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http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/200703/502873.html
異常行動の副作用問題の影響で、タミフルの処方を控える医師が増えている(関連記事)。タミフルの代替として真っ先に思い付くのは、リレンザかアマンタジンだろう。しかしリレンザは吸入薬であるため服薬指導の手間がかかり、アマンタジンは耐性ウイルスや中枢神経系の副作用の懸念があるとして、敬遠されることも少なくない。
この状況の中、にわかに注目を集めている薬剤がある。漢方薬の麻黄湯(まおうとう)だ。麻黄湯にはインフルエンザに適応があることが添付文書に明記されており、しかもタミフル以上に解熱期間の短縮効果が得られたとするデータも報告されていることは、意外と知られていない。そして、一部の医師の間では、麻黄湯をタミフルの代替として使用するケースが増え始めている。
「今シーズン、当院では既に280人に使用した。現在は大半のインフルエンザ患者に麻黄湯を出している」。このように語るのは中浜医院(大阪市旭区)院長の中浜力氏。「熱が下がらないと言って再来院したのはまだ2人だけで、使った感触は非常にいい。医師のメーリングリストでも、麻黄湯は話題になっている」と評価する。
比較試験でタミフルに対して優位性示す
麻黄湯は、麻黄、杏仁、桂皮、甘草の生薬を混合した漢方製剤。適応には、「感冒」「喘息」「乳児の鼻閉塞」などに加えて、「インフルエンザ(初期)」がある。従来から悪寒や発熱のあるかぜなどに使われており、漢方医にとっては葛根湯などと並ぶメジャーな薬剤だ。
そして、タミフルの代替薬として使うに十分な効果があることを裏付けるようなデータもある。
自衛隊仙台病院(仙台市宮城野区)小児科の窪智宏氏は、タミフルと麻黄湯の比較試験を行った。対象は、2004年1〜3月に来院した5カ月〜13歳の60 人。迅速診断キット陽性かつ1歳以上の症例をランダムに「タミフル単独投与群」、「タミフル+麻黄湯併用群」に分け、キット陽性かつ1歳未満またはキット陰性の症例を「麻黄湯単独投与群」とした。その後、ウイルス分離やRT-PCR法などでA型インフルエンザ感染であることを確認した症例に限定して検討した。
A型インフルエンザ感染が確認されたのは、タミフル群18人、併用群14人、麻黄湯群17人。それぞれの治療開始から解熱(37.2℃)までの平均期間を比較した。その結果、タミフル投与群が33.2時間であったのに対し、併用群は21.5時間(p<0.05)、麻黄湯群は 17.6時間(p<0.01)と、それぞれ有意に短縮していたという結果が得られたのだ(表1)。この結果を2005年日本東洋医学会学術総会で発表している。
さらに、症例は少ないが、成人でも同様の結果が得られている。タミフル単独治療群9人(平均年齢23 歳)と麻黄湯単独治療群9人を比較したところ、発症24時間以内に内服を開始したタミフル群7人の平均解熱期間は37.6時間だったのに対し、同じく発症 24時間以内に内服を開始した麻黄湯群5人では同30.4時間だった(窪ら, 漢方と免疫・アレルギー: 20; 54-64, 2006)。
もちろん、これらの結果だけでは麻黄湯がタミフルより優れているとはいえないが、麻黄にはA型インフルエンザウイルスの増殖を抑制したという報告(Mantani, et al: Antivir Res: 44(3); 193-200, 1999)があるほか、免疫増強作用の報告も数多い。注目が集まるのもうなずける話だ。
成人は7.5g/日、小児の安全性は確立されておらず
麻黄湯の使い方は、添付文書上では「通常、成人1日7.5gを2〜3に分割し、食前または食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する」(ツムラ麻黄湯)となっている。小児の場合は、添付文書では「小児等に対する安全性は確立していない(使用経験が少ない)」とされ、十分な注意が必要だ。漢方医の間では0.1〜0.2g/kg/日を分3で使うことが多いようだ。上記の窪氏の研究でも、0.18g/kg/日を分3で投与しており、有害事象の発生は見られていない。
なお薬剤の主な副作用として、偽アルドステロン症やミオパシーなどがある。
タミフルの服用を避けたいという患者のニーズに応えるには、リレンザやアマンタジンだけでなく、麻黄湯も選択肢に入れてもいいかもしれない。
(野村 和博=日経メディカル)
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