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(2007.4.12号)『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No83
http://npojip.org/sokuho/070412.html
タミフルで死亡78人、 うち突然死・心肺停止、計48人 (62%)
調査会は新たな対策なし
ワーキンググループを作ることを決めただけ
2007年4月4日、平成19年度第1回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会、安全対策調査会(座長、松本和則 際福祉大学教授)おいて、リン酸オセルタミビル(タミフル)の副作用(害反応)報告が検討された。
厚生労働省(厚労省)の発表では、2007年3月30日までに、タミフルによる1079人(1465件)の副作用報告を受けているという。このうち、幻覚や異常行動、けいれんなど精神神経系の症状として報告されている事例が341人(446件)であった。そのうち、異常行動が記録されている事例は128例と報告された。
委員には前日に資料が配られただけで膨大な資料に目を通す時間もなく、これだけの資料からは結論できない、との意見も多く、10歳代への原則禁止のみとする現在の措置に対しては、それでは不足とする批判的意見が多数出されたものの、因果関係については見解を決められず、調査のワーキンググループを設置することなどを決めただけで、10歳代への原則禁止の続行を決めて終了した。
【厚労省発表の死亡55人は間違い 死亡78人、うち突然死・心肺停止48人(62%)】
「副作用死亡例」は厚労省の報告では55人、そのうち、異常行動後の事故死例は8人、突然死は9人と発表され、マスメディアをはじめこの数字が副作用死亡例として報道されている。
しかし、これら55人とは別に、6人(論文報告例4人、中外製薬が無関係として報告していなかった例1例、治験中の1人)の死亡事例があることも発表されている(ただし、治験中の1人は、脳症発症前にタミフルは服用していない例と推察され、原因は非ステロイド抗炎症剤と考えられるためタミフルによる死亡例からは除いておく)。
また、3月21日以降、4月3日までにも、中外製薬から12人、医師から3人、合計14人の死亡例の報告があった(重複1人)。
2006年11月30日までの53人(非ステロイド抗炎症剤による1人を除く)と新たな死亡例20人(重複1例を除く)を合計すると、これまで厚労省が把握しているタミフル服用後の死亡例は73人となった。NPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック)が独自に把握している5人(これまで独自把握していた1人を中外製薬が今回報告したので1人減少、すべて突然死)を加えると、78人となる(表参照)。
表 タミフル服用後の害反応(副作用)死亡例の内訳 (2007.4.4現在)
害反応(副作用)の種類 0〜9歳 10歳代 成人 合計
1 突然死 厚労省公表例 *a 14 29 43
浜による独自収集例 *b 3 2 5
小計 17 0 31 48
2 異常行動・事故死 0 5 3 8
3 呼吸抑制・肺炎・敗血症が疑われる例 4 4
4 感染症が増悪したと考えられる例 2 8 10
5 その他(肝障害、腎障害、詳細不明の死亡) 1 7 8
合 計 *c 20 5 53 78
*a:参考:厚労省報告突然死例:3/20までに2人(成人)、3/21以降に12人(10歳未満の3人、成人9人)、合計14人が追加された(ただしこれまでの集計例と重複が10歳未満1例、成人1例*bが重複する)。06年11月までの報告のうち、新たに入手したケースカード検討で、突然死でなかった例が3例あり(この3例はいずれも上記3.呼吸抑制・肺炎・敗血症が疑われる例に含まれている)、アナフィラキシーとされていた例1例が突然死であることが判明した。そのため、突然死例は、合計38-2+14-3+1=48人となった。
*b:従来は小児3人、成人3人であったが、今回成人の1人が企業から報告され重複するので、独自収集例から1人減じた。
*C:厚労省発表は55例だが、実際には少なくとも78人が死亡している。2006年11月30日以降、厚労省が新たに追加した死亡例は20人、うち突然死・心肺停止は14人だ!
タミフルを服用すると、9歳以下(特に5歳以下)と、20歳以上は突然死しやすい。10歳代は突然死はないが異常行動・事故死しやすい。また、成人やハイリスク者(特に高齢者)では、肺炎だけでなく、肺炎から、敗血症、敗血症性ショック・多臓器不全合併の危険性を考えておく必要があるようだ。
突然死・心肺停止例は、厚労省が新たに追加した6人中2人、3月21日以降の14人中は11人、合計13人である。異常行動からの事故死は、厚労省が新たに追加した6人中2人(2月に連続して転落死した10歳代の中学生)、3月21日以降の14人中1人、合計3人であった。突然死・心肺停止、異常行動・事故死以外の例は、新たに判明した20人中わずかに4人である。
副作用報告の突然死・心肺停止:合計40人
厚労省が突然死と認識した例が10人
注目すべきは、厚労省が「副作用」例として報告を受けた突然死・心肺停止例は、合計で40例にのぼるという点である。多くの医師が副作用と認識せず報告もしていない中で(注a)、医師が副作用の疑いをもって報告した例だけでも、10人もの「突然死」「心肺停止」の例(注b)を厚労省は受けているのである。
注a:厚労省が「副作用」と把握していない突然死例が、判明しているだけで少なくとも8人いる。
注b:3月20日までに「突然死」と副作用名に記載されている例は9人、3月21日以降の例1人を加えるとすでに10例に達する。
【医師が「おそらく関連あり」と判定した 突然死(心肺停止)の例を厚労省が否定】
たとえば、4月4日の資料で死亡症例No12(2006年1月27日公表資料の成人症例10と同じ)は、30歳代の男性である。
インフルエンザと診断され、タミフルを午後1時と午後7時の2回服用、7時30分に就寝。11時20分(約4時間後)、布団の中で仰臥位のまま呼吸していないのを母親が発見。救急車で病院に連れて行ったが蘇生不能であった。睡眠中の突然死例である。
「心肺停止」との副作用病名がついているが、報告した医師は、「副作用による心肺停止も考慮する必要がある」とし、「おそらく関連あり」と判断し、中外製薬も、「経過不明、評価不能」との記載もしつつ、最終的には「おそらく関連あり」と分類している。ところが、安全対策部会、厚生労働省の判定では「否定的」と判定した。その結果、この医師も企業も「おそらく関連あり」とした心肺停止=突然死の例が、「副作用」と扱われず、添付文書にも記載されなかったのである。
■添付文書に突然死・心肺停止を記載しないのはなぜ?
