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(回答先: 週刊ポストの受動喫煙記事に対するコメント1 ( 川端裕人 リヴァイアさん、日々のわざ ) 投稿者 どっちだ 日時 2006 年 11 月 29 日 23:16:15)
http://ttchopper.blog.ocn.ne.jp/leviathan/2006/11/2_747f.html#more
2006.11.08
週刊ポストの受動喫煙記事に対するコメント2(オッズ比をめぐって)
週刊ポストの記事でひとつのポイントになっているのが「オッズ比」という概念。
「相対危険度」(リスク比)とともに、疫学ではとてもよく出てくるのだけれど、直観的にわかりにくい部分がある。
そこで、自分の知識の整理もかねて、一生懸命解説してみます。
実は前のエントリで、かなり頓珍漢なことを最初、書いてしまった反省も込めて(修正済み)、力作。しかし、リーダビリティの自信はなし。
具体例。
あるイベント会場で、百人のスタッフが仕出し弁当をたべて24時間以内に10人が下痢になりました。
この時、10/100で、つまり、0.1というのが、「食べた人が下痢になるリスク」。
ところが、仕出し弁当を食べなかったスタッフも百人いて、その人たちは24時間以内に1人が下痢の症状が出ました。
1/100で、0.01が「食べなかった人が下痢になるリスク」です。
ここで割り算。
0.1/0.01=10
つまり、リスクの比率、リスク比は10倍。
つまり、この時にイベント会場で出された仕出し弁当をたべると、食べないよりも10倍下痢になりやすい(なりやすかった)、と言えるわけで、リスク比はとても直観的に理解しやすい概念といえます。
では、もう片方の大事なリスク指標オッズ比。
まず、最初に寄り道をすると、オッズという言葉、競馬でよく使われますよね。
ここでいうオッズも同じoddsです。
オッズが3の時、人々はその馬が0.75の確率で勝つと予想しています。
その時の計算式は、0.75/(1-0.75)=3です。
もう少し分かりやすくいうと、0.75の人が勝つと思っていて、0.25の人が負けると思っている。よって0.75/0.25という比率。
疫学でいうオッズも、この式の形は一緒です。
(注・ここで書いているのは本場のブックメイカーが使うところのオッズ概念です。日本の競馬など公営ギャンブルの場合は払戻金の倍率をオッズと称しているようで、この場合、まったく別の話です)。
その上で、疫学に戻ります。
一般に、何かの病気が発生する時、原因があらかじめ分かっているわけではありません。
さっきの具体例の場合、まず下痢になった人が11人いて次の日仕事を休んだりするわけです。
そこで、原因を考えるわけですが、ウイルス性の感染症(ノロウイルスとか)かもしれないし、食中毒かもしれないし、ほかの何かかもしれない。食中毒だとしても、例の仕出し弁当のほかにも口にしたものはたくさんあるでしょう。
そんな中、仕出し弁当が怪しいということになったら、ここではじめてオッズ比を考える局面になります。
ここでいうオッズとは、まず、下痢のになった人の「弁当曝露オッズ」(仮称)です。
11人のうち、10人がその弁当を食べているので、11のうちわけは、曝露10、非曝露が1(さっきの競馬でいうと0.75と0.25に相当する)。つまり、オッズは10/1=10です。
一方、下痢にならなかった人の「弁当曝露オッズ」も求められます。
翌日、元気だった(下痢にならなかった)スタッフは189人いるわけですが、そのうち曝露は90人、非曝露は99人です(わかりますよね。それぞれ100人から下痢の人を引きました)。
よって下痢ならなかった人のオッズは、90/99です(少数が面倒なので分数のまま表記します)。
これらの比をとると、(10/1)/(90/99)=990/90=11となります。
これがオッズ比です。やっとたどり着きました。
これって、さきに出てきたリスク比の10とくらべて、わりといいかんじの近似になっています。
これがなぜある条件下で、数学的にリスク比の近似になりえるかというのは、このあたりを読んでいただけると分かるので、追究したい方はどうぞ。
で、世の中では(高岡助教授は?)、リスク比は信頼できるけれど、オッズ比は信頼できないというような偏見があるかもしれないと、今回感じました。
でも、そういうわけでもないんですよね。
リスク比を出せる場合は、そのほうが直観的に分かりやすい表現になるので、その方がいいかもしれないけれど、実際問題としてリスク比は求められないのに、オッズ比は求められることがよくあるからです。
リスク比が計算できるのは、母集団がはっきりしている場合です。ですから、最初から集団を追跡するコホート研究などでよく算出されます。
一方、オッズ比は、母集団がはっきりしない場合でも適用可能であり、そこで威力を発揮します。さっきの具体例は母集団がはっきりしているものなので、リスク比もオッズ比も計算できたのですが、本来の持ち味は「適切な対照群を設定すれば、母集団に立ち入らずにリスクを比較できる」という部分です。
以上、リスク比とオッズ比の違いについて、延々、書いてみました。
しかし、やはり分かりにくいなあ。
オッズ比を日常的な言語で分かりやすく表現する方法、なかなか見つかりません。
ただ怪しいもんじゃないですからね(笑)。
日本で、「コホート研究至上主義」と「オッズ比はちょい分かりにくい」ことは、どこかで連動しているかもしれませんね。
そのあたりは、また今度。
このエントリ、分かりやすくできるなら、また書き直すかもしれません。
コメント
オッズが3となるのは、25%の確率で勝つと人々が考えているときです。
投稿 とおりすがり | 2006.11.08 17:20
ほうっ、確認します。
しかしそれはそのまま掛け率として利用できる日本式のオッズ概念では?
