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タミフルとオーストラリアの医療事情について
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投稿者 どっちだ 日時 2007 年 4 月 05 日 10:17:16: Neh0eMBXBwlZk
 

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タミフルとオーストラリアの医療事情について

投稿者:  つかれた小児科医
07/04/05_0000548017

マルチポストでコピーペーストですみません。

さて、今回のタミフルをめぐる日本の小児医療現場の混乱を、小児科医として海外より関心を持って見ておりました。

特に、なぜ日本でばかり元来健康なインフルエンザ患児に対して高頻度にタミフルが処方されるのか、本当に日本の小児科医だけが国際的に見て薬の処方がいい加減なのだろうか 、という点について考えさせられました。

この1年海外に身を置いて、あるいは他国からの医師(主に欧州とアジア)と話して、私が日本の医療の特筆すべき点は、日本の患者の医療に対する “並外れた”accessi bility(受診しやすさ)の高さである、と思うようになりました。そしてまた、インフルエンザへのタミフルや、風邪への“予防的”抗生剤の問題の多くは、実はこの accessibil ityに起因しているように思われます。

例えばここメルボルンで、子供が冬に上気道症状と39℃台の発熱を呈したとします。基本的には、すべての患者はまずGeneral practitioner(家庭医)と呼ばれる開業医にかからなくてはいけませんが、基本的に予約制です。電話をすると、「アセトアミノフェンを飲んで様子を見なさい」と 言われ、早くても5日くらい先の枠にしか予約を入れてもらえません。

多くの患者はその指示に従い、少なくとも2、3日は自宅で様子を見ます。この時点ですでにタミフル服用のgolden-timeはオーバーします。さらに、インフルエンザとて他のウィルス性上気道炎とてself-limited(時間が経てば自然に抗体が出来てウイルスが急減する)ですから、「予約」の頃にはほとんどが軽快してしまっており、二次性肺炎などを合併して「真に医学的介入が必要な 患者」だけが結果的にスクリーニングされてくるのです。

もう一つ、患者が医療にアクセスする方法として、Public hospitalの救急外来があります。ここで患者の前に立ちはだかるのが、トリアージシステムです。

つまり、誤解を恐れずに言えば、発熱1日目の患者なんて、sepsis(敗血症)だとか、髄膜炎の疑いだとか判断されないかぎり、「帰ってアセトアミノフェンを飲む?それとも、何時間も外来で待つ?」と聞かれ、多くの「隠れインフルエンザ」患者は医療に手が届かないまま、帰宅することになるのです。次に救外に来る頃には 、やはりタミフルのgolden-timeは過ぎてしまっているでしょう。

西村先生がオランダとフランスの例を挙げられておりましたが、ここ豪州だけでなく、欧州の多くの国でも状況は似たり寄ったりらしく、つまり日本とフランスが世界的にはどう も稀な部類に属するようなのです。(米国人の医師は私の部署にいないため、米国の事情は不明です。)

一方、当院にはNasopharyngeal aspirate virus antigen setという、迅速抗原テスト(Flu A、Flu B、RSV、Paraflu 1、Paraflu 2、Paraflu 3、Adenoを一括判定する)キットがあり、気道症状を伴った発熱患者には「ほぼルーチンで」施行されます。はじめはぼくは「なんとムダな検査だ」と思いましたが、それによって抗生剤投与の適正化が図られているのです。また、予想される合併症や罹病期間などをより正確に説明できるのです。(この検査は家庭医には存在しませんが・・・)

つまり、気道症状を伴った発熱患者に片っ端からウィルス抗原迅速検査をすること自体は、何も日本の医師の臨床診断能力が劣っているたではなく、全世界的な今日的傾向なようなのです。(これは欧州もそうらしい。米国の事情はやはり不明。)

しかしながら、先に述べたように、発熱後48時間以内に医師の診療に辿り着けることはあまりありませんから、たとえ迅速抗原検査でインフルエンザと確定しても、結果的に「タミフルを投与しようかどうか」と悩むことすらないのです。またやはり、「風邪の引きはじめから、いちおう抗生剤」という問題も発生しません。

もちろん、私自身も多くの先生がご指摘の通り、"Do no harm."の精神で医療に臨むことが基本であることには全面的に賛同しますし、薬剤の使用に関して「筋」を通すことにも賛成です。

ただ、インフルエンザへのタミフル「乱発」は、医療へのアクセスが非常に高い日本だからこそ発生してきた問題であり、さらにほとんど自己負担のない昨今の親たちがマスコミの扇動的情報を笠に着て外来で詰め寄り、一方で医療ド素人の裁判官が「タミフルを処方していたら、脳症は防げたと思われる」というトンデモ判決を出しかねない日本の医療環境では、小児医療者たちの“内省”だけで問題を解決できるとは到底思えません。

やはり、学会レベルで、行政の非科学的な朝令暮改や、マスコミによる扇動的報道にも、きちんと社会責任を追及することが必要なのではないでしょうか?

長文失礼しました。

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