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(回答先: ほとんどが新聞ネタですが、消費者金融の主だったニュースに対して管理人がコメントしてゆきます。【各都道府県賃金業者協会】 投稿者 hou 日時 2006 年 9 月 18 日 08:29:00)
http://www.aiben.jp/page/frombars/topics2/235kinri.html
出資法の上限金利の引き下げ等を求める意見書
, 意見の趣旨
以下の法改正を早急に行うことを求める。
出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下「出資法」という。)
5条の上限金利を、現行の利息制限法1条の制限金利まで引き下げる。
出資法及び質屋営業法における日賦貸金業者、電話担保金融、質屋に対する金利の特例措置を撤廃する。
貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業規制法」という。)43条のいわゆるみなし弁済規定を廃止する。
意見の理由
一、多重債務による甚大な影響
出資法の上限金利及び貸金業制度については、2007年1月が見直しの時期にあたる。 昨今、個人破産の申立件数は年間20万件を突破し、経済的理由による自殺者は、約8000人と高水準で推移している。
潜在的には200万人の多重債務者がいるとも言われており、依然として多重債務問題は深刻さを極めている。 2005年9月に日弁連が実施した「多重債務者アンケート」(回答総数1508)でも、自殺を考えたことが「何度もある」と「ときどきある」の回答の合計が721、自殺未遂の経験がある者が87、家出の経験がある者が209などとなり、多重債務が家庭生活に深刻な影響を及ぼしている実態が明確となった。
また、1996年に東京都立大学の岩田正美教授らがまとめた「多重債務世帯の生活水準と生活構造」によれば、多重債務世帯の19%が家賃を滞納し、20%が公共料金を滞納し、20%が年金に未加入であり、16%が税金を滞納している。 このように深刻化する多重債務問題の解決には、出資法の上限金利を、一切の例外なく、少なくとも利息制限法の制限金利まで引き下げるべきである。
そして、日賦貸金業者や質屋等に関する金利の特例措置も撤廃し、制限超過利息の支払を一定の要件のもとで有効なものとみなす貸金業規制法43条(みなし弁済規定)も廃止すべきである。
以下、敷衍する。
二、消費者市場の現状と利用者の実態
サラ金業者の貸付残高、シェアの拡大
貸金業者の消費者向け総貸付残高は、金融庁業務報告書集計結果によれば、2003年3月末で約47兆円であり、このうち、いわゆるサラ金業者(消費者向け無担保金融専門業者)の貸付残高は、約12兆円で全体の約26%を占めている。
なお、同集計によると、サラ金業者の貸付残高は1990年が約3兆円で、消費者向け総貸付残高の4.5%に過ぎなかったものが、1995年にはそれが約5兆円、7.1%となり、2000年には約9.5兆円、同20.0%となっていた。
このように、サラ金業者の貸付残高は増加の一途を辿っている。
消費者金融利用者の平均的借主像
2004年度版の「消費者金融白書」によると、「消費者金融利用者」(新規顧客と既存顧客の総計)の平均年収は454万円、平均利用社件数は3.3社、平均借入金額は約145万円、平均貸付金利は年25.43%である。
この「平均的利用者」は、総務省統計局編・家計調査年報平成16年家計収支編(2人以上の世帯)第4表「年間収入階級別1世帯当たり年平均1ヶ月間の収入と支出(勤労者世帯)」で見ると、可処分所得額から消費支出を差し引いた「黒字」の金額は6万3000円程度である。
そして「平均的利用者」の借入金利に近い年利25%だと約3万円、年利29.2%だと3万4800円程度の利息の支払になる。毎月5万円を返済に充てたとしても、145万円を返済するには、年利25%では45回、年利29.2%では51回かかることになる。
つまり、「平均的利用者」ですら、4年間に不意の出費や収入の減少があれば、たちまち支払に窮し、新たな借金を迫られる状況にあるのである。
まして、この「平均的利用者」よりも経済的に厳しい債務者は、常時金策に追われていることが容易に想像できる。
前記「消費者金融白書」によれば、「消費者金融利用者」の平均的利用期間は6.5年であり3割以上の利用者が10年を超えてサラ金業者との取引を継続しているとのことであり、一旦借りると長期間借金漬けになることが、現実の数字にも表れている。
