、彼らの賃金は一向に上がらない。そして、子どもたちは、底辺から脱出するはしご――優れた教育を受ける機会を奪われる。「中流」崩壊後のイギリスに、日本の将来像が重なって見えてくる。貧富の拡大は、政策選択の結果、つくられるのだ。
社会の平等を犠牲にしなければ経済的に成功できない、という神話を打ち消す研究成果の紹介にも目を引かれた。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492222642/
貧困層を消費社会へ立入禁止する過酷なアルパトヘイトを描く, 2005/12/06
レビュアー: くろやぎ (神奈川県) - 自分が書き込んだレビューをすべて見る
英国の女性新聞記者が、最低賃金で働く者の生活を体験した、一種の「潜入取材」記録です。
著者が確保した住まいは、不潔で悪臭に満ちた低所得者向けの団地の一室でした。ベッドや最低限の家具を購入し終わると、限度いっぱいまで借り出した低所得者向けの貸付金はほとんど底をついてしまいます。
仕事が決まると同時に生活保護は打ち切られ、著者は「最初の給料日までどう暮らしたらよいのだ」と、憤りに駆られました。
実際に著者が経験した仕事は、荷物の運搬係、給食のおばさん、託児所、飛び込み電話セールス、早朝清掃、ケーキ製造所、老人ホームの介護補助など。
著者は職探し段階から担当者の気まぐれに振り回されます。やっと採用されても、待っているのは過酷な肉体労働と仕事のじゃまをする規則の数々。たとえば、老人ホームのトイレで受け持ちの老人が倒れたとしても、老人に手を貸してはいけない。定められた器具を使わなくてはいけない。もし何か事故があっても雇用主は責任を取りません。
あらゆる不条理を経験した著者が政治に向ける言葉は激烈です。
金持ちはさらに裕福になり、貧しい者は所得と資産の両面で取り残され
る時代が始まったのだ。
ほかのすべての人たちが生きている消費社会への「立ち入り禁止」。
過酷なアルパトヘイトだ。
貧しい人たちが飢えていないのなら、それでいいじゃないか、といえる
だろうか。いえない、と私は思う。
経験と理論の両面から訴える社会正義は説得力があります。
少しだけアメリカの現状を書いていますが、英国よりはるかに悪いのが実態です。社会保障が整っていないため、死にたくなければ働しかありません。当然、就職率は高くなりますが、これはいわば強制労働のようなものだから、賃金が低く抑えられます。
日本が悪い意味でアメリカの後を追わないよう願うばかりです。
とりあえず「やってみた」というのは買い, 2006/01/20
レビュアー: 柴犬太郎 "柴犬二郎" (大阪市) - 自分が書き込んだレビューをすべて見る
いろいろ突っ込みを入れたくなるところはあるが、低賃金の職種に就いて、公団に住む生活を体験してみるというのは貴重な姿勢。
イギリスの公的医療サービスの明らかに不可欠な仕事が派遣会社などを通じて低い給料で働く人により運営されているのには驚いた。
日本でも派遣会社の台頭が著しく、長者番付に派遣会社社長が登場しているが、低コストの労働力を供給するためのシステムで稼ぐ長者の存在意義が良く分からない。
作者の「必要な仕事をしている人たちなのに、何故その仕事で得る収入で生活ができないのか?」という疑問にはうなずける。それで回っていかない社会はやはりどこかおかしいのではないかと思える。
もうひとつ印象に残ったのは子供の「機会の平等」に関して。親の競争の結末が家庭環境であるとしたら、子供が生まれる家庭を選べない以上、子どもの「機会の平等」を保障するということは親の競争の結果に対してやはり最低限の保障をする必要があることになる?(子供を親から切り離して宿舎に入れるなら別だが・・)
「機会の平等」と「結果の平等」は家庭を通じてリンクしている?と考えるべきなのか?「親の敗北」が「子の不利」になるようではやはり「機会の平等」が保障されていないということになる。
いちじるしく「機会の平等」のない「競争社会」は「弱肉強食」としかいいようがない。(後略)
http://www.kobunsha.com/book/HTML/4-334-93370-X.html
高学歴ノーリターン
The School Record Does Not Pay
中野雅至
なかの・まさし
2005年11月21日(月)発売
定価1,000円(税込み)
ISBN4-334-93370-X
一流大卒が負け続ける「ギャンブル社会」の到来
「東大社会」で実感した「学歴価値」の大暴落
■「ニートや派遣労働者に比べれば、正社員の一流大卒ホワイトカラーは完全なる勝ち組 winners じゃないか」――そう持ち上げられても、何か釈然としないものを感じている高学歴者は、実は多いのではないだろうか?
■高学歴者は今、明らかに3極化 tripolarize している。「カリスマ性のある高学歴者」「ボンボン高学歴者」、そして、下・中間層出身で目立った取り柄のない「さえない高学歴者」である。前2者は恵まれた生活を送っているが、「旧帝大」や「早慶」出身の、ごく普通の高学歴サラリーマンと公務員は、明らかに報われていない。つまり、釈然としない“何か” を感じている高学歴者は、「さえない高学歴者」である可能性が高いのだ。
■本書では、「東大社会」とも言える中央官庁に14年間勤務した著者が、さまざまな知見から、「学歴価値」 real value of school record が大暴落しており、日本が「高学歴ノーリターン」の国になりつつあることを示す。そして、「報われない」ことに対して怒りや無力感を抱く高学歴者が増えるにしたがって、東大を頂点とする「ピラミッド型学歴社会」が徐々にメルトダウンし、やがて「ぶっ壊れる」様を描く。そして最後に、日本の学歴社会の行き着く末を明確に示す。
■前作『はめられた公務員』で公務員リストラのシナリオを見事に予測した著者が描く、「ポスト学歴社会=ギャンブル社会」とは……。
中野雅至[Masashi Nakano]
1964年、奈良県大和郡山市生まれ。1988年同志社大学文学部英文学科卒業。1989年大和郡山市役所に入所。在籍中に働きながら国家1種行政職試験に合格し、1990年旧労働省入省。 The School of Public Policy、The University of Mchigan への留学、厚生労働省大臣官房国際課課長補佐(ILO条約担当)を経て、兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科助教授に就任。著書に『投稿論文でキャリアを売り込め』(日経BP社)、『はめられた公務員』(光文社ペーパーバックス)など。
【「有名企業の正社員になれたら勝ち組」というのは本当か?】
●東大を出てもヒルズに住めるわけではない!
●「所得<学歴・職業威信」から「学歴・職業威信<所得」の時代へ!
●高学歴者は「市場原理主義」に打ち負かされた!
●もう学歴だけでは格差はひっくり返せなくなる!
●「本当に儲けているのは誰か」を考えよ!
●勉強を強いてでも子供に高学歴を得させるべきか?
〈目 次〉
読者のみなさんへ
はじめに
Chapter1 誰が損をしているのか?
Chapter2 報われない仕事
Chapter3 彼らはなぜ怒らないのか?〈中央官庁編〉
Chapter4 彼らはなぜ怒らないのか?〈一流企業編〉
Chapter5 「中流受験秀才」の悲劇
Chapter6 「学歴社会」の崩壊
Chapter7 運がよければ……
Chapter8 「新・学歴社会」を構築せよ
おわりに
巻末資料
キーワード和英辞典