本来、副作用例として報告を受けたならば、添付文書の副作用欄、注意事項として、「突然死」「心肺停止」を記載しなければならない。
ところが、厚労省は、いまだに添付文書に「突然死」「心肺停止」を副作用として記載させていないのは、なぜであろうか。通常であれば記載すべきことをしていない理由は、添付文書に記載することで、さらに潜在的な「突然死」「心肺停止」例が報告されることを恐れているとしか考えようがない。
異常行動後の事故死がマスメディアに取り上げられた後に、異常行動の副作用報告が一気に増加し、転落事故例が増加したのと同様のことが起きるのを最も恐れているのではないか。
また、突然死は、異常行動と異なり、死亡に至らない軽症例がないことも、添付文書への記載を遅らせている原因のひとつかもしれない。異常行動は、死亡や重大な事故例があっても、死亡に至らない例を提示することによって悲惨な例を持ち出さずに警告するという、姑息な常套手段を用いて対処することが行政としては可能である。
ところが、突然死は「死亡」か「否」かである。死亡を免れても後遺症が生じている例もあり、警告をするためには、「死亡」そのもの、あるいは死亡を免れても「後遺症」を提示しないかぎり、注意喚起は不可能である。
しかし、「異常行動後の事故死」は、因果関係を否定的としながら、10件未満だけでもあれほど大問題となったのである。その数倍48人)もの突然死・心肺停止例の因果関係を認めることになれば、危険極まりないということになり、新型インフルエンザ対策への使用の根拠も崩れることになる。そのことをもっとも恐れて添付文書に記載しないのではないかと疑う。
■貴重な批判を座長と厚労省が抑制
これらの例を検討した調査会では、桃井真理子自治医大小児科教授が、「国が因果関係について肯定も否定もできないような状態で、現場で患者・家族へ情報を提供しても、『私に判断しろというのですか』と怒り出す患者もおり、10歳代への規制だけで不十分ではないか。最悪のことを考えた対策が必要ではないか。またインフルエンザの治療に関するこれまでの日本のやり方を反省して国際的常識にしたがった治療方法をするべきではないか」と厳しい指摘をした。
また、猪熊茂子東京都立駒込病院アレルギー膠原病科部長は、「ハイリスクには投与するということになっているが、ハイリスク患者ではかえって危険ということもあるのではないか」と指摘。
麻酔科医(槇田浩史東京医科歯科大心肺統御麻酔学教授)は、血中濃度や髄液中の濃度を測定し、症状との関係をどうして調べないのか。動物実験でも確認が必要だ、と述べた。
精神科医(一瀬邦弘東京都立豊島病院院長)は、幼児では睡眠時驚愕症(いわゆる夜驚症)が3%くらいにあるが、インフルエンザではそれが増強されると考えられる。そのうえ、タミフルを服用するとどうなるのかという観点でとらえて、分析が必要である」と述べ、「座長は無関係であるという結論を引き出したいようだが、精神科的には納得できない」とも述べた。
ところが、松本座長や黒川達夫厚労省審議官の2人が、ほとんどの批判的意見のたびにコメントして厚労省の立場を正当化する発現をし、最終的にまとめに入り、因果関係についてはなんら進展させず、ワーキンググループを組織して、そこで検討することとするということで、10歳代への原則禁止蚤の現在の措置を続行ということを決めた。今回も因果関係の認定は先延しされたのである。
■厚労省はいったい、何人死ねば、本格的規制をするのであろうか。
NPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック)では、死亡例、精神神経症状例のケースカードを開示請求し入手した。その結果、新たに多くのことが明らかになりつつある。今回は、これまで「突然死」の可能性があると考えた例を中心に見直しをした結果を速報した。今後もさらに詳細な分析を行う予定である。
なお、先週NPO法人医薬ビジランスセンターが開示請求し、入手した死亡例、精神神経症状例のケースカードが、厚生労働省のホームページ上に4月12日掲載された。
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