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長期入院患者の退院交渉に弁護士が出張る時代 : 「50年前は家で見ていたから、その時代に戻る(厚生官僚)」のは無理
http://www.asyura2.com/0601/health12/msg/285.html
投稿者 どっちだ 日時 2006 年 10 月 14 日 13:25:24: Neh0eMBXBwlZk
 

http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20061013

2006-10-13 弁護士による退院阻止交渉

療養病床大幅削減し、削減した分を在宅医療に回すのが厚生労働省の方針であることへの批判を2回ほど書いてきました。厚生労働省の目論見どおり、50年前と同じように「家で死ぬ」のが当たり前の時代に戻り、終末期医療に従事した医師や看護婦が産婦人科や小児科にまわり、不足の解消につながるかは皆様のご想像におまかせします。

昨日元田舎医様から諸般の事情から自宅治療できない人の入院治療の流れをご教授していただきました。モデルとしては脳卒中で寝たきりになるようなケースです。

(集中治療室)→一般病床→療養病床→老人保健施設(老健)→特別養護老人ホーム(特養)

この流れが上流から下流に流れるように入院治療が変わります。今回の計画により療養病床を大幅削減すればどうなるかと言えば、この流れだけを見ると療養病床をスキップして老健、特養の介護施設に入所、入居するように思えます。ところがこれらの介護施設は常に満員状態で、長い順番待ちの列があります。拡大整備する方向もまったくありません。

では一般病床から次の行き先はどうなるかと言えば在宅医療です。この政策により在宅治療を強く希望する人は、この制度により在宅治療が可能になる事を喜ぶ患者が出てくるでしょう。そういう人は少なくはないでしょうが、大多数かと言われれば、どう考えても疑問です。昨日もNATROM先生のエントリーを引用しましたが、ある程度自由に入院できる一般病床に入院し、退院を阻止する手段に出てくる患者の出現が予想されます。これも何度も引用しているNATROM先生のエントリーのコメント欄からの引用ですが、

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 >ちょっと熱でも出たらこれ幸いと救急車で急性期病院へ受診し、入院させろと…

神奈川あたりだと、数年前からそんなかんじです。

これが東京に行くと、退院のムンテラには弁護士同伴になって、「この人を今退院させて、先生は本当に大丈夫と言いきれますか?」とすごまれるという…。

療養型に入院させるより、月1回ぐらい弁護士の方にお出ましを願ったほうが安くつくとか。
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首都圏ではもう出てきているようですが、退院阻止の為に弁護士が介在する時代になりつつあるようです。弁護士にこのコメントのように凄まれたら、しょせん勤め人の勤務医はこれ以上抵抗できません。抵抗したところで、何かあったら全責任が降り注ぎます。こういう時の弁護料はいくらか知りませんが、退院勧告なんてそう何回も頻々に行なわれるわけではないでしょうから、1回するだけでも、その後の退院交渉のたびに「次回は弁護士と来ます」となり、これを打ち破るのは相当に難しいと思います。

弁護士は司法改革で量産化される時代になっており、弁護士も新たな市場の開拓が必要とされています。退院阻止交渉はそれだけでまず仕事になり、阻止交渉に失敗しても、その後に患者が急変すれば医療訴訟のタネになります。どう転んでも弁護士には美味しく、医者にとっては不都合な材料ばかり並ぶ事になります。

医療事故に司法の介入が問題視されていますが、今後は長期入院患者の退院交渉に弁護士が出張る時代となれば、医療はますます追い詰められていくように思います。在宅で療養できない家庭事情の人は弁護士同伴で阻止交渉を延々と行う事になります。一般病床から退院しないとなれば、やがて一般病床がそういう患者で埋め尽くされます。そうなれば一般病床に本来入院治療が必要な患者は弾き出されます。

病院経営も苦しくなります。一般病床の入院治療費は、入院日数が増えればある時期(90日だったかな)から激減します。入院治療費を削る事により下流の療養病床以下に誘導する政策だったのですが、弁護士付きの退院阻止交渉が蔓延すると、収益の上がらない患者ばかりとなってしまいます。患者にとってみれば長く入院するほど医療費は安くなりますし、出て行くところが在宅しか選択枝がないのであれば、ますます退院阻止交渉に力が入る事になります。

NATROM先生が予想した方になるか、厚労官僚が予想する「50年前は家で見ていたから、その時代に戻る」かは誰にでも分かりそうな気はするのですがね〜。

----------------[以下、読者等のコメント]-----------

# 道標主人 『こんにちは

恐ろしい予想ですが、十分あり得ますね。

今年は僻地救急産科小児科医療の崩壊でした。
来年にはこれがブームになる、都市部の高齢者医療の崩壊と危惧します。もう崩壊しかかっていますが。』

# 勤務医 『
退院を阻止しようと 地方の公的病院では地元の有力者や地方議会議員が強面でいらっしゃいました。何がしかのお礼はつつんでいるんだろうなと思ってはいました。
都内で弁護士が乗り込んできたと言うのはまだ知りませんが、弁護士の知り合いがいるとちらつかされることはあるようです。
退院にあたって 寝たきりになると 前述した様々な病気の併発に気をつけて下さいと説明せざるをえません。そういった病気が起こり得るのがわかっていながら 退院を勧めるのは医者の無責任、余病がいつ起こるのか予見できないのも 直ちに再入院を確約できないのも医者の無責任だそうです。
或いは退院後暫くして あなたがかかりつけの医者なんだから自宅まで往診に来い、夜中でも 日曜日にも来い または速やかに入院できる病院を紹介しろと 突然電話で言われる事はしょっちゅうです。患者さんのこれからの人生における全ての疾病に責任を持つなんていう契約をした記憶はありませんが。
弁護士が退院交渉に同伴したら こちらの一字一句を捕まえて ねちっこく交渉され後々まで追求されるんでしょうね。』

# Yosyan 『

>道標主人様

書きながらいかにもありそうなシミュレーションなので、我ながらゾッとしました。厚生労働省とすれば下流を堰きとめ、在宅治療への流れを作れば自然に患者は流れると考えているかもしれませんが、実際には猛烈な逆流が起こり、上流が機能麻痺になる危険性を十分に孕んでいる気がします。

一つだけ光があるとすれば、ご指摘のように都市型崩壊になる可能性が強く、そうなればさすがに世論も気がついてくれるんじゃないかと言う所です。そこまでにならないと世間は関心を寄せてくれないですからね。

>勤務医様

弁護士同伴での退院拒否交渉の話は、聞けばいかにもありそうな話ですし、あってもおかしくありませんし、これから増加する可能性が十分ありそうな気がします。とくに東京では量産された弁護士がかなり偏在しているそうですから、新たなビジネスとして展開されるかもしれません。

それとどんな退院交渉になるかは想像するしかありませんが、もし交渉の末退院させたら、びっちり逃れられない誓約書の類を書かされるような気がします。そこまで書かされるのなら医師は誰もサインしませんから、そうなると病院側も弁護士を用意しないと対抗できなくなります。勤務医様が前にご指摘された、病院専属の弁護士が必要になる時代が来年にも来るかもしれません。それもまず東京からとなりそうな予感がします。』

# 774 『以下は某掲示板に書かれていたやり取りの例ですが、弁護士相手じゃこれでも駄目なんでしょうね。ベッドに余裕のある今までだと、長期入院はある程度いてもかまいませんが、今後はいかに入院を受けない、救急は断るというテクニックが流行るでしょうね。患者側もごね得、コネ得が通るようになりそうな、悲しい時代の到来です。

「医学的に退院可能となれば退院をしていただかないと法的に問題です。以後は自由診療となってもよろしければお泊めすることは可能ですが、当然ながら診療上必要な方が現れればそれも出来なくなります」
「病気が悪化する可能性を完全に否定するものではありませんが、現状は医学的に自宅療養で十分と判断されています。悪化した場合においても再度入院が必要と判断するのは医師です。また悪化したと思われる場合には必ず外来受診してください。緊急の場合はお近くの救急外来をお探しください。お大事に。」
 責任・責任とうるさければ、「病気はご本人のものであり、誰かが責任を負ってくれるのが前提とお考えであればそれは誤りです」とでも言うしかない。』

# 774 『生保会社の代理人に一般患者と同じように受診手続きさせて、数時間を待たせるように、患者親族以外には一般診察以外では面会しない事にして、弁護士にも毎日面談、毎日数時間ぐらい待たせるぐらいしか対抗策はないかな。彼らも報道によると、同じようなテクニックを使っているわけですし。』

# 1研修医 『退院拒否に対抗するためには、入院時に患者を選別するしかないですね。
全館全室差額ベッドとして、差額ベッド代が払えない患者は入院できないようにする、
とかの措置を私立病院は取るでしょう。
現に、公立病院の多くは、生保患者や医療費の自己負担分未払いの患者であふれています。
がんを専門に扱う病院などはこの方針で解決しようとしています。』

# 774 『1研修医 様
 公立病院は差額ベッドの割合は細かく決まっていて増やせないそうです。一般ベッドも7:1看護などで単価が上がっただけで、空床が増えた僻地公立病院もあるぐらい、僻地の経済状況は厳しいようですが(好景気の恩恵を全く受けていない)、長期入院で入院費用が下がると介護施設より安上がりですし、居座られそうですね。将来は私立病院に入れない層の患者の、セーフティーネットにでもなるのでしょうか。僻地公立病院の赤字は増大する一方ですね。住民サービスを優先するのか、赤字解消を優先するのか、明確に目標を決めていない僻地公立病院自体も悪いですね。両立は無理ですから。けど現場にそれを押し付けるから医師も看護師も逃げ出すんですけどね(それだけではないですが)。
 今まで公立と私立を行ったり来たりしている勤務医ですが、実はバランスシートを見ると、ベッド数が同じぐらいなら、収入はどちらも差があまり無いんです。収入は多くが医師の働きでもたらされているので(医業収入)、どんな立場でも勤務医は全力で働いている事がよくわかります。けど支出には大きな差があるんです。医師人件費は私立の方がむしろ多いぐらいでので、では巨額の支出はいったい・・・』

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