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□10代へのタミフル処方中止 研究者はどう見る [アメーバニュース]
http://news.ameba.jp/2007/04/4057.php
10代へのタミフル処方中止 研究者はどう見る
4月03日 16時44分
タミフル服用後に突然飛び降りるなど「異常行動」が10代に目立ったことから、厚生労働省は「タミフルは原因ではない」と一旦発表したものの、その後10代への服用中止を発表した。
これまでのタミフル使用の実態と最近の世論の動きについて、医療関係の研究者である立場として、あくまでも客観的に見解をまとめてみた。
タミフルはインフルエンザウィルスに有効な薬物で、経口で投与される。実際にタミフルを処方されたことがある人ならば、その効果は体験したと思うが、インフルエンザは確かに見事に治る。インフルエンザウィルスの治療薬という観点から見ると、その効果はどの薬物より絶大である。
さて、今回の問題となっているのは、そのタミフルの服用後に異常行動が現れる「疑い」があるということだ。飛び降りはその代表的な例である。
特に10代において多くその傾向が見られたことから、先日、厚生労働省は10代への処方中止を決定した。今年に入ってメディアが大きく取り上げ、世論を巻き込んだことから、タミフルはすっかり危険な薬というイメージがついている。
これまでのストーリーで不自然な点がいくつかある。まず第一に、「なぜ、今頃になってタミフルの副作用が注目されるようになったのか？」だ。タミフルはどちらかと言えば新しい薬で、確かに昔から使用されていた薬ではない。それでも発売されたのは6年前だ。過去数年、同じようにタミフルが使われていたのに、今年になって世論が騒ぎ出したというのは、（タミフルの副作用という議論以前に）不自然である。
これまでも異常行動を疑う報告は確かに存在していた。実際に飛び降りの件数は、今年もこれまでもそれほど変わりはない。世論が大きく騒ぎ出して、国がようやく措置をとったというのは間違いない事実だろう。
次に、「なぜ、10代だけ禁止にしたのか？」ということである。少なくとも人間の体は、「10代だけ」というような区切りで片付けられるほど単純ではない。「では、10歳未満はいいのか？」「成人式を迎えたらいいのか？」ということは必ず議論になるだろう。10代に異常行動が多いという事例は事実として受け止める必要があるが、だからと言って、この措置が適切だとは考えられない。なお、厚生労働省は26歳から74歳までの7人がタミフル服用後に転落や転倒した例も発表している。
どういう年代の人が、どういう時に、どういう状態で服用したかなど、より客観的で詳細なデータに基づいて、もっと的確な措置を講ずる必要がある。今の措置では、とりあえずの事態の収拾を図っているように思われて仕方がない。今後もこのままの中途半端な措置を永遠に継続するのだろうか？
タミフルによって命が救われた人も大勢いるし、インフルエンザの蔓延防止にも役立っているというポジティブな面も忘れてはならない。1つの薬を開発するにも、膨大な年月と研究費が必要とされている。そのような中でタミフルは、生き残った物質であり、安易に棄てられてしまうのは勿体無い。もし副作用に問題があったとしても、今後の研究で安全な剤形や投与法を確立すれば、更なる良薬に生まれ変わる可能性もある。とにかく世論の動きだけで、薬そのもののアイデアを消し去ってしまうのは問題がある。
しっかり考えなくてはいけないことは、タミフルと異常行動の関連はあくまでも「疑い」であって、科学的な実証はなされてないということだ。インフルエンザを発症しただけで、異常行動を起こし、飛び降りた事例もいくつも存在している。逆に先日、インフルエンザではなく、タミフルを服用しただけで異常行動が現れたという事例も報告された。このように、我々はもっと冷静に、薬と行動の因果関係を調べなければならない。大切なのは「どこまでが病気の症状であり、どこからが薬の副作用なのか」ということである。
とにかく今は、タミフルと異常行動の本当の因果関係をしっかりと検証しなければならない。それにはある程度の時間も必要である。その間は、一時的にしても処方の中止はやむをえないのかもしれない。客観的な科学的知見に基づいて、誰もが納得する結果が出されることを期待したい。
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