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保健師助産師看護師法違反容疑に対する警察の家宅捜査に関する見解
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平成18年8月30日
日本産婦人科医会会員 各位
社団法人日本産婦人科医会
会長 坂元 正一
(公印省略)
保健師助産師看護師法違反容疑に対する警察の家宅捜査に関する見解
本年8月24日、神奈川県支部に所属する堀病院が、保健師助産師看護師法違反容疑で家宅捜査を受けたとの報道に接し、会員の皆様の憤懣と、不安は、いかばかりかであったかと、拝察いたしております。
日本産婦人科医会は、この事件に関し、直ちに、関係のある機関と協議し、事件の事実関係を調査いたしました。そして、8月25日午後6時より、日本産婦人科医会と日本産科婦人科学会と会合を持ち、この問題を討議し、今回の事件に関し、以下のごとくの見解をまとめましたので、ご報告申し上げます。
1. 平成15年12月29日に堀病院で発生した、分娩時弛緩出血による出血性ショックの褥婦が、この分娩を担当した医師の勤務する大学病院へ産褥搬送されたが、大学病院の総力を挙げての治療にもかかわらず、2ヶ月後に、死亡した。この母体死亡と今回の保助看法違反の嫌疑とは、全く関係ないものである。
2. 神奈川県警は、この事件を関係づけて、堀病院の看護師、助産師体制に対し、警察官60名もの捜査官を派遣するという、極めて大掛かりな捜査を行ったことと、それに関して、大々的に報道されたことは、わが国の産科医療の危機的状況のなかで、産科医療を必死に支えている産婦人科医師にとって、産科医療を続けるかどうかを、考えざるを得ないほどの、深刻な事態を引き起こした。
3. 看護師による助産行為に関して、平成9年3月の日母産婦人科医報で、「助産と呼ばれる行為は分娩の介助と付随する世話をいい、医師又は助産婦以外は分娩の介助をしてはならない。医師の立会い、監督、指導のもとでも助産婦以外の者の分娩介助は認められない。但し、緊急避難のための臨時応急の処置、行為はこの限りではない」として会員に注意を促してきた。ここでいう分娩介助とは胎児娩出期の会陰保護および胎児娩出介助のことであり、分娩第I期の経過観察を含むものではない。
また、平成14年11月5日、鹿児島県保健福祉部長は厚生労働省医政局看護課長へ、次のような問い合わせを行った。「1.産婦に対して、内診を行うことにより、子宮口の開大、児頭の回旋等を確認すること、並びに分娩の進行状況の把握及び正常範囲からの逸脱の有無を判断すること、2.産婦に対して、会陰保護等の胎児の娩出の介助を行うこと、3.胎児の娩出後に、胎盤等の胎児付属物の娩出を介助すること、は保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)で規定する助産であり助産師、医師以外の者が行ってはならないと解するが貴職の意見を伺いたい」という質問に対して、看護課長は「その通り」との回答を行っている。
本会としては、この見解に基づき『看護師は、分娩の進行状況の診断や正常範囲からの逸脱の有無の判断を行わないように』と、会員に呼びかけてきた。
しかし、突然のように、平成16年9月13日付けで、看護課長から、「産婦に対して、子宮口の開大、児頭の下降度等の確認及び分娩進行の状況把握を目的として内診を行うこと。但し、その際の正常範囲からの逸脱の有無を判断することは行わない」ことが、「保健師助産師看護師法第5条に規定する診療の補助には該当せず、同法第3条に規定する助産に該当すると解する」との通達が出された。
このような、産科学的に理解できない通達に対して、本会としては、『法解釈上、少なくとも、分娩第I期にあっては、分娩を安全に導くために、看護師による子宮口の開大度、児頭の下降度に観察、測定は必要であり、この意味では、分娩第I期の内診は助産に該当しない』と考えるので、厚生労働大臣には、現行の枠内でも分娩第I期の内診は出来るように、あるいは、出来ないのであれば、保助看法の考え方を変えるように、本会会長として、要望し続けてきた。
しかし、本会としては、どんなに現状に即さなくても、上記の通達が出された以上、これを遵守するように、平成16年10月15日、会長名で都道府県支部長宛に見解を述べ、以来、会員に呼びかけてきたところである。
その後、厚生労働省に『医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会』が設置され、平成17年11月24日、その検討会での討議の末のまとめ案でも、産科における看護師の業務、特に分娩経過観察における看護師の内診を可とする保助看法見直し論と、内診を不可とする反対論、さらに慎重論が併記されたように、現在の助産師の絶対的不足の現状での現実的対応を検討している最中に、今回の事件が起こったことは、その社会的影響を考えても、極めて憂慮すべきことである。
4. 今回の堀病院に対する、保助看法違反の容疑に対する家宅捜索に関しては、母体死亡事例とは関係ないことではあっても、本会の主張とは異なり、看護師による分娩第II期の分娩介助行為に対する容疑も含まれている可能性があるとの報道もなされている。未だ、その事実関係の詳細は明らかではないが、もし、その通りであれば、堀病院の実態に対しては、遺憾であったといわざるを得ない。
しかし、分娩は全例医師が行っていたという報道もあるだけに、本会が求めてきた、分娩第I期の内診行為だけであったとすれば、警察当局の、今回の大掛かりな捜査は、極めて不当である。
5. この事件を契機に、厚生労働省は、全国の分娩を行っている診療所と病院に助産師の有無に関して調査する意向との報道がある。しかし、助産師充足率の調査は、平成17年12月、すでに、本会が行い、日医総研が分析をすませている。その結果を見ても、助産師充足率30%未満の施設数の割合は、病院で 6.8%、診療所で44.9%もあり、その病院で、全分娩数の4.0%(14,048件)、診療所で30.3%(144,539件)が行われている事実がある。
従って、この度の、厚生労働省の調査は、不必要であると思われるが、それでも、行われるとすれば、このように、助産師がいないか、あるいは、いても、充足されてない状況の下で、産婦人科医師が、誇りと、自信をもって、直接分娩介助を行うことにより、危機的産科医療を崖淵で支えていることを示していただきたい。
6. 本会は、上記のように、助産師を直ちには、充足できない現状でも、医師が、安心して、分娩を担当出来るように、平成17年11月24日の厚生労働省『医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会』で主張し、さらに、平成18年5月23日厚生労働大臣との懇談会で、『保助看法第37 条の解釈上の疑義の有無にかかわらず、助産師が充足するまで、看護師による医師の指示下における診療補助行為(分娩第I期における内診)を認めていただきたい』旨の、要望書を会長名で提出してきた。
今回の事件の有無にかかわらず、本会の姿勢は、決して変わるものではないことをご理解いただきたい。
そこで、この本会の要望を、改めて、日本産科婦人科学会とともに、日本医師会と共同歩調をとり、川崎二郎厚生労働大臣へ、提出し、具体的な、解決案を早急に求めていく。
昼夜を問わず、分娩に立会い、産科医療を守っておられる会員各位が、安心して、自信を持って、診療を行えるよう、この問題の解決に向けて、積極的に行動するので、ご支援のほど、衷心より、お願いしたい。
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