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□２ちゃんねるの「良識」 [ＰＪニュース]
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__2416616/detail?rd
２ちゃんねるの「良識」
【ＰＪニュース 09月07日】− 巨大匿名掲示板２ちゃんねる（以下、２ちゃん）のトップページには壷の画像があり、２ちゃんを「壷」と呼ぶ人もいる。これは、他の掲示板で２ちゃんを「痰壷」と呼んだ人がいて、それを管理者が自虐的に取り上げたのが発端、と言う説がある。２ちゃんの「住人」たちが２ちゃんをどう捉えているのかを象徴するようなエピソードで、痛快な感じがする。
2005年９月のIT Mediaの調査によれば、２ちゃんの訪問者数は990万人、年齢構成は10代が20.0％、20代が15.0％、30代が30.7％、40代が21.9％、50代以上が12.5％となっている。また、掲示板の数は700以上にのぼり、各板に数100のアクティブスレッドがある。このような巨大な掲示板で、参加者に共通点を見出すのは困難である。
最近、２ちゃんねらーによるブログやニュースサイトの「炎上」（コメントが集中して収拾がつかない状態）が取り上げられることが多い。共通点を持たない２ちゃんねらーたちがなぜ集団行動を起こせるのか。
２ちゃんの「匿名性」
マスコミでは２ちゃんの「匿名性」ばかりが取り上げられることが多いが、現在の２ちゃんのシステムの中では、完全な匿名性は存在しない。犯罪を予告した２ちゃんねらーが検挙される事件が相次いでいることからもわかるように、２ちゃんサーバーにはアクセスログが数日間残っているとされ、そうであればプロキシサーバーやプロバイダーのサーバーのアクセスログからＩＰアドレスを抽出すれば、個人を特定できる。２ちゃんの匿名性が、犯罪者を隠匿するレベルにないことは、２ちゃんねらーなら誰でも知っている。犯罪の予告あるいは告白に対しては、必ず「通報すますた」という書き込みがあり、メールや電話によって実際に司法当局に通報することも頻繁にある。これは、２ちゃんが犯罪者の巣窟ではないことを、２ちゃんねらー自身が主張していることに他ならない。
一方、犯罪とは無関係な人たちの匿名性は保たれている。ここで言う「匿名性」とは、住所氏名が本人の意思とは無関係に公開されることはない、という意味であり、同一ＩＰからの書き込みには、同一のＩＤが割り振られ、ある人物がどのような書き込みをしたのかはわかる仕組みになっている。だから、ある限られた時間の中で議論を進めている場合には他人に成りすまして自分を擁護することはできない。ＤＨＣＰサーバーからＩＰアドレスを再取得して別のＩＤを取得したとしても、元のＩＤで発言することはできないのだから同じことである。このようなＩＤシステムの中で、「匿名性」の影に隠れながら「卑怯な」議論をする２ちゃんねらーはいるのだろうか。少なくとも議論をしている間は、サーバーを通じてではあっても、バーチャルではない、リアルな人間としてパソコンの前に座り、発言に何らかの責任を感じながら２ちゃんに参加しているように思う。２ちゃんの外側から眺めれば、見ず知らずの人たちの間で無責任な発言を繰り返しているようにしか見えないかも知れないが、バーチャルな世界にはバーチャルな世界なりの人間関係があり、それを逸脱して２ちゃんの中で生きていくことは難しい。
２ちゃんの「結束」
２ちゃんねらーの共通点は、「２ちゃんに住んでいること」に尽きる。しかし、２ちゃんねらーの意見が集約することは滅多になく、２ちゃんねらーたちは個々のアイデンティティーを主張し続ける。そのような溶け合うことのないアイデンティティーの集合体であるのに、「２ちゃんねらーは」と一括りに批判されれば、それに反発するのは当然である。共通の敵を見つけると結束が生まれるのは、なにも２ちゃんねらーに限ったことではない。一括りに批判され、それが突っ込みどころ満載の批判であればなおさら、猛烈な反発を受ける。ただし、２ちゃんねらーが一致結束して反発するわけではなく、個々の２ちゃんねらーが自発的に反発する。「祭り」と呼ばれる、２ちゃんねらーが多数参加する熱狂的な状態になったとしても、それは多数の２ちゃんねらーの発言が「たまたま」同一の話題に集中しただけのことであって、「２ちゃんねらー」という一括りの集団による行動であることはない。この点が、誤解を生みやすい。反発されて（攻撃されて）いる人は、２ちゃんの総攻撃を受けているように感じるかもしれないが、それはあくまで個々の２ちゃんねらーの行動の積み重ねであって、組織だった行動ではない。
