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http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/200702/502486.html
若年者のヘリコバクター・ピロリ(H.ピロリ)感染率は低いことから陽性者はどんどん減っていき、欧米に遅れて始まった除菌治療も今ではポピュラーなものとなった。それでも、現在のH.ピロリ感染者に対する限り、課題はまだまだ多い。
第一の課題はH.ピロリ除菌療法の成功率低下
その一つがH.ピロリ除菌療法の成功率の低下だ。日本でも除菌療法が始まった1990年代後半、先進的に取り組み始めた施設では成功率は90%を超えるとされていた。しかし、除菌療法が普及するにつれ、除菌に失敗する割合は年を追って増えている。
首都圏の消化器専門医などで構成する東京HP研究会が集めている多施設のデータでは、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、アモキシシリン、クラリスロマイシンの3剤併用療法(LAC療法)の成功率は、プロトコルによる違いはあるが、90年代は90%前後。その成績が、保険適応後の2001年には79.5%、2002年の72.9%、2003年の70.4%と下がり続けている。
臨床成績の低下を説明するように、クラリスロマイシン耐性のH.ピロリの出現頻度が全国的に急増している(図1)。日本ヘリコバクター学会のサーベイランスでは、2004年の耐性菌の頻度は27.7%にも達する。
待ち望まれるメトロニダゾールの保険適応
この状況に対応する策として待ち望まれているのが、クラリスロマイシンの代わりにメトロニダゾールを使う除菌療法の保険適応だ。
メトロニダゾールは欧米では抗菌薬として広く使われ、H.ピロリ除菌療法の併用薬としても早くから取り入れられている。しかし日本ではトリコモナス症など抗原虫薬として使われているくらいで、使用量は欧米に比べてかなり少ない。そのため、先のサーベイランスでも、H.ピロリの耐性率は5%前後という低いレベルで推移している。
メトロニダゾールを含む併用療法を先進的に行っている日本の医療機関からは、LAC療法で除菌に不成功だった例への2次除菌として使った場合、成功率はおおむね9割という報告が多くなされている。
ヘリコバクター学会などからの働きかけで、関連する製薬企業7社が共同して昨年、H.ピロリの2次除菌療法として、PPI、アモキシシリン、メトロニダゾールの3剤併用療法の公知承認(適応外使用の効能効果が医学的に公知であると認められる医薬品についての承認)を厚生労働省に申請した。関係者からは早くも、「今年中にも承認されるのではないか」という期待が聞こえてくる。
新たな3剤併用療法が保険適応となれば、クラリスロマイシン耐性による除菌失敗例への対応はひとまず可能になるだろう。とはいえ、これだけ耐性が出ていて、いつまでもLAC療法のみが第1選択であるのは無理があるという指摘もある。感染症治療のセオリーから言えば、薬剤耐性など菌の性質を投与前に把握し、抗菌薬を選択することがベストだ。
現状では時間がかかる培養検査に代わり、H.ピロリの遺伝子を調べれば薬剤耐性を短時間でチェックできることも分かっている。除菌療法の選択肢が増えることは大きな変化だが、より効率的な方法の模索はしばらく続きそうだ。
全陽性者への適応拡大に向け、学会も模索
2次除菌療法が承認されたとしても、その適応は現行と同じく胃潰瘍および十二指腸潰瘍に限られる。胃癌をはじめとして、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病など、H.ピロリ感染との関連が次々と報告される一方で、潰瘍を患っていないH.ピロリ感染者の除菌を保険で行うことはできない。感染者に占めるその割合は9割に及ぶといわれる。
H.ピロリ除菌について、適応外処方や自由診療は相当数行われているとみられるが、この現状に対し、ヘリコバクター学会で社会保険委員長を務める榊信廣氏(東京都立墨東病院副院長)は、「H.ピロリ感染を“疾患”として認知してもらい、すべての感染者が除菌療法を受ける機会を実現する必要がある」と学会のスタンスを説明する。
ヘリコバクター学会は、2次除菌療法の適応拡大について各方面に働きかけ、承認が目前に近づいた段階までこぎ着けた実績がある。今後は、H.ピロリ除菌による胃癌予防のエビデンスをどう構築するかなどが大きな課題で、混合診療など規制緩和の動きもにらみつつ、検討を進めていく方針だ。
今年6月のヘリコバクター学会の大会では「保険適応外疾患に除菌療法をするための必要条件とコンセンサス」と題したワークショップも企画。患者からの希望で検査や除菌を求められた際に、インフォームドコンセントなど、保険外診療で最低限しておくべき必要条件について、現状のコンセンサスを論じる予定だ。
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