| Tweet |
九月一日、中国のほとんどの学校で新年度が始まった。有力メディアが各地から伝えたのは「いつもと異なる」（中央テレビ）風景だった。
「僕はうれしい。お母さんが借金しなくてもよくなった」。陝西省塩安市の小学生、米秀秀くんはこう語った。広東省雲浮市の親は「以前は年度がかわるたびに二百元（一元＝約一五円）の出費だったが、今年は六十一元で済んだ」と述べた。
この日、共産党政権は新しい義務教育法を施行した。これを受け、学費だけでなく維持管理費など「雑費」と呼ばれる経費を無料にした小中学校が農村部を中心に相次いだ。「党の舌」と位置づけられる有力メディアが恩恵に重点を置いて報道したのは当然だった。
□ □
学校が親に巨額の雑費負担を求めたり、優良校とそうでない学校が分かれたり――。中国が義務教育法を施行して二十年たったが、今も「財政の投入が不十分」（信春鷹・全人代常務委員）で、制度は完備にほど遠い。
今回、共産党政権は本気で取り組み始めた。国民の関心と不満が高まったのが最大の原因だが、見逃せないのは財政面からの裏付けを可能にした財源の充実ぶりだ。
国家税務総局によると、今年一―六月の中央、地方合わせた租税収入（関税収入などを除く）は前年同期比二二・三％増の一兆九千三百三十二億元に達した。関税収入も含めれば、通年では四兆元を上回る見通し。
現在の為替レートで計算すると、およそ六十兆円。日本の二〇〇六年度予算が見込む税収総額（国・地方計）の四分の三に相当する。特に目立つのは税収増の勢い。今年、個人所得税の課税最低限を月額八百元から千六百元に引き上げたにもかかわらず、予算で想定した一二％程度の伸びを大きく上回るペースが続く。
長い目でみると、力強さは一層鮮明。一九九六年の税収は七千億元余りだったので、十年間で五・七倍に膨らむ計算だ。
財源の充実を踏まえ、共産党政権は近代的な国づくりを加速している。各地の法院（裁判所）の新築や道路網整備、チベットまで延びる青蔵鉄道の前倒し開通など、目に見えるものも多い。
□ □
だが財政規模が拡大するほど財政制度の前近代性が目立ってきた。根本的な問題の一つは「建国初期に旧ソ連のシステムに基づいて作った」（楼継偉・財政次官）歳出の分類方式だ。
「行政管理費」「事業費」など経費の性質に基づく分類で、政府の各部門が「何をしているのか、予算から読み取れない」（同）。国際的な関心の的の「国防費」の不透明性も時代遅れの財政制度に起因する面がある。
実は共産党政権は〇七年度予算から、より科学的な分類方式を採用する方針を固めている。「それぞれの仕事にいくら使っているのかをはっきりと映し出し、一般庶民でもわかるようになる」（同）という。
国防費の実態まで明らかにするかは、わからない。対外政策の基本として〓小平氏が打ち出した「韜光養晦（とうこうようかい＝才能を隠し外に表さない）」を続けるなら、答えはノーだ。
とはいえ、王守業・海軍副司令員の汚職問題をはじめ、軍でも財政面の規律回復は急務。どこまで透明性の高い財政制度を確立できるかは、胡錦濤政権の近代化への意欲を占う試金石といえる。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,ＭＬを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。