２ちゃんが「祭りだワッショイ」状態になるのは、上述の２ちゃんねらーを一括りに批判された場合のほかに、犯罪予告、根拠に乏しいニュース、著名人による差別的な発言があったときなどである。これらに共通するのは、正義や常識、倫理にもとることであろう。ある一つの対象に多数の批判が集中するためには、ある価値観を共有しなくてはならないが、２ちゃんねらーが共有している価値観は、罪を犯してはならない、とか、根拠のない主張をしてはならない、とか、差別をしてはならない、といった、ごく当たり前の価値観である。２ちゃんは、社会一般から遊離した価値観を持つ人たちのコミュニティーではない。
２ちゃんの「釣り」
最近、あるニュースサイトで起こった事件は、２ちゃんで「釣り」と呼ばれる行動に端を発している。「釣り」とは、２ちゃんで騒ぎになるような発言を２ちゃんの外でし、２ちゃんねらーによる攻撃を誘発する行動である。今回の、あるニュースサイトでの事件は、ある２ちゃんねらーが、使い古されたステレオタイプの左翼的発言を記事にし、多数の２ちゃんねらーが批判のコメントを書き込んだ、というものである。２ちゃんねらーのいたずらでしかないが、そのニュースサイトが鳴り物入りで開設された直後だったことも加わって、大騒ぎになった。いたずらとはいえ、ニュースサイトの開設者にしてみれば、アクセスが集中してサーバーもパンク寸前になるのだから、たまったものではない。ただ、その記事が「釣り」だったことが判明してから、騒ぎは急速に収まった。これは、多くの２ちゃんねらーがサイトを荒らすことを目的としているわけではなく、記事の中にあった左翼的発言に、２ちゃんねらーが個人として反発したことを示すものだと思う。
２ちゃん批判
「２ちゃんねらー」と一括りにできないことを縷々述べてきたが、２ちゃんの外側から２ちゃんに批判が寄せられるのも当然だと思うことがある。対外的に攻撃を仕掛ける２ちゃんねらーがごく一部で、それが個人の行動の積み重ねであったとしても、それは990万人という途方もない数の参加者の一部であって、ネット上で一度に数百人、数千人の攻撃に遭遇した人の味わう恐怖は計り知れない。攻撃には、正当な批判も、冷やかし半分の批判も含まれるが、批判の大合唱に抗するだけの精神力を持つ人間は多くない。その恐怖を想像することができるのであれば、自分と同じ批判意見を表明した人を見つけた場合には、同じ意見を書き込むことはせず、その意見への反論を待つこともできるだろう。自分が書き込むことで、参加している実感を持つことができるのかもしれないが、多勢に無勢の状況では、議論にならない。正論であっても、数で威圧して納得させることが正しいとは思わない。
２ちゃんの中では、個人攻撃、特に容姿や思想についての攻撃がしばしば見られる。侮辱罪や名誉毀損罪に抵触するような発言もあったが、これについて管理者が訴えられたことはあっても、これまで、個人攻撃を書き込んだ本人が逮捕されたことはわれわれの知る限り一度もない。このような経緯から、殺人などの重犯罪につながらない限りは、なにを書き込んでも逮捕されることはないと考えている２ちゃんねらーが多数いると思われる。しかし、２ちゃんは治外法権社会ではない。法に触れる、あるいは触れそうな発言が相次げば、２ちゃんはいずれ潰されてしまうだろう。２ちゃんを潰さないために活動できるのは２ちゃんねらーしかいない。２ちゃんがどう見られているのか、２ちゃんは一体どこに向かっているのか、1999年の開設以来、なんとなく進化してきた２ちゃんの現在を総括し、未来を見据えるする時期に来ているのかもしれない。そんな板ができるのを待っている。【了】
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2006年09月07日08時34分
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