ここで混乱要素がひとつ。
たとえば、
http://ja.wikipedia.org/wiki/オッズ
このあたり、参照。
日本の公営ギャンブルでいうオッズは、正確な意味でのオッズの逆数のようですね。
投稿 本人 | 2006.11.08 17:35
失礼しました。最初のコメント、よろしければ削除してください。
投稿 とおりすがり | 2006.11.08 18:31
そうかぁ。オッズ比はリスク比より複雑に見えるけど、症例と暴露どちらを基準にするのか、2×2の表でいえばタテに読むかヨコに読むかの違いなんですね。
高岡助教授に教えてあげたいです(笑
投稿 ワイネフ | 2006.11.09 08:10
とおりすがりさん、どうも、です。
オッズについてあらためて考えるきっかけになりました。ありがとうございました。
ワイネフさん、リスク比とオッズ比は単純に対比できもるのでもなく、いろいろ深いみたいですが、我々としてはこれくらいの理解でいいのかな、と。
とはいえ、ちょっと悔しいんですよね。オッズ比の持つ「含み」について、日常言語として説明できないことが。
2x2表を作ってしまえば計算の操作としては簡単なんですけどね。
「2×2の表でいえばタテに読むかヨコに読むかの違い」というのは、ぼくが上であげた例ではまさにその通りで、いつもながら鋭いご理解だと思います。
で、ちょっと補足すると、対照群と非対称群が同じ母集団に属する(この場合イベント会社)のではなくても、適切な対照群を設定すれば、オッズ比は有効というのがすごいところですよね。
このあたりが、確率の別表現としてのオッズの不思議に通じるのかなと考え、今、表現を練っています。でも、うまくいかないです。
投稿 本人 | 2006.11.09 10:00
結局、2かけ2表を構築することが出来れば、あとはオッズ比を取ればいいことになります。そのオッズ比の意味は、「非曝露者に比べて曝露した人では、何倍多発」というふうに解釈すればいいことになります。
2かけ2表の構築の仕方は、曝露と非曝露の軸で作るか、症例と対照の軸で作るかのどちらかです。従って、読者が表を読むときには、著者がどちらの方法で2かけ2表を作ったのかを考えて(方法を読めば分かります)読めばOKということになります。でもどちらの読み方をしようとも、オッズ比をとって、「非曝露者に比べて曝露者では○○倍多発」という読み方は、結局一緒になります。
疫学は難しいわけではなく、単純に考えるべきでしょう。原因による病気への影響を単純に正確に表現するのが目的の方法論とも言えますから。読み間違えを怖れず、何回かやっている内に自信がつきます。やってみないと自分の間違いにも気づきませんしね。
投稿 zusammen | 2006.11.09 11:48
オッズ比をとって、「非曝露者に比べて曝露者では○○倍多発」
と言っていいのは、オッズそのものが頻度の尺度であって、それの比をとっているのだから、「○○倍多発」と言って良いのだと、理解してよすしいですか。
世の中では、確率表現としてのリスクの方を頻度の尺度であると思っている人が多くて、だから、リスク比でないとぴんとこない、というような印象があり、それを、そうじゃないんだと思ってもらうにはどうすればいいか、というのが問題意識なんですよね。
あと、今度、ぼくは学校である症例対照研究をすることに決めました。
研究デザインについて、のちほど相談させてください。
まじでやりますから(笑)。
投稿 本人 | 2006.11.09 18:44
非曝露者に比べて曝露者で、○○倍多発するということを、症例対照研究デザインでどうやったら推定可能かということを考えれば(検証しても)、オッズ比によって一致推定もしくは近似推定できるからです。むしろ、たまたまオッズの比をとるのと同じだったということでしょう。もちろん2かけ2表だけを見ていると、何も知らなくてもオッズ比を取りたくなる欲望は起きますが・・・。
投稿 zusammen | 2006.11.09 18:59
この場合、一致推定もしくは近似推定、というのは、リスク比に対して、一致・近似、という意味ですか?
投稿 本人 | 2006.11.09 19:08
一口に症例対照研究といっても、今や種類は豊富で、こうしている間にも新しい研究デザインが産み出されそうなんです(ちょっと大袈裟)。主な症例対照研究デザインの中の、デンシティーサンプリングデザインではオッズ比は発生率比incidence rate ratioに一致推定、ケース・コホートデザインではオッズ比はリスク比risk ratioに一致推定、一番古い累積症例対照研究デザインでは希な疾患の仮定の下でオッズ比はrisk ratioに近似推定です(川端さんがご存じなのはコレと思います)。
Rothmanの2版の用語を使いましたが、図が以下の本に載っていて分かりやすいです。私は読んでないので用語が同じかどうか今は分かりませんが・・・。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/0763729272/sr=1-15/qid=1163173121/ref=sr_1_15/250-5725456-7659469?ie=UTF8&s=english-books
投稿 zusammen | 2006.11.11 00:42
ありがとうございます。
すっきりしました。
しかし、オッズっておもしろいです。
「遊べそう」なかんじがする概念なんですよね。
ふしぎと。
投稿 本人 | 2006.11.12 07:19
より、正確に言うと、それを知ることで、なんとなく世界が広がる感覚があるというふう。
たとえば、よいSFを読んだ時みたいな。
変なとらえ方かもしれませんが。
投稿 本人 | 2006.11.12 07:20
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