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公立病院の分娩費用が安過ぎる問題は、緊急に解決されるべき中心課題のひとつです。この提言は正論だと思います。
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http://www.jsog.or.jp/
日本産科婦人科学会
http://www.jsog.or.jp/news/html/announce_30OCT2006.html 平成18年10月27日 会員各位 日本産科婦人科学会 分娩施設における医療水準の保持・向上のための緊急提言: 我が国の産婦人科医療、特に周産期医療水準を保持・向上するため、以下の緊急の提言を行います。会員各位におかれましては、本提言の趣旨をご理解の上、何卒、迅速かつ適切なご対応と関係施設への働きかけをお願い申し上げます。 提言の理由: 分娩施設の減少が進行している。厚生労働省による医療施設(動態・静態)調査および本学会・学会のあり方検討委員会調査の結果をまとめると右のグラフのようになる。1993年に4200施設以上存在した分娩取扱医療機関は、調査のたびに減少し、2005年には3000施設強になっている。この間、診療所の減少率は28%、病院の減少率は29%でほぼ同等の減少を示している(この期間の出生数の減少率は12%であり、分娩施設の減少の方がより迅速である。)。 分娩施設数減少の原因は、診療所と病院では事情が異なっている。 1)診療所医師の高齢化 2)訴訟圧力の増大 3)助産師雇用難と看護師内診問題 4)医療水準維持のための経費増大とこれに応じた分娩料適正化が遅れていることによる経営難 これに対して分娩を取り扱う病院が減少している背景には上記以外に以下の問題がある。 1)病院において要求される医療水準の変化に起因する医師の労働量の増加と労働の質の変化(医師に要求される管理業務、事務業務が著増しているにも関わらず、それに対応するだけの増員がなされていない) 2)産婦人科医師中の女性医師の割合の増加による実労働力の減少 3)臨床研修の必修化に伴う業務の増大 4)臨床研修の必修化に伴う新規専攻医師の2年間にわたる不在。その結果として産婦人科医師の減員。勤務の過酷化 5)低水準の給与 6)給与が勤務実態に即して支払われない硬直した給与体系 7)中堅医師の退職・転職の増加 8)個々の病院における産婦人科医師の消失 このような厳しい現実の中で、分娩施設の確保のために、診療所に対しては経営改善のための支援が必要であり、病院においては産婦人科医師の勤務条件と待遇の改善が同時に進められなければならない。産婦人科医師の絶対数を増やし、他の診療科と同等の勤務条件とするのには時間がかかる。それまでは今現場にいて臨床を支えている産婦人科医師の士気を維持しなければならないからである。 分娩を取り扱う診療所は多くの従業員を雇用しており、経営の安定は診療所維持のために必要不可欠である。そのためには(分娩は自由診療なので)分娩料を引き上げればよいとの議論がある。それは正論ではあるが、問題はそれほど単純ではない。複数の分娩施設への受診が可能な地域では、妊産婦にとって分娩料は施設選択の大きな要素の一つである。その際特に問題となるのが、地域における公立・公的病院の分娩料の問題である。公立病院の分娩料が病院経営の観点から設定されている施設は多くない。その変更には議会の承認を必要とする地域が多い。県立病院はすべて一律という県も多い。診療所が分娩料を適正化しても公立病院の分娩料が据え置かれれば妊産婦は相対的に公立病院にシフトする。公立病院が分娩数の制限を行えばよいのだが、住民サービスと病院経営を重視する病院・行政側はそれをなかなか許容しない。その結果は、公立病院の勤務医の勤務条件の悪化と診療所の経営状態の悪化である。診療所の分娩料の適正化は必要だが、公立病院の分娩料の適正化が先行して行われないと、期待した効果は得られないことになる。 病院で、どう考えても合理的とは思えない硬直した給与体系に縛られて待遇改善が行われないのであれば、その現場から立ち去る医師が生じるのは避けられない。勤務実態、労働の内容に応じた給与、待遇を実現する必要がある。(ある給与体系が適切であるかどうかを判定するのは難しい。しかし、明らかに不合理、不平等な待遇では安定した人員確保は不可能である。)病院の経営状態が安定しているとは言えない状況にあることは確かだが、分娩料の適正化は、合理的な給与体系の導入と待遇改善に必要な財源の確保にもつながると考えられる。 公立病院が分娩料を適正化すると、それは低所得層にとって出産しにくい環境を形成するので、少子化対策に逆行するという議論が生じる。このような議論では、安全な妊娠分娩管理を行うためには産婦人科医療提供体制がすべての地域で安定的に維持されていることが必要であることが考慮されていない。医療機関の経営状態の安定化と産婦人科医師の確保は、産婦人科医療の維持のために必要不可欠である。それが行われた上で、低所得層に対しては所得に応じた出産育児一時金の割り増し等の補助を行うことで、バランスをとることは可能と考えられる。また同様の議論で、分娩にかかる経費の増大は、少子化対策に逆行するというものがある。しかし、分娩にかかる経費を低く抑えることは、分娩取扱への医師及び医療関係者の新規参入を抑制する方向に働くとともに、分娩に係る安全の確保という観点からも、マイナスに働くと考えられる。分娩にかかる経費は、産科医療体制が安定的かつ安全に維持可能な水準以上でなければならない。その経費を個人が負担するかどうかは政策の問題であり、現行制度の範囲でも出産育児一時金の引き上げ等によって対応可能と考えられる。 以上の理由から、以下のような提言をすべての分娩施設に対して行うこととする。 1.すべての分娩施設は必要なスタッフを確保し、医療設備の向上に努めていただきたい。 2.分娩施設の責任者は、勤務している産婦人科医師の過剰勤務を早急に是正すべきであり、それが達成されるまでの過渡期においては、産婦人科医師の過剰な超過勤務・拘束に対して正当に処遇していただきたい。 3.上記を達成し、地域の周産期医療を崩壊させないためには、分娩料の適正化が必要である。
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産婦人科医療提供体制検討委員会
分娩取扱を行う診療所の減少の背景として以下の問題が挙げられる。