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日本のメディアはきちんと報道すべきです(『国富消尽』吉川元忠・関岡英之著)
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投稿者 天木ファン 日時 2006 年 8 月 27 日 00:23:12: 2nLReFHhGZ7P6
 

 吉川元忠氏は、さる2005年10月に関岡英之氏とのこの共著『国富消尽』を残し永眠された。関岡英之氏は『国富消尽』の「あとがき」でこのような書かれている。
 
 <平成17年晩秋、吉川元忠先生は総選挙の浅ましい顛末に悲憤慷慨されながら、満腔の気魄を込めて肺腑より抉り出すように本書の序文をしたためられ、その後、月を数えずして静かに息を引きとられました。文字どおり、「死して後已む」を貫徹されたのです。>
 
 『国富消尽』では、関岡英之氏が『拒否できない日本』で『年次改革要望書』を明らかにしたにもかかわらず、その後も<日本政府は説明責任を果たさず、マスメディアも報道責任を果たしていないではないか>と訴えている。

 本著の一部その箇所だけですが紹介します。(P39〜P42)

『国富消尽』(吉川元忠・関岡英之著・PHP)より

☆アメリカのエージェントと化した日本の新聞―吉川

 ここでひとつ問題なのは、日本のメディア、とくに新聞の姿勢だと思うのです。たとえば、関岡さんは『拒否できない日本』(文春新書)で、アメリカのさまざまな内政干渉を紹介されています。それはそれで意味のあることなのですが、何百万もの部数のあるような全国紙が、そういったことをまったく扱っていないでしょう。そこが問題だと思うのです。いったい何を取材しているのか。アメリカと日本がうまくいっているかのように装いたいのでしょうか。新聞自体が、アメリカのエージェント(代理店)になっている―そういう面があるのではないかと思うのです。
 ジャーナリストの東谷暁氏が『日本経済新聞は信用できるか』(PHP研究所)で指摘しているように、とくに日本経済新聞はおかしいですよ。経済専門紙なのに、大事な問題はまったく報道していません。
 その意味では、関岡さんが朝日新聞(2005年3月26日付)に書かれたアメリカの『年次改革要望書』に関する記事は、画期的といってもいい。大新聞がまったくネグレクトしてきたことが、ともかく何百万の部数のところに載ったわけですから。ただし、その出方はちょっとおかしいと思います。オピニオン欄に「私の視点」として出たわけで、あくまでそれは関岡さん個人の意見ということになっている。朝日新聞自体は逃げているのです。しかるべく経済記者がワシントンにいるのだから、本来ならそういう人たちがきちんと報道すべきだと思いますね。

☆『年次改革要望書』をめぐる問題状況―関岡

 私が朝日新聞への寄稿で取り上げた『年次改革要望書』というのは、毎年秋に米国政府と日本政府が交換してきた外交上の公式文書です。相手国の法律や制度のなかで、自国にとって都合の悪い部分を変更するよう要求を突きつけるものです。
 米国政府から要求された各項目は、日本の各省庁の担当部門に振り分けられて検討され、審議会にかけられ、最終的には法律が改正されて着実に実現されてきています。しかも、日米の当局者が定期的な点検会合を開くことによって、要求がきちんと実行されているかどうか、進歩状況を監視する仕組みも盛り込まれています。
 過去十年、日本の国内問題として論じられ、実施されてきた「規制改革」や「構造改革」の少なからぬ部分が、実は事前に米国から与えられていた宿題だったということなのです。ある意味では日本の近未来の予言書ともいえるわけで、経営の中長期計画を立案する際や、株式の投資戦略を検討する際など、これから数年後の日本がどうなっているかを予測したいと思ったとき、必読の文献なのです。
そのように重要な文章であるにもかかわらず、なぜかこれまで日本のマスメディアで大きく取り上げられることはありませんでした。しかしこれは機密内部文書でも何でもなく、実は在日米国大使館の公式ホームページに日本語版が公開されているのです。いつでも誰でも、無料で閲覧することができます。にもかかわらず、日本国民のほとんどがこの文書の存在や内容をきちんと知らされていない。日本政府は説明責任を果たさず、マスメディアも報道責任を果たしていないのではないか。

 私は2004年4月に上梓した『拒否できない日本』でこの問題を提起しましたので、その年の10月に最新版の『年次改革要望書』が公表されたとき、日本の新聞各社がどう取り扱うのか、反応を期待していたのですが、結果はおしなべて夕刊のベタ記事でした。たとえば朝日新聞は夕刊三面に18行、日本経済新聞は夕刊二面の「ダイジェスト欄」に13行書いていただけただけでした。要望書の中身についても郵政民営化の部分に簡単に触れているだけです。
 この『年次改革要望書』というのは、そもそも10年にわたる経緯があって、対象分野も個別産業だけでなく、日本の立法、行政、司法の三権に及び、実際に日本の法律や制度を変更させてきているのですが、そうした背景についての解説はまったくありませんでした。ですから、一般の読者が会社帰りに電車のなかでこのベタ記事を読んだとしても、その背景に横たわる問題状況、「米国による日本改造」という異常事態に気づくことは、おそらく不可能だと思います。
 『年次改革要望書』は少なくとも米国大使館が公式サイトに掲載している公式文書なのですから、マスメディアには報道責任があると思うのですが、日本の新聞各社がなぜこうした取り扱いをしているのか、いまだによくわかりません。

 

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