★阿修羅♪ > マスコミ・電通批評3 > 640.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
□Jリーグを見殺しにしていいのか/大住良之(サッカージャーナリスト)
http://sports.nikkei.co.jp/soccer/column/osumi/index.cfm?i=20060917ca000ca
大住良之(サッカージャーナリスト)
6.Jリーグを見殺しにしていいのか
Jリーグは試合内容も充実してきているが、・・・写真はG大阪のFW播戸〔共同〕
●「Jリーグ報道」の形を借りた「日本代表報道」
こんな状態になったのは、いつごろだろうか。メディア、とくにスポーツ紙とテレビがJリーグの報道を行わなくなってしまったのである。
もちろん、Jリーグの行われる日には試合の記事で紙面が割かれ、ニュースなどでも得点シーンが出てくる。しかしその中心となる「切り口」は、試合そのものやチームではない。ほとんどが「日本代表」なのだ。
代表選手、あるいは代表選出が有力と見られている選手の活躍が「オシムが見ている」などの文脈で語られる。そうでなければ、2008年の北京オリンピックを目指すU−21日本代表の候補選手、さらには来年のU−20ワールドカップを目指すU−19日本代表候補選手が中心の報道となる。
すなわち、そこで行われているのは「日本代表の報道」であり、「Jリーグの報道」ではない。いったいどんな試合だったのか、順位争いはどうなっているのか、そして、いま、Jリーグの各クラブがどんなサッカーをしているのか、そこからはまったく伝わってこないのだ。
●「全国区」の人気チーム
ワールドカップで惨敗を喫しても、日本代表への関心は低下しなかった。さまざまなチームと戦いながら右肩上がりに強くなってきたこれまでの日本代表への期待が、イビチャ・オシムという個性的な指導者を得てまだ続いているのだ。それは非常に喜ばしいことだ。
メディアにとっても、こうした「全国区」のチームがあることは喜ばしいことに違いない。日本代表を取り上げておきさえすれば、全国のファンが喜んで新聞を買い、チャンネルを合わせてくれるからだ。もちろん、私もそのメディアの一部である。私にとっても、日本代表が主要な取材対象のひとつであることは、このコラムの読者であれば百も承知だろう。
●Jリーグの優勝争いは?
その一方で、Jリーグはどうか。スポーツ紙や民放のスポーツニュースをなにげなく見ていると、現在の首位がどこなのかなど印象に残らない。Jリーグ1部(J1)は9月10日までに全34節中22節までを終了している。約3分の2を終わって残りは12節。その試合は、今後、大きな中断もなく、ほぼコンスタントに12月2日まで続けられていく。
首位はガンバ大阪(勝ち点49)。2位の川崎フロンターレ(47)、3位に浦和レッズ(46)と激しい首位争いを展開しているが、ワールドカップによる中断(5月6日〜7月19日)が明けた後の10試合で8勝1分け1敗、7月23日以来負けがなく、1分けをはさんで7連勝という清水エスパルスが勝ち点を44に伸ばして食い込んできた。
5位鹿島アントラーズ(39)、6位大分トリニータ(36)も、首位G大阪とは大きな差をつけられて苦しいが、あきらめるのは早い。
●残留争いは?
「残留争い」はどうだろう。今季22節終了時で最下位はC大阪(昨年の優勝争いチームだ!)で、勝ち点13。同勝ち点のアビスパ福岡が得失点差で17位にいる。下位2チームはJ2の上位2チームと自動入れ替えになるから、この2チームは「降格圏内」ということになる。さらにひとつ上は京都サンガ(15)。最終的に16位になったチームはJ2で3位になったチームとの入れ替え戦を戦わなければならない。
その上を見ると、15位サンフレッチェ広島(23)、14位ヴァンフォーレ甲府(25)、13位名古屋グランパスとは、少し差が開いている。C大阪、福岡、京都の3チームにとっては非常に苦しい状況だ。
●猫の目のように変わる順位
しかし一方で、15位広島、14位甲府、13位名古屋あたりは、中位チームとの差は開いていないということだ。12位にはアルビレックス新潟(27)、11位にはF東京(27)、10位には横浜F・マリノス(29)、9位には大宮アルディージャ(30)、8位にはジュビロ磐田、そして7位にはジェフ千葉(32)と、7位から15位、勝ち点9差のなかにぎっしりと9チームがはいっているのだ。
連勝や連敗があれば、劇的に順位が変わる。リーグ戦では、最終順位が大事なので、1節ごとに一喜一憂しても仕方がないが、猫の目のように変わる順位は、スリルに富んだリーグであることを表している。
●充実した内容を誇る上位チーム
今季のJリーグは、試合内容も充実してきている。
G大阪は小さなグループ単位での攻撃力を生かして連覇の力は十分ある。故障で離脱していたMFフェルナンジーニョが戻り、彼がいなかった時期に大活躍したFW播戸竜二、FWマグノ・アウベスとの新しい攻撃陣も期待できる。川崎は、しっかりとした守備、機動力のあるMF、そして破壊力をもったFW(我那覇和樹、ジュニーニョ)と、非常にバランスがいいチーム。チームコンセプトが明快なのも強みだ。
この2チームを追う浦和は、オシム監督率いる日本代表選手に7人もの選手を送り込み、個々の力としては群を抜いている。22節までの失点が17と、18チーム中唯一10点台(G大阪は29、川崎は28)の守備力が大きな力だ。
●成績は良くなくても、試合内容は悪くない
内容がいいのは上位チームだけではない。清水、千葉、大宮、新潟、甲府は今季ずっとしっかりとしたチームプレーを見せてきた。磐田、横浜FM、F東京、広島は、シーズン半ばで監督を交代させた以後、戦い方が明確になり、試合内容がずっと良くなっている。
ずっと低迷していた名古屋も、オランダ人のフェルフォーセン監督の指導がようやく浸透し、ノルウェー代表FWヨンセンの補強で一本筋が通った。
「残留争い」を展開している京都、福岡、C大阪の3チームも、試合内容はけっして悪くない。上位チームと対戦しても果敢に攻め、勝利をもぎ取って浮上しようという姿勢がある。とにかく守り倒して残留を勝ち取ろうという姿勢のチームはない。
●「クラブの自立、経営安定」
2002年からことしまでJリーグをリードした鈴木昌・前チェアマンは、「クラブの自立、経営安定」を目指した運営を行った。その結果、各クラブはそれぞれの地元の生活に定着し、観客が増え、経営も安定した。ワールドカップによる大きな中断があったため、今季は水曜日開催の試合が増えているが、それでも第22節終了時で1試合平均観客は1万8000人を超えている。
平均1万人を割っているのは、京都(9916人)ひとつ。F東京、横浜FM、大分が2万人台を記録し、新潟は3万9379人、浦和は4万4224人と、世界的に見ても上位に位置するような数多くのファンに囲まれて試合をしている。
「Jリーグはうまく行っている」
そう考えても無理はない。
●その一方「Jリーグ」は…
たしかに、Jリーグのクラブの多くは、それぞれの地域にしっかりと根を張ることができた。試合ごとにたくさんのファンを集め、地域の生活に不可欠な存在となった。
その一方で、「Jリーグ」自体は非常に影の薄い存在になっていないだろうか。日本代表という観点でしか、メディアに取り上げてもらえないJリーグでいいのだろうか。
ことし、Jリーグは来年度からのテレビの放映権契約を更新したが、これまで放映権を握っていたNHKが減額を要求し、CS放送のスカパーと結ばざるを得なかった。その料金も、ヨーロッパ主要国のリーグの放映権料の10分の1、20分の1程度にすぎない。当然のことながら、リーグとしての公式スポンサー獲得も非常に苦しいのが実情だ。Jリーグを対象にしたスポーツ振興くじ(toto)が大苦戦をしているのも、Jリーグ自体への関心の低下が大きな要因になっている。
●流れを変える努力を!
リーグは、「クラブの自立、経営安定こそ、リーグ繁栄の道」というスタンスを取ってきた。私自身も、「Jリーグは地方文化」と繰り返し書き、「全国区のクラブがないことは悪いことではない。クラブがそれぞれの地域で愛され、不可欠な存在になればそれでいい」と主張してきた。
しかしここまで「Jリーグ」の影が薄くなり、価値が下がると、看過はできない。Jリーグ自体への関心が低下すれば、そのつけは、最終的に各クラブに回り、日本サッカーのレベルの低下を招くことになるからだ。
各クラブが元気に活動しているあいだに、Jリーグ本体の人気をもういちど盛り上げ、関心を高めるための施策を講じなければならない。簡単な話ではない。Jリーグ本部だけでなく、各クラブ、日本サッカー協会、メディアが知恵を寄せ合ってこの流れを変えなければならない。Jリーグを見殺しにしてはならない。
▲このページのTOPへ HOME > マスコミ・電通批評3掲示板