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□新聞「特殊指定」について [JANJAN]
http://www.janjan.jp/media/0605/0605204685/1.php?PHPSESSID=2e668180f9c871ce3ae09b1231373197
新聞「特殊指定」について
2006/05/21
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公正取引委員会が昨年11月、新聞の「特殊指定」見直しを表明してから、新聞各紙は猛烈な反対キャンペーンを展開している。
自民党有志議員が17日、「特殊指定」見直しに関する議員立法検討チーム(高市早苗座長)を結成し、「特殊指定」維持に向けた独禁法改正案をまとめたと各紙が報道した。野党各党も「特殊指定」廃止に反対の立場を表明している。これが成立すれば、公取委よる「特殊指定」の廃止に歯止めがかかることになる。
新聞の「特殊指定」は昭和30〜40年代に制定された規制で、同一紙の全国一律価格などを定めている。朝日、毎日、読売などおもな全国紙は現在、一律月ぎめ購読料3925円とぴったり同じになっている。しかも、長期購読割引、口座振替割引、一括前払い割引、学生・高齢者向け割引など携帯電話の通話料では導入されている割引制度は、新聞にはいっさいない。同じ新聞なら全国どこでも同じ値段にするという規制のもとで、じっさに行われているのは新聞各紙がそろって同じ値段設定で、これでは価格カルテルではないか。
新聞休刊日も各社そろって年10日、それも同じ月曜日となっている。もともと小規模で人手が少なく、休日のとれない新聞販売店のために設けられたといわれる。他社の新聞も並行して扱っている販売店もあるので、各社が歩調をそろえて同じ日を休刊日にしている。つまり購読料は新聞本社と販売店のため、休刊日は販売店のためにある。そこにはお客である購読者(消費者)は念頭にない。
公正取引委員会は消費者の利益のために、不公正な取引方法などにより価格が吊り上げられることがないように目を光らせている。現行の制度では特殊指定の見直しは公取委の裁量に任されているが、独占禁止法を改正してもこれを阻止しようといのが、この自民党有志議員による議員立法検討チームの目的であろう。
新聞各社は、特殊指定が廃止されると同一紙同一価格と戸別配達制度が崩壊するので、報道の自由と国民の「知る権利」を守れなくなる、と反対している。
言論の自由および国民の知る権利を守ることは、新聞の価格カルテルや宅配制度とはまったく関係ない、とわたしは思う。報道の自由は宅配によって維持されているというなら、宅配の無い国では報道の自由度が低いのか? 報道の自由度ランキング(国境なき記者団(RSF))で、宅配制度のある日本は、世界で30位以下という調査結果をどう説明するのだろうか。
じつは表向きの反対理由からは窺えない複雑な事情もからんでいるようだ。新聞社の経営はいうまでもなく、読者からの購読料収入とスポンサーからの広告料収入に依存している。広告料は発行部数で決るから、発行部数は新聞社の最大の関心事となる。そこで新聞社が実際の販売部数以上を販売店に押し付ける「押し紙」が発生する。発行部数の1〜2割は、この「押し紙」として無理やりに販売店に押し付けたものという話もある。
新聞社は系列の販売店をもっている。販売店には新聞販売のほかに折り込み広告という重要な収入源があり、これは配達部数できまる。そこで新聞社から押し付けではないが、やはり実売より多く販売店が注文する「積み紙」の問題もあると聞く。販売店には配達部数をおおく見せることで、より多く折込広告料を稼ぐことができるのだろう。読者の手に届かず、そのまま古紙回収にまわされる新聞を発行するなら、紙資源の浪費にもつながろう。
新聞社は株式会社であるが個人商店などと同じ株式非上場で、原則として、経営の通知簿ともいえる決算内容などは公表されていない。株式市場などからチェックされることはなく、経営内容に不透明感はぬぐえない。さらにマスコミの本質的な問題として、記者クラブ制度にどっぷりつかった安易な取材方法によるいわゆる『発表報道』や『落としどころ報道』の問題があろう。
新聞業界がこのまま「特殊指定」制度を維持したいということは、「良質の新聞を、より安く提供するために、よりいっそうの経営努力することなく今までどおりの経営をやって行きたい」――本音はそういうことのように、私には思える。
(矢山禎昭)