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臨時vol 24 高久通信 「食事に関する二、三の問題」
2006年8月31日発行
先進諸国で国民の健康を阻害する最大の要因として挙げられているのが喫煙と肥満である。後者の肥満の主要な原因は、いうまでもなく消費を上回るカロリーを食事から取ることによる。しかし、食事の総カロリーだけでなく、各々の食事内容も重要であることは周知のごとくである。
最近、地中海料理がアルツハイマー病の予防に有効であると報告され※、注目されている。地中海料理には魚、野菜、果物が多く、肉や乳製品が少ない。また不飽和脂肪酸の多いオリーブオイルを大量に使っているのが特徴的である。
この研究を行ったのはコロンビア大学の研究者たちで、2,258人の平均年齢77歳の高齢者を対象にし、その人たちが地中海料理をどの程度、忠実に食べているかによって3段階に分け、4年間経過を追った。その4年間に262人がアルツハイマー病になったが、アルツハイマー病の発症と地中海料理摂取の忠実度との相関を見たところ、地中海料理を忠実に食べた人たちは、地中海料理を食べなかった人たちや地中海料理を適当にしか取っていなかった人たちに比べて、アルツハイマー病になった割合が各々40%、20%低かったということである。
地中海料理を食べている人たちの間で、心臓疾患が少ないことが以前からよくいわれていたが、アルツハイマー病に対して地中海料理が予防的に働くというのは、この報告が最初である。
このような予防効果の機序(きじょ)として、地中海料理が脳の血管の閉塞すなわち脳梗塞を起こさないように働いた、地中海料理中の抗酸化物質が有効だった、あるいは地中海料理の抗炎症効果がこのような結果をもたらしたなどが考えられるが、おそらくこれらの機序が重なり合って上述のような結果がもたらされたのであろうと、この研究者たちは推定している。
食事に関するもう一つの話題は、日本人の食事のほうがアメリカ人の食事よりも健康的で、特に生活習慣病の予防によいという東北大学の先生方が行った動物実験の結果である。既に一部の新聞で報道されているのでご存じの方がおられると思うが、日本とアメリカの代表的な献立21食、例えば、日本食では刺身、雑炊等、アメリカ食ではハンバーガー、フライドチキン等を凍結、乾燥、粉末化して1群8匹のマウスに3週間食べさせたところ、日本食を取ったマウスの肝臓中で、コレステロールや脂肪を分解する複数の遺伝子がアメリカ食のマウスに比べて1.5倍活性化し、一方、肝臓内のコレステロール値はアメリカ食マウスのほうが日本食マウスよりも10%多かったということである。
日本食が健康によいということが以前からいわれているが、この仕事は従来の疫学的な研究でなく、動物実験で示したことに意義がある。
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