このように、現在の出資法上限金利は、低所得者を長期間借金漬けにし、家庭生活を破綻に導く危険の高いものといえる。
三、利息制限法の制限金利の必要性
金利規制の必要性
利息制限法は、当事者が定めた金銭消費貸借契約の内容を制限することから、契約自由の原則を制約するものであり、規制緩和、金融自由化の流れの中にそぐわないと指摘する立場もある。
しかし、金利規制の撤廃やその規制の緩和を行えば、より多数の多重債務者が生まれることは多言を要しない。多くの利用者は生活費の不足や借金の返済のために借入を行うのであり、契約自由の原則が機能する場面ではないことは明らかである。経済的社会的弱者保護のための強行法規として利息制限法の存在意義は現在でも全く失われていない。
この利息制限法による保護を全ての利用者にもたらし、多重債務者の発生を防止するためには、出資法の上限金利を、少なくとも、現行の利息制限法による制限金利まで引き下げる必要性は極めて高いのである。
なお、現行利息制限法は、1877(明治10)年に制定された旧利息制限法を廃して1954(昭和29)年に制定されたが、その後、実質的な改正はなされていない。
現行利息制限法が成立したころの銀行貸出平均金利は年12%程度と極めて高い時期であったが、現在の超低金利時代においても、その制限利率は据え置かれたままであるため、銀行平均貸出金利との格差は極めて大きい状態が続いている。
したがって、現行利息制限法の制限利率自体も高いのであって、この引き下げも早急に検討されるべきである。
四、日賦貸金業者、質屋、電話担保金融に対する例外措置の撤廃
現行法は、貸金業者のうち質屋・日賦貸金業者・電話担保金融について 特例を設け、刑罰対象利率を、質屋につき年109.5%(閏年は年 109.8%)、日賦貸金業者・電話担保金融につき年54.75%(閏年は年54.9%)とした上で、右利率をみなし弁済規定の上限利率としている (質屋営業法36条、出資法附則8項、14項)。
法が、これらの業種について金利の特例を認めていた大きな理由として、集金・担保物保管などにコストがかかることが挙げられる。
しかし、日賦貸金業者の集金コストは、現在では送金による支払が一般化・簡便化し、今では24時間営業のコンビニエンスストアでも送金ができるようになっている。「毎日集金に来てもらった方がありがたい」と考える自営業者など、皆無に近く、制度の根拠である社会的事実は消滅したと言える。
また、質屋及び電話担保金融については、他の貸金業者と違って担保を取得しているのであるから、金利の面で他の貸金業者より優遇する必要性は全くない。
特に、電話金融担保については、携帯電話の普及に伴い電話加入権の価値は暴落している上、将来、電話加入権自体存在しなくなる蓋然性が高く、電話担保金融業者の数も激減し、無意味な制度と化している。
したがって、これら例外措置は撤廃されるべきであり、出資法の上限金利は、例外なく、少なくとも利息制限法の制限金利まで引き下げるべきである。
五、みなし弁済規定の廃止
出資法の上限金利を利息制限法の制限金利まで引き下げるとしたならば、必然的に貸金業規制法43条は無意味な規定となるが、同43条はそもそも問題の多い規定である。
貸金業規制法43条は、一定の業務規制を遵守した場合には利息制限法に対する例外を認めるという特典を与えることによって、貸金業者の業務の適正な運営を確保し、資金需要者等の利益の保護を図るべく、17条書面、18条書面の交付を含む一定の要件を満たす場合に、利息制限法の制限利率を超える利息・遅延損害金の支払を有効な利息・損害金の支払とみなしている。
しかし、かかる「みなし弁済規定」が利息制限法超過利息の徴収の根拠となり、多くの多重債務者を発生させる要因となってきた。
最高裁は、みなし弁済規定は利息制限法に対する例外規定であることなどを理由に、「法43条1項の適用要件については、厳格に解釈すべきものである」(2004年2月20日最高裁第二小法廷判決)との判断を示し、さらに本年1月13日には、借主の「任意」の支払について、「明らかな強制だけでなく事実上の強制があった場合にも利息制限法の上限を超えた部分の支払は無効」という初めての判断を打ち出した。
つまり、最高裁は、利息制限法こそが大原則であり、実態に法律を合わせるのではなく、実態を法律に合わせることを求めたのである。
これらの最高裁判例により、みなし弁済規定は事実上死文化されたとすら言われているが、上記のような弊害に鑑みれば、みなし弁済規定の存在自体が有害無益であるというべきであり、同規定は速やかに削除されるべきである。
2006(平成18)年5月10日 .
愛知県弁護士会 会長 山田